全てエリックのせい
風と共に去りぬの時代をイメージしています。
エリックは、ルーク・ビッドを強制連行して一緒に戦争に行った。
私は前世でも今世でも童貞のまま死に絶えていくルークの魂がかわいそうで涙が出そうだった。
エリックとルークが戦争へ行ってから4年近くたった。
ルーク・ビッドは、行方不明である。物語通りならきっと死んでいるのだろう。
エリックは、ちゃっかり生きていたらしい。ちなにも腹立たしいことにエリックは、お金持ちになっていた。彼は北軍の封鎖を破って商品を投機的に売り巨万の富を築きあげたからだ。
物語通り、私の実家であるアンショー家は見事に没落していった。
意地悪な北部の人間に目をつけられ、金目のものは奪われた。
しかし、物語の筋書きを知っていたため、没落も最小限に抑えることができた。また、本当に貴重な金目のものは予め売り払い、お金にして隠しておいたため、財産もかなり残っている状態だった。
けれども、ここで物語には起こらなかった出来事が発生した。土地を持っているだけで、莫大な印税を取られることとなったのである。こうして私たちは、財産のほとんどを失った。
そして、物語通りお母さんマノンは、チフスにかかった。薬は高くてとても買えない。
お金が必要だ。
このままだと一家で病気か飢えで死んでしまう。
この際、北部の人間だとか関係ない。適当な旦那を見つけて結婚してしまえばいい。
幸い、私には美貌がある。きっとなんとかなるわ。
私は、様々な人間を徹底的に調べ上げた。
そしてターゲットは、こいつになった。
グリード・モンブラン。39歳独身男。
事業を成功させてお金持ちになった。
この人と結婚すれば、もうひもじい思いもしなくてすむのだ。
私は、敵であろうとお金のためなら何でもするわ。
このじじいを全力で落として見せる!女の本気をなめるな。
私は、町で偶然彼にぶつかり彼とお茶をした。
それから、一緒に散歩をした。私のいけいけドキドキ誘惑大作戦は、成功中である。
「ねえ、寒いから私の手をにげってくださらない?」
そう言って手を差し出した。
上目遣いで相手を見て、長い睫毛を強調するように目をパチパチする。
グリードの頬が真っ赤になる。彼は、震える手で私の手を握った。
よしっ。計画通り。
最後は、グリードから誘ってくださった。
「ノエル様。また今度私とお会いしてくださりませんか?」
「はい、楽しみにしています」
目をうるませ、はにかみながら答える私。
完璧な演技。完璧な態度。
ああ、私はきっと彼のハートを射止めることができたに違いない。
しかし、グリードは、一週間後別の女を結婚した。
次の男は、ミカエル・ダーウィンにした。
けれども、彼は私と会った三日後、別の女と駆け落ちをした。
失恋ごときでへこたれてたまるか。私は、飢え死にしそうなのよ。
私は不屈の精神で立ち上がった。
次の男は、クリスティン・ルービックにした。
彼は、次の日、幼馴染のローズ・マリーと付き合いだした。
たまたまローズ・マリーに会った時のことだった。
「あら、あなたエリックは最近どう?」
「最近どうだどころか、戦争から帰って来てから彼とは一度も会っていないわ」
しかし、その後にローズが信じられないことを言ってきた。
「まあ、照れなくてもいいのよ。
エリックとあなたが深く愛し合っていることは知っているのだから」
……何か、ものすごい誤解が広まっていた。
「どうしてそう思うの?」
「エリックが、そう友達に言っているわよ。
ノエルが手編みのマフラーをくれた話とか」
何、その作り話……。
私は、怒りのあまり唇をひくつかせながら彼女の話を聞いていた。
「あと、私がクリスティンと婚約できたのは全てエリックのおかげなの」
「エリックの……おかげ……」
私の頭の中で、『エリックのおかげ』が『全てエリックのせい』に変換された。
「そうよ。私がクリスティンを好きなことに気が付いたエリックが、クリスティンを説き伏せてくれたの。
ノエルも協力してくれていたのね。私ったらそんなことにも気が付かず、クリスティンと一緒にいたあなたに嫉妬してしまったわ。ありがとう」
何も知らないローズは、バラのように華やかな笑顔を浮かべた。
「そういえば、最近ノエルが知らない男性と一緒にいるところを見たわ。
ノエルもかわいいところがあるじゃない。
エリックにやきもちを焼かせたくて、他の男と一緒にいようとするなんて。
そして最後には泣きながらエリックに謝罪をするなんて」
ぶちっ。
私の脳内で何かが切れる音がした。
読んでくださりありがとうございます。




