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年をとるということは必要なものが増えるということだ。
例えば対人スキル。思慮深さ、そしてハンドクリーム。
月歌はすっかり荒れてしまった手にハンドクリームを塗り込みながらテレビCMを見ていた。
『新生魔法少女ラヴリーズ、公開オーディション、出場者募集中』
シルキーが顔の三分の二くらいの大きなサングラスをして、次のヒロインは君だ、とかなんとか言っている。
もうすっかりプロデューサーを気取りだ。
「日根野ちゃん、昨日はどうだったの?」
「私たち気になってたのよぉ」
「そうそう」
月歌を婚活パーティーに導いた女性陣に声をかけられ、顔を上げた。
「一応、マッチング? しました」
照れくさくて頬を掻きながらそう言うと、ずいと三人が顔を寄せてきた。
「えー、やったじゃない! どんな人?」
「素敵な人?」
「歳はいくつ?」
口々に質問され月歌はまごついた。
「すごくかっこいい人でしたので続かないかも……なんですけど」
月歌がそう言うと女性陣が一斉に顔を曇らせた。
多分、遊ばれそうなのではとか、詐欺ではという顔だろう。
正直、月歌もそう思っている。
「将来、娘が生まれたとして、パパみたいな人と結婚しなさいって言えない相手はろくでなしよ」
「好きかどうかだけで結婚は決めちゃ駄目よ。あくまで冷静にね」
「そうよそうよー、私なんかそれで大失敗したんだから。ギャンブルしなければいい人ってね。まあ、私にとってもいい人ではなくなったし、子どもたちにとってもいい人じゃなかったけどね」
離婚経験者の含蓄の含んだ言葉に月歌は成る程と頷いた。
「あっ」
机においていたスマホが震え、ちょうど黒瀬から連絡が来た。
昨日からずっとやり取りしているのだ。
相変わらずプライバシーは気にしてくれないらしく、思いっきり覗き込まれる。
『日曜日の映画の後、謎解きゲームでもしませんか?』
「あら、映画に行くのね」
「いいわねぇ。謎解きって私したことないわー」
「私も私も」
謎解きゲームはしたことがないが、テレビのニュースで存在は知っている。
「……馬鹿がバレちゃいそう」
月歌は思わずそう呟くと、三人は顔を見合わせた。
「それで相手がイライラしたらそいつはやめておけってことよ」
月歌が馬鹿という部分は否定してくれないようだ。
「なるほど」
「なになに、日根野さん。婚活してるのぉ?」
げ、と声が出かけて飲み込む。
月歌の直属の上司の課長だ。
いい人、ではない。ミスは押しつけてくるし、すぐ馬鹿にしてくるのだ。
だからいい年こいて課長止まりなんだぞと皆陰口を言っている。
「日根野ちゃん、可愛いからもうマッチングしちゃったのよ。すごいわよねぇ」
「初めてすぐだもの。やっぱりいい子はいい人と出会えるのね」
「そうよ、そうよー」
月歌が嫌味を言われないように女性陣が褒め殺ししてくれると、途端に課長がつまらなさそうな顔をした。
「ひ、日根野さんマッチングしたの?」
今度は同僚の長谷川君が話に入ってきた。転職組なので社歴は違うが同い年なのでそこそこ話すのだ。
「あ、うん。でも、お付き合いはまだ。とりあえず、何回か会いましょうみたいな段階?」
「そ、そう。よかったね」
よかったねと言う割には表情が暗い。お腹でも壊しているのだろうか。
「うん、ありがとう」




