小さなノエル
少しずつ繋げていくつもりです。
『僕らの永遠』と『ray』という曲にはまり中。
黒羽皐月という少女はノエルに憧れた。
ノエルを自分とは全然違って、生きたいように生きるその姿を尊敬した。
けれども、ノエルという少女が生きたいように生きたという少女だという認識は間違っている。
なぜなら、ノエルは“偽物”の人間なのだから。
1843年。ジョージア州でノエル・アンショーは生まれた。
パッチリとした母親譲りの薄い青い目と、父親譲りの輝くような金色の髪の毛。天使みたいに美しい子供だった。
けれども、美しい子が愛されるとは限らない。
誰もノエルを認めようとしなかった。
誰もノエルを愛そうとしなかった。
周りにいた人たちは、こんな子供生まれなければよかったのにと思った。
小さいノエルはとてもかわいそうな子供だったのである。
……愛人の子供として生まれたのだから。
領主であるジェイコブ・アンショーとビビアン・アンショーは結婚していた。
けれども、生まれつき浮気性のジェイコブは薄い青い瞳の持ち主であるメイドのエマ・オースティンに惹かれていった。
そしてエマとジェイコブの間に生まれたのがノエル・アンショーだったのである。
妻であるビビアンとジェイコブの間には残念ながら子供が生まれなかった。
そのため、ビビアンは殺してやりたいほどノエルとエマのことを憎んでいたがノエルを時期領主として認めるしか選択肢がなかった。
ノエルの実の母親であるエマは、ノエルを生むと同時にビビアンにより屋敷から追い出されて出ていった。
ビビアンは、いつもノエルを苛めてストレスを発散していた。
「ノエル。庭じゅうの草むしりをしなさい」
「はい。お母様」
「その後は屋敷じゅうの掃除をしなさい」
「はい。お母様」
ノエルは、美しいお母様にいつも苛められていたが、心の奥底ではお母様に愛されたいという願望があった。
ノエル以外には優しく接するお母様の愛が欲しくてたまらなかった。
愛というものが手に入らなければ手に入らないほど欲しくてたまらなくなった。
愛されようと必死で努力するノエルはこうして生まれていった。
ノエルとは愛を求めた化け物みたいな少女なのである。
ビビアンはノエルが10歳になった時に病気で死んでしまった。
美しくてかわいくて、純情なノエルがビビアンから愛されることはなかった。
ビビアンはよくノエルに言っていた。
「あんたなんて大嫌いよ」
冷たい藍色の目を今でもよく覚えている。
やがてあたし……ノエルは誰にも愛されなかった分、たくさんの愛を求めるようになった。
“愛されるノエル”を演じ続けていった。
「ピーター。今日のあなたはすごくかっこいいわ」
バーカ。キモガエルみたいな声であたしに話しかけるな!
「あなたみたいに優しい人間って好きよ」
そうやって骨の髄まで一生あたしに利用されなさい。
「ありがとう。あなたはとっても素敵な人間だわ」
勘違いするな。キモデブ男。
心で思っている言葉と口から出る言葉はいつも違った。
ただのお世辞と偽りの笑みを振りまき続けた。
周りにいる女の子達は嫉妬のこもった目でノエルを見ていたが、大して気にしなかった。
嫌われることは怖くなかった。
もう嫌われることになれていたのだから。
愛される自分が欲しかった。
もっと……もっと……もっと。
愛が欲しい。
あたしを見て。
あたしに服従されなさい。
美とお金という権力を振りかざすノエルは、気に入らない子は排除していった。
学校では最初はジューシー・ミルクを苛めていたが、彼女を庇ってノエルに向かってお説教をしてきたセイラ・ミルフィーユを苛めるようになった。
ノエルと違って黒くならない聖女みたいな心をしたセイラのことは大嫌いだった。
他人に気に入られようと
必死で自分を作っていた。
思ってもいない言葉を吐き
楽しくもないのに笑い
尊敬していないのに褒める。
心ではバカにしているのに……
そうやって愛されたかった
愛され求められ認められる自分でありたかった
愛されれば愛されるほど自分が輝いている気がした。
ちやほやされればされるほど自分に価値がある気がした。
優しい嘘と輝くような微笑み。
ノエルは次々に周りにいる男の子達を征服していった。
そんなノエルはある日、エリック・ブラウンと出会った。
イギリスからブラウン家が引っ越してきたのである。
彼は、今まで見たどんな男の子達よりも美しい少年だった。
薄い唇、陶器みたいに滑らかな肌、長い睫毛、整った高めの鼻、サラサラとした絹みたいに美しい黒い髪。
天使だって彼ほど美しくないだろうとあたしは思った。
そしてとても冷たい藍色の目をしていた。
夜空を切り取ってはめ込んだみたいに美しい目だ。
お母様と同じ目だ。
あたしはそう思った。
ありがとうございます。




