嫌よ嫌よも、本当に嫌なんですやめてください警察呼びますよ?
余談ではあるが、天使におむつ交換時に拭かれてる時、女性としての気持ちよさを感じていたことを懺悔します。まじごめんなさいでも体は正直なの。
実はこれ、いつからかは覚えてないんだよね。
1歳になった頃は既に感じていたと思う。ただ、その時はゾクゾクする感じの正体をわかっていなかった。
天使に下の世話をされている羞恥心と背徳感からくるもので、俺ってドMだったんだなぁとか思ってたんだけど、よくよく考えてみればそういう事なんだよな。
男の時とは異なる快楽。しかし性欲はないに等しいのでお猿になったりはしないが、知的好奇心は旺盛に反応している。流石に自重しているが、将来的にお猿になる日も近い……予感で不安がいっぱいおっぱいである。おっぱいではない。おま(自主規制)。
話をそらそう。
少し前から、雀はイヤイヤ期である。まるで小さくてかわいいい雀。
略してちいすず。ワァ!イヤッ!イヤッ!
もう反射で否定から入る。成人なら人から嫌われるタイプ。赤ちゃんにしか許されないムーブである。
ご飯の時も、着替えの時もお風呂の時も。彼女の語彙は「イヤ」含む否定しかないのではと疑うほどだ。
他によく使う言葉なんて数えるほどしかない。
「すー」「かえちゃ」「ママ」「あそぼ」「おやつ」「ふんっ」「遅い!」「来ないで!」「わざと!」……否定以外も結構あるな?さすが2歳児。そして同行時には遅いと急かしたり、来ないでと拒否したり情緒不安定すぎるだろかわいいなぁもう。
雀の可愛さは置いといて、俺は思った。これは真似せねばならないのではないかと。
前世持ち(前科ではない)とバレないように「普通の二歳児」を演じなければならない。
つまり雀がイヤイヤ期なら、俺もイーヤーヤハヤハ期であるべきなのだ。あれ?ちいすずに引っ張られているな?
そうしてイヤイヤ期に突入するべく、シチュエーションごとのイメトレは完璧。セリフも声に出して練習済みで、声量も抑揚も完ぺきにした。客先でのプレゼンより気合を入れて、天使からの声掛けを待つ。
そして迎えたこの瞬間。俺の役者としての才能を見せてやるぜ!
「楓ー、お着替えしようね」
「……うん」
「楓ー、おっぱいの時間ですよー」
「……うん」
「楓ー、お風呂いこうねー」
「……うん」
何一つイヤイヤできていない。
なぜか。それは他でもない、天使の顔を見るとつい素直になってしまうからだ。
人間として当たり前の反射行動である。天使様マジ天使。
「ごめんね素直じゃなくて。夢の中ならいえる」って感じのツンデレじゃないと、イヤイヤするのは不可能だろこれ。
むしろ「はい、喜んで!」と言いたくなる。2歳児ロールプレイする必要がなければ言っていた。
だが、それくらい天使の頼みは聞いてしまう。だってさ、あのビジュで嬉しそうににこにこと話しかけられてごらんなさいよ?全男性は落ちる。恋にではない。奴隷落ちである。恋という名の。結果恋だったすまん。従順にして純情であった。童貞ともいう。今は処女だった。
「楓は本当にいい子ねぇ」
天使はそう言って、感極まったといわんばかりに強めのハグをしてくる。
その温もりが心地よくて、幸せすぎてまた素直になる。イヤイヤ期ならぬデレデレ期である。2歳児ならぬ魅了済みである。
ダメすぎる。この調子ではイヤイヤ期など永遠に来ない。思春期も来ないであろう。
……精神は49歳なんだから思春期が来ないのは当たり前か。思春期は迎えないだろうが、中高生になる時は来る。できれば、今度はまともな青春時代を迎えたいものだ。無患樹楓復活!アオハルしてぇ~。
まぁ、いっか。前述したように天使の前では誰だって素直になる。そういう生き物なのだ。
あの雀だって天使の前では……ごめんね素直じゃなくて状態である。イヤイヤしてたってことだよ言わせんな恥ずかしい。
できないものは仕方ない。天使の悲しむ顔なんて見たくないのだ。俺にできることはなんだってする所存。手のひらくるっとひっくり返して、イヤイヤ期作戦は終息した。というより諦めた。
***
今までさんざん話題に出てきた授乳について語ろうと思う。
今だ続いている。母乳って2年以上も出続けるものなのなんだね。人体の神秘!
というかこれって何歳まで飲むものなの?前世知識では話し始めた子が飲んでいる記憶はなかったんだが、俺が独身だから知らないだけで普通はそういうもんだったりする?
ほんと前世知識役に立たない。弱くてニューゲームである。
そんなわけで辞め時がわからず、2歳になっても俺は天使の天使乳を飲んでいる。
1日3回。朝、昼、晩の食後1~2時間開けて服用している。完全にお薬である。合法のだよ?
……あれ?49歳児が、見た目中高生のロリママおっぱいに吸い付いてるって考えると違法性高くない?考えるのやめとこう。脳どころか人生が破壊されてしまう。
習慣化といえば聞こえはいいが、そんな生易しいものではなくもはや依存である。中毒である。
中毒性あるのかよ。違法性増したな。実は脱法ドラッグだった?
まぁ依存しているのは俺ではなく天使のほうなのだが。
俺としてはいまだに気恥ずかしさも後ろめたさもあり、辞めたい気持ちが強い。
少し嘘つきました。ぎりぎり辞めたい気持ちが上回っている。
授乳とは、スキンシップと愛情表現の最上位なんだと感じている。だからそれがなくなることは少し……かなり……だいぶ……悶絶するほど悲しくはある。
それでも日に日に、バレた時の不安や後ろめたさが大きくなっているのも事実であり、早めに辞めたい気持ちが強くなりつつある。
それなのになぜいまだ吸い続けているのかといえば、天使が楽しみにしているからだ。
おむつ替えもなくなった。補助なしでご飯も食べる。夜泣きしない。日中もおとなしい。
手のかからない子どもであるから、授乳は世話を焼ける数少ない機会になってしまっている。
俺が飲むのを止めたら、彼女はきっと寂しがる。そう思うと、止められない。
単純に俺が飲みたいから言い訳をしているわけではない。……ないよね?少し不安になってきた。
俺は普通の子ではないのだ。通常の育児よりはるかに楽であることは、果たして良いことといえるのか。天使を見ているとそのことに罪悪感を覚えてしまう。聞き分けのいい俺を見て、少し寂しそうに微笑む天使。授乳の時間が近づくと、嬉しそうに鼻歌を始める天使。授乳中は慈愛の表情でじっと見つめてくる天使。そして授乳を終えると、名残惜しそうに俺を撫で、また少し寂しそうに微笑む。
……だから、天使が望む限りはおっぱいを吸い続けることをここに誓います!
ごめん。長いシリアスには耐えられない。49歳児がおっぱい吸う話題でシリアスになるのもおかしいけどな!
しかしながら、早めに授乳を辞めたい理由がっもう一つ。雀である。
「かえちゃ、まだおっぱい?」
彼女はそう言って鼻で「ふっ」と笑う。2歳児が鼻で笑うな。誰に教わった?俺じゃないよね?
……これ、1歳の時もやったな?デジャブデジャブ。
「すーちゃ、おっぱいやめたもん」
雀はそう言って得意げに胸を張る。天使と雀ママの会話で拾った情報によると、彼女は1歳になったころには卒乳したらしい。1歳は早くない?さすがにハイハイしているうちは吸えよ!
……いや、もう雀は1歳の時は立ち歩き始めてたわ。体力お化けだもんな。
まぁ、マウント取ってくるのは良い。何せドヤ顏がかわいいので。
思わず「そうだね、すーちゃんは凄いね!」とにこにこしながら頭を撫でてしまうまである。
まんざらでもなさげに受け入れる雀がまたかわいい。世界で1番かわいい。
天使はどうしたって?殿堂入りしてるからランキングにエントリーできないのです。
それに天使を人類のランキングに混ぜるのも、ね?
問題なのは、天使に対して負けず嫌いが発動するからである。
雀がいるときに授乳していると、終わった後に自分の胸を指さして「かえちゃ、のむ?」と言ってくるのだ。いや、飲まないけど。出ないし。
……出たら飲むみたいになってしまったけど飲みません。なぜ飲むと思ったか小一時間問い詰めたい。
雀は俺のことを自分のものと思っている節がある。そのため天使が俺のお世話をすると、マネして世話を焼こうとしてくるのだ。そして俺が拒否ると実力行使に出る。
吸わないと分かると強引に俺の頭を自分の胸に押し付けようとして、なぜかヘッドロックをかましてくる。雀七不思議のひとつである。
そしてヘッドロックの体制から自分の胸に俺の顔を持っていこうとしてか、不器用に腕の力だけが込められる。つまり痛い。2歳児の体では思わず泣いちゃう痛さである。雀マジいじめっ子。
実際かなりの負担になるので切実にやめてほしい。たまに頭ではなく首に腕がかかっており、窒息死しかけることもある。
誰か助けてくれ。でもかわいい。思わず気持ち悪くニマニマしちゃうが死活問題なのでやめてほしい。
「すーちゃん、やめて」
「やだ!」
「苦しい」
「あそぼ!」
会話になっていない。ヘッドロックしているうちに目的を忘れ、楽しくなった気分のままに遊びへのお誘いになる。自由すぎるかわいいかよ。
というか力つよっ!何かしらのスポーツクラブに入れたほうがいいと思う。絶対大成する。どうも幼馴染バカです。でも田舎過ぎてスポーツクラブなんてなさそう。
仕方ない、雀はわしが育てる!
そんな俺の姿を見て、天使と雀の母は笑っている。笑い事ではない。俺の命がかかっているのだ。
今更だが、雀の母の名前は飛鳥である。チャゲじゃないほう。またドラッグの話題かやめとけ!
「雀、楓ちゃんを離してあげて」
飛鳥さんがそう言うとしぶしぶ俺を開放する。今日も生き残れたぜ。
しかしその顔は不満そうだ。しょうがないので、雀におんぶしてもらうような感じでうしろから抱き着く……というか飛び乗る。スキンシップ大好き雀はこれでご機嫌回復間違いなしである。
雀は俺を支えようとするが、支えきれずに倒れこむ。そのままいちゃつき開始。必殺横四方固めである。
よちよち歩きの俺は立っていたら一切雀に勝てる気がしないが、グラウンドであれば勝てるのだ!多分!
結果はあっという間に抜けられて逆にのしかかられる。
……死亡時のトラウマが蘇ってくる。圧迫死はもうイヤだ!圧迫以外の死もイヤだけど!
結果必死に暴れて抜け出そうとするので、全力が伝わってこれには雀もにっこりご満悦である。
遊んでる場合じゃない!助けてままぁ!




