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アラサー魔法少女ラヴリームーンの引退  作者: 有栖賀馬頭(TL名義は朱里雀)


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 年をとるということは必要なものが増えるということだ。


 例えば対人スキル。思慮深さ、そしてハンドクリーム。

 月歌はすっかり荒れてしまった手にハンドクリームを塗り込みながらテレビCMを見ていた。


 『新生魔法少女ラヴリーズ、公開オーディション、出場者募集中』

 シルキーが顔の三分の二くらいの大きなサングラスをして、次のヒロインは君だ、とかなんとか言っている。


 もうすっかりプロデューサーを気取りだ。


「日根野ちゃん、昨日はどうだったの?」

「私たち気になってたのよぉ」

「そうそう」

 月歌を婚活パーティーに導いた女性陣に声をかけられ、顔を上げた。


「一応、マッチング? しました」

 照れくさくて頬を掻きながらそう言うと、ずいと三人が顔を寄せてきた。

「えー、やったじゃない! どんな人?」

「素敵な人?」

「歳はいくつ?」

 口々に質問され月歌はまごついた。


「すごくかっこいい人でしたので続かないかも……なんですけど」

 月歌がそう言うと女性陣が一斉に顔を曇らせた。

 多分、遊ばれそうなのではとか、詐欺ではという顔だろう。


 正直、月歌もそう思っている。


「将来、娘が生まれたとして、パパみたいな人と結婚しなさいって言えない相手はろくでなしよ」

「好きかどうかだけで結婚は決めちゃ駄目よ。あくまで冷静にね」

「そうよそうよー、私なんかそれで大失敗したんだから。ギャンブルしなければいい人ってね。まあ、私にとってもいい人ではなくなったし、子どもたちにとってもいい人じゃなかったけどね」

 離婚経験者の含蓄の含んだ言葉に月歌は成る程と頷いた。


「あっ」

 机においていたスマホが震え、ちょうど黒瀬から連絡が来た。

 昨日からずっとやり取りしているのだ。

 相変わらずプライバシーは気にしてくれないらしく、思いっきり覗き込まれる。


『日曜日の映画の後、謎解きゲームでもしませんか?』

「あら、映画に行くのね」

「いいわねぇ。謎解きって私したことないわー」

「私も私も」

 謎解きゲームはしたことがないが、テレビのニュースで存在は知っている。


「……馬鹿がバレちゃいそう」

 月歌は思わずそう呟くと、三人は顔を見合わせた。

「それで相手がイライラしたらそいつはやめておけってことよ」

 月歌が馬鹿という部分は否定してくれないようだ。


「なるほど」

「なになに、日根野さん。婚活してるのぉ?」


 げ、と声が出かけて飲み込む。

 月歌の直属の上司の課長だ。

 いい人、ではない。ミスは押しつけてくるし、すぐ馬鹿にしてくるのだ。

 だからいい年こいて課長止まりなんだぞと皆陰口を言っている。


「日根野ちゃん、可愛いからもうマッチングしちゃったのよ。すごいわよねぇ」

「初めてすぐだもの。やっぱりいい子はいい人と出会えるのね」 

「そうよ、そうよー」

 月歌が嫌味を言われないように女性陣が褒め殺ししてくれると、途端に課長がつまらなさそうな顔をした。


「ひ、日根野さんマッチングしたの?」

 今度は同僚の長谷川君が話に入ってきた。転職組なので社歴は違うが同い年なのでそこそこ話すのだ。

「あ、うん。でも、お付き合いはまだ。とりあえず、何回か会いましょうみたいな段階?」

「そ、そう。よかったね」

 よかったねと言う割には表情が暗い。お腹でも壊しているのだろうか。

「うん、ありがとう」

 

  

 

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