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『このエニグマは既にソリューションしている』
映画も終盤に差し掛かり、大画面の中で、意識高い存在に戻った意識高い探偵久門がカッコつけている。
月歌はふ、と画面から目を離した。
黒瀬がとってくれた席は柔らかく、足まで支えてくれるリクライニング付きで豪華だ。
つまり、貧乏性の月歌には慣れないのである。
チラリと黒瀬を見ると、目が合って微笑み返され、月歌は思わず画面に視線を戻した。
(このまま、お付き合いするのかな、黒瀬さんと)
黒瀬は何がいいのか、月歌にかなりの秋波を送ってくれているのはビシバシと感じている。
黒瀬と付き合っている自分を想像し、月歌は頬が熱くなっていっているのを感じる。
素敵な人だ。きっと、幸せにしてくれるだろう。
地味でつまらない月歌にはもったいないくらいの人。
――お前、主体性の欠片もないな。
何故か、魔王の言葉が脳裏をかすめた。
主体性は、確かにない。
シルキーにラヴリームーンになれと言われたから、なった。
陽菜に婚活をするように言われたから、した。
黒瀬に誘われたから、デートをしている。
(私が、したいこと……楽しかったこと……)
激しい戦いで魔王が率いる敵とと命のやり取りをしていたあのころ。
ラヴリーサンの影に隠れてはいたけれど、沢山の人に応援されてヒーローをしていた、あのころ。
流されるがままラヴリームーンになったが、夢中で戦っていた。
地球と人々を護る使命感に溢れていた。
(今の私は……? あー、やめやめ、せっかく映画を観てるんだからあんな奴の言葉なんか、忘れよう)
画面の中で意識高い探偵久門に追い詰められた犯人が動機を供述している。
被害者を殺しても仕方のない可哀想な犯行動機に目が潤む。
そのとき、月歌の手に黒瀬の手が触れてきた。
当たったのか、と思ったが違う。
ぎゅっと手を握られたからだ。
黒瀬に視線をやるが、秀麗な横顔で画面をじっと見ている。
だが、それはわざとそうしているように思えた。
月歌に拒絶されないように。
(なんだ、黒瀬さんも緊張しているんだ)




