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LIGHTNING EDGE-神々に挑む剣 -  作者: 金属パーツ
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4話シーン14「メティースの過去 前編」

それはあまりに突然の変化だった。

始めは、イツカとベロニカの必殺技が女神の中心に届きかけたその時。

二人の体にその異変は起きた。

戻された。

イツカにもベロニカの意識はそのままに、二人の体に不思議な現象が発生し、

二人は見て知覚しながら、二人の体は、女神が隠れていた木巨人のコア部分から

遠のいていく。

離れていく。

そして飛び立った地点にぴったりその場に帰らされ、その肉体に込めていた

エネルギーが返還され、技を放つ前の状態へと戻された。

「??」「あ、れ・・」

ブン!

それに驚き戸惑っている短いスキに、ツタの素早い横殴りを食らい、イツカと

ベロニカの体は大きく吹っ飛ばされた。

「くう!」「よっ、と・・」

ぎりぎりで受け身を取って着地。素早く体制を整える。

「二人とも!大丈夫!?」

「??・・・も、問題、ない」

「まだイケるわよ!カティ余計な心配しないで!」

二人は息を揃えて再び飛び上がる。

そしてもう一度攻撃。今度は焦って急所を狙うことはせず、堅実に木巨人の

ツルや表皮を切り、砕く狙いで攻める。

「でえええい!」

「ちい!」

攻め、ツルの攻撃を避け、ある程度の所でまた着地。飛び上がって攻める。

だが、その時にまたそれは起こった。

ブン!ゴキ!

「かっ!・・はぁ・・」

「うぶっ!?」

またも謎の現象が起こる。

二人が木巨人の攻撃を華麗に避け、地面に着地し、また飛び上がろうとした

瞬間である。

ベロニカとイツカの体が不思議な浮かび方をした。

足をバネに飛び上がったのではない。

まるで着地する直前へと『巻き戻された』ようにして、二人の体は地面を離れて、

ツルの攻撃を避ける直前の地点へと戻された。

二人とも、五感がそれらの現象をしっかりと知覚しているが、体が動かない。

そしてその眼前に、あの回避した筈のツルの鞭が迫ってくる。

次は避けられない。結果が書き換えられた。

避けられた結果の一本のツルが、避けられずにイツカとベロニカを的確に殴り

飛ばす結果に変わっている。

ツルの一撃は二人の体を地面に向けて叩きつけて、二人の中から鈍い打撃音を

響かせた。

「イツカ!ベル!・・・・ちっくしょ!」

「カティ、ロック!私は二人の治癒を行います。

その間、敵を引き付けてください!」

「了解です!」

「やれなくてもやってやるよ!!」


新たにロックとカティルが攻勢に移る。だがこれもまた数秒後、同じ結果を

招くことになった。

地面に倒れ伏し、弱弱しく顔を上げ、まだ堂々と立つ大きな木巨人を

見上げる。

「な・・何がおぎでんだよ゛・・・」

ロックが力なく悔し気にそう漏らす。

彼の体に掛けられていた身体強化術コンゴウも一部が剥がれ、

地の肌色が垣間見えている。

「ぐうぅ・・・負け、るか・・」

カティルはまだ武器を杖代わりにした立っている。だがその足はおぼつかなく、

やっとで立っている様子である。

そんなわずかな時間でボロボロに壊滅的な損害を受けた勇者パーティーを女神は

静かに見下ろしていた。

〈いいわ、いいわぁ・・・この調子。きっとこの調子なら、主神様や天界の神々も

楽しんでくださるんじゃないかしら?

そうなればもう直ぐ、もう直ぐよ。

後はもっと苦しめてこの勇者達を殺し尽くせば、あの子達を取り戻せる!〉


『まんま』『かあさま』


女神の脳裏で、何やら幼子の声が聞こえた気がした。





それは今から300年ほど前のことである。

その頃のキングスランドに、今のワイバーン王朝が生まれる前、サラマンドル

王朝の時代。

この時、およそ200年続いたサラマンドル王家によって支配されていたキングス

ランドは二人の王子に恵まれ、当時の国王ブレス9世サラマンドルの治世に

よって栄華を極め、平穏の時代を過ごしていた。


そんな豊かな時代の片隅、今回カティル達が立ち寄ったプラーフ村のあった

場所のほど近くの丘の上に彼女は暮らしていた。

「・・・・・」

彼女は何も語らず、何も感じず、ただ同じ毎日を繰り返し、黙々と主神から

与えられた仕事をこなしていた。

彼女は女神だったのだ。

「メティースさま、おしごとおわりました」

そんな彼女に近づき、語り掛ける一話の鶏が在った。

「・・・ご苦労様、モニン」

それだけ告げると、女神メティースはまた視線を前方に戻し、

ぼーっと意識を散らしていく。

彼女は『告げる女神』主神が初めに生み出した12の祖神の一柱、

時の神メダの娘にして、時を知らぬ人々に時を告げる仕事を任されていた。

彼女には隷属する三鳥が在る。

朝日の鶏モ二ン、逢魔ヶ時のカラスのアフターヌ、闇夜のフクロウのグナイだ。

メティースはこの三鳥に一つの命令を出していた。

モニンには、朝日が昇る頃、世界中の鶏達に朝の知らせに

コケコッコーと鳴くよう命じさせ、

アフターヌには、夕日が沈み始める頃、世界中のカラス達に動物たちへ

早く巣に帰るようカアカアと鳴くよう命じさせ、

グナイには、星空が輝き周囲が静まり帰った頃、世界中のフクロウ達に動物たちが

安心して寝静まれるようにホーホーと鳴いて、子守唄を聞かせるよう命じさせた。

そうして世界中の生き物たちはある程度の時間の感覚を持って過ごしている。

世界のどこからでもできる仕事であり、世界の誰も彼女の行いを認知できない。

それ故に彼女は神殿を持たず、信者もない。

ただ任されていた鳥たちへの命令を時間ごとに繰り返す。

それはとても大切な仕事なのだが、彼女にとっては苦痛を伴うものだった。

もう何万年もこの仕事だけ。

兄姉達は季節を知らせる女神として世界を一年かけて飛び回り、

生き物に老いを与える邪神として一つ一つの命を見張り、

在るモノを腐らせて土へ返す神として何億もの虫達を操り、

それぞれ忙しく働いているというのに、自分は日に三度、

それぞれ三鳥に命じてはい終わり。

そんな役割に嫌気がさして、さし過ぎて、ついには心が死にかけている。

脳が溶けるようだ、自分は何か好きで何が嫌いか忘れそうだ。

この仕事を与えられた創生の時代、自分はどんな思いでこの仕事を受け入れ

たかなんてすっかり忘れた。

そんな退屈が続いて続いて、ついに何も感じなくなった頃のこと。

「メティースさま、しょうしょうお耳に入れたいおはなし、ございます」

「??なに?」

何億分の一の確率だっただろうか。ある日、アフターヌが普段の伝令とは別に話をしてきた。

「なんでも、この丘の近くにクニのカイタクダンがとうちゃくし、

ここにムラを作ろうとしているそうです」

「むらですって?」

おかしいな。

村なら、この近くに既にあるじゃないか?とメティースはその村の辺りを見る。

ところが、その村は瓦礫となっており、もう何年も人々が暮らして

いないのが見て取れた。

「・・・メティースさま、ぺゼタル村はもう何百年も前にほろんでおります」

あれ?そうだっけ?

大して大きな村ではなかったけど厄介な害獣も少なそうだったのに、

やはり人間は軟弱だ。

「それで?その開拓団がきて、またここらで人間の姿が見られるというのが、

どう重要な話だというの?アフターヌ」

「はい、それがですね。

どうもそのカイタクダンには今のクニのだい二おーじが率いているようなのです」

「王子が?」

それは何とも奇妙だと思った。

王子ってあれでしょ?国の中心でお城とかでふんぞり返って次期国王に選抜されるために泥沼の陰謀劇の渦中に居るみたいな?命が危なくならないように

僻地とかには居ないものよね?

それがなんで・・・

その後、不思議とその件に関心を持ったメティースは三鳥の力を総動員させて、

調べさせた。

世界中の鶏、カラス、フクロウを結集させて首都や都心部から田舎の地方都市や

農村まで全てから情報を集めさせた。

そしたら何となくではあるのだが、メティースは事情の一部を垣間見ることが

できた。


どうやらその開拓団を組織させた第二王子。

相当なやり手であるらしい。知識に富み、相当な教養がある。

「・・ふむふむ・・なるほど。つまり、その王子の兄である第一王子から、

玉座を奪われまいかと疑いをかけられて、命を狙われていた。

だがら玉座に関心ありません、地位や名誉もいらないですって示すためにって

自ら、何百年も再開発されずに放置されていたこの土地に目を付けて、

開拓の名目で王城から逃げ出して、こっちに移り住んできたのね」

「はい、そのようですわ、メティースさま」

「だからカイタクダンっていってもきぼは小さいらしいっちゅ」

「なんで?」

「その第二オージのハバチュのキジョクたちが殆どリダツしたらしいっちゅ」

「ですので、そのおうじにつきしたがうキゾクはほぼおらず、じぶんの

カシンダンの一部とルミン〈流民〉たちでこうせいされている、

みすぼらしいいちだんらしいですわ」

「なるほどねー」

まあどちらにせよ、人間のことなんてまるで関心がないというように、

その時のメティースは気にも留めなかった。


ところが数日が立ち、その開拓団が到着してから事態は一変する。

あのほぼ瓦礫の廃墟だったぺゼタル村の跡地が目まぐるしく再開発が進み、

また新しい建物が増えていく。

何の変化もなく静かで穏やかだったその森の中で、刻一刻と変化し変形し

続ける村の発展風景は、メティースにとって、目を奪われるほどの

数少ない娯楽になっていた。

一年後には村の土台ができあがり、忙しなく働く村人たちの表情や声、

動きが、不思議とメティースの目を引き付けるのだ。

そしてそれから十年後、メティースはついにある決断を下した。

「カッカカア!?どういうことですカァ!メティース様、

人間に身を変えて村に紛れ込もうだなどと!」

「心配っス!」

「あたいとしてはおススメしないよ!?」

少しは言葉が達者になってきた三鳥に詰め寄られる。

「だーいじょうぶよだーいじょうぶー。たかだか人の一生分だけだから。

その間、私から命令しなくてもあんたらなら仕事できるでしょ?」

「た、確かにそうですが・・・」

「それでも心配っス」

「あたいらだけなんて・・・」

「だから大丈夫よ。あいつらの記憶改ざんはもう済ませてるし。

もしもバレるか、人の一生分ぐらい生きたら直ぐに終わらせるから。

じゃ、時間ごとに鳴く仕事は任せたわよー」

言い終えると、三鳥を置いてメティースは丘を下り、

村へと向かって駆け出すのだった。

「・・・・本当に大丈夫っス?」

「あ、あれ痛そう。何万年も走ったことないのに

急に走るから転んだねぇ」

「あああ・・・あんなに強く地面に頭打ち付けて・・・」

「鼻血出てるっス!?」

「それで何であんなにニコニコ笑ってられるんだろうねぇ・・・」


カン カン カン カン

小気味のいい薪割りの音が静かな森の中で響いている。

そこは開拓団が作らせた新村の薪小屋。何十世帯も暮らす村人達用の薪をその一人の木こりが

せっせと一日中割り続けていた。

「おじさん、こんにちは」

そんな木こりに、一人の少女が話しかけた。

「ん?んんと・・・ええと・・ああ!メティーちゃんか。どうしたんだい?」

一瞬、少女が誰か分からなかったのに、木こりが少女の目を見つめた時、

まるで何年も前から知っていたかのようにその名が出てくる。

木こりに名を呼ばれ、その少女は不自然なほどに明るい笑顔を浮かべた。

「うんうん、わたし村人のメティーだよ、木こりのおじさん」

はい、早々に決着つけたかったんですけど過去編でございます。

といっても前後編で片付けて戦いの続きへ帰る予定です。ではまたノシ

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