日曜日
わーん……。
嫌なことがあったよ~(泣き)
でもがんばるの。
「やあ、ノエル。僕は戦争に行くことにした」
天気のいい日曜日の午後、奴は突然私の家へやってきてこんなことをしゃべりだした。
「そう。さようなら、永遠に。あなたが死んだら世界はますます素敵な場所になるでしょう」
神様どうもありがとう。
今日は本当にいいことがあった。
明日もいいことがありますように。
神様に感謝するなんて私はなんてすばらしい人間なんでしょう。
「南部のために戦争に行く心優しい僕に向かって送る優しい一言はないのか?」
エリック・ブラウンは、そんな私を不満そうな目で見ながら話しかけてきた。
「南部のために死んでいくあなたの姿はきっと素敵だと思う」
「僕が死ぬことは決定事項なのか?」
「もちろんよ。でも、大丈夫よ。あなたは死んでも私の心で生き続けるわ。
……死んでから最初の3分くらいは」
「それはさすがに短すぎるだろう」
その時、私の頭に稲妻みたいに名案を駆け巡った。
「ああ、そうだ。これから死ぬ人間と婚約した状態は嫌だから婚約破棄をしてくれないかしら?」
「するわけないだろう」
彼はニヤニヤとした意地の悪そうな顔で私を見てきた。
私は奴から顔の皮をひきはがしてやりたい気分になった。
「この冷血漢!どうして婚約破棄してくれないのよ」
「どうやら僕は君が嫌がることをするのが好きらしい」
彼はニコニコとした王子スマイルでひどいことを言う。
「まあ、なんてひどい性格をしているのかしら。生まれ変わることを提案するわ」
「ああ、その方がいいかもしれない。
僕は君の僕を思って苦しんで、泣く姿を見てみたいよ。
僕を思って怒り狂う姿でもかまわない
君が僕のために死ぬ姿なんていうものも見てみたいよ」
「失礼な人ね。この腹黒どエス男、今すぐ土下座して謝りなさい」
「土下座って何?見本を見せてくれないか?」
そっか……土下座も知らないのか。じゃあ、私が見本を見せないと……ってそうなるわけないでしょう!そんなことしたら私が奴に向かって土下座をすることになるじゃない。
「そんな手にひっかかってたまるもんですか!」
「ノエルの僕を睨む目ってまるでペルシシャ猫みたいだ。かわいくないこともない。
そうだ。勇ましい僕のためにハンカチでもくれないか?」
「それくらいならいいわよ。……やっぱり、ハンカチがもったいないから死んでくれないかしら?」
「僕の価値はハンカチ以下か」
「とんでもない。比べるなんてハンカチに失礼だわ」
「僕に失礼だろう」
私はこぶしを握り締め政治家のように熱烈に語りだした。
「何てバカなことを言っているの!ハンカチは人の濡れた手を拭くのに役に立つし、汚れをとることもできる。大切な鍵や飾りを保管しておくのにも役に立つのよ。人が作り出した奇跡みたいにすばらしいものよ。
それに比べてあなたは何の役にも立たないただのご飯を食べて寝るだけの物体じゃない」
「もう何も言うまい。
ところで、ノエル。君がルークのもとにせっせと通っているという噂を聞いたんだけど」
「ああ、ルークと私は深い絆で結ばれているからね」
そう言ったとたん、彼の表情がガラリと変わった。
顔は笑みを浮かべているが目が笑っていない。
まるで人を殺しそうな目だと思った。
「どうしてルークなんかにこだわる?
僕のほうがルークよりもかっこいいし、頭もいいし、財産もある。
女の子の扱いも、運動神経も上だ」
「まあ、いい物件だこと。今すぐ不動産会社へ売ってしまいたいくらい。
性格は腐った人参みたいだけど」
エリックはそんな私を無視して考え込むように話し始める。
「僕はどうして君があんな戦争に行く勇気もないゴミみたいな男にに執着するか考えてみた。
そしてある一つの可能性が浮かび上がった。
ルークは君の秘密を知っている。例えば君の正体がノエルではないことを」
「私がノエルじゃないってどういうこと?」
声が震えないようにするので精いっぱいだった。
黒い髪で少しだけ隠されている藍色の瞳が檻のように私を捉える。
「これまでの君の言動から僕は一つの結論にたどり着いた」
エリックはもう一歩私のほうへ近づいてから聞いてきた。
「君は前までのノエルとは別人なんじゃないか?」
藍色の目が見透かすように私を見てきた。
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