2歳ということは、人生の1/40を消化したんだぜ?
ここから先、ストックを消化したため1話あたりの文字数が少なくなると思われます。できるだけ頑張る所存ではあります。
時は流れて俺は2歳になっていた。
早いものである。年をとるたびに時間の進みは加速するものだけど、もしかしたら前世の47年分も含んだ加速度になっているのでは?
まぁこの2年間は濃密だったしなぁ。濃密というより混沌としていた。
なんせ性別は変わるし、天使に魅了される日々だし、幼馴染という名の台風がいるのだ。平穏な日々など訪れるはずがない。
まずはこの1年の、俺と台風の成長について語っていきたい。
俺はよちよち歩きを始めている。その姿は、我ながらひどく可愛い。さすが天使の子。2歳にして立派ナルシストっぷりを発揮しているが、このまま進んで俺の将来は大丈夫なのだろうか?
と、不安になったのもつかの間。
俺なんか凡人以下だと知らしめるが如く、雀はよちよち歩きなんてとっくに卒業し、すでに走回っていた。
言い訳させて?
そりゃ毎日全力タイフーンの雀と吸っちゃ寝の俺ではかは体力も運動能力も雲泥の差になっちゃうよね?
前世では運動不足解消のため、意識して歩いていた。通勤で歩き、積極的に階段を使い、休日には携帯アプリ片手にウォーキングに勤しんだ。生活習慣病が怖かったからだ。
しかしこの2年間、俺はほとんど寝たきり。雀にそこそこ振り回されているが、基本はベビーベッドの住人だった。だって2歳だもの。なにも怖くない。
対生活習慣病のダイヤは、疑いようもなく10:0だ。
だから未だによちよち歩きなのだ。まじで筋肉が自由に動かさない。前世の感覚が不協和音を起こしている説もある。これが噂の前世知識無能!
「よちよち……可愛いは正義ね……」
天使は優しく笑ってそう言うが、これは笑い事ではない。というか俺も充分マザコンだが、天使も半端なくチャイコンである。相思相愛とも言う。
話がそれた。
二歳児の標準的な発達段階からすれば、そろそろ安定して歩けるようになっている……気がする。現に雀はもう走しってるし。あの小さな体で、庭や畑を縦横無尽に駆け回っている。もはや化け物すぎて参考にならない。合ってるよね?雀は普通で俺が貧弱なだけって事は無いよね?少し不安になってきた。他に参考となる同年代がいないからなぁ。
「すーちゃん、はやいね」
俺がそう言うと、雀は得意げに鼻を高くする。
「すー、はやい!かえちゃ、おそい!」
はい、その通りでございます。また大人としては情けないが事実だ。俺は雀の半分の速度も出ない。前世では体育の成績は中の下だったが、二度目の人生ではさらに運動能力が低くなっていると思う。だって女の子だもん!男の時と比べたらいけない!現実逃避完了!
ちなみにサラッと流したが、雀は二語文でのコミニケーションが可能となっている。
もちろん俺もスズメに合わせて二語分でしゃべっているが、仕方ないとは言えこの喋り方は気恥ずかしい。運動能力と同じ位のスピードで、言語能力も成長して欲しかった。
むしろ逆パターンで、運動能力控えめであって欲しかった。何せ、雀を追いかけられないのだ。
彼女は日に日に活発になり、行動範囲を広げている。俺はその背中を、よちよち歩きで必死に追いかけるしかない。まるで雀が親鳥で、俺が置いていかれないよう必死に追いかける雛鳥である。おかしいな?どこで間違った?
「楓ちゃん、頑張って歩いてるねぇ」
雀の母親がそう言って笑う。その笑顔は、完全に「微笑ましいものを見る目」である。1歩間違えれば「蔑む目」である。というか「雀はもう走れるのに……ぷーくすくす」と嘲笑されていると感じるのは、きっと被害妄想の賜物である。賜物って思って逃避しなきゃ心が壊れてしまう。
……天使や雀は大丈夫なのに、雀ママはダメなようである。目があっただけで、近くに詰められただけで、萎縮してしまう。前世で植え付けられた女性への恐怖は、根強く残っているようだ。全く情けない。
今ので何回目の「情けない」でしょうか?正解者の方には色々特典が用意してあります、嘘だけど!
次!実はらつい最近トイレトレーニングが開始された。長かった!2年間。約2年間もおむつの中でしなきゃいけなかったのだ。やっと、やっと自由にいたせる!おまるにだけど!くっ、殺せっ!
お漏らしから解放されたと思った瞬間、新たな悩みが浮上する。このことは本当に悩んだ。
トイレトレーニングは通常、成功したり失敗したりを繰り返すのだろう。しかしながら俺はもう「失敗」という名のお漏らしをしたくないのだ。
普通の2歳児を演じるなら、まだおむつでもいいはずだ。実際、雀はまだおむつをしている。彼女の母親も「雀はまだいいかなぁ」と言っていた。
しかし。俺の精神的限界が先に来ていた。
オムツ内での排洩。これがもう、耐えられないのだ。
てかしょっちゅう排泄問題語ってない俺??
まぁそれだけ心に刺さってる棘が大きいのだ。
1歳の頃はまだ「赤ちゃんだから仕方ない」と割り切れていた……というより諦めていた。自分だけではたいして動けないし、されるがままにしていたほうが結果早く終わる。
自分の意思でトイレに行けるのに、それをしないでオムツにするというのは精神的にキツすぎる。前世の記憶がある以上、これはもう屈辱以外の何物でもない。
まさに変態の所業である。おまわりさん!変態はこっちです駄文ね?たすけてよー!
「かえで、おむつ替えるよ」
天使がそう言って俺を仰向けにするたび、俺は心の中で叫んでいた。自分で行ける!トイレに行かせてくれ!もう2歳になるのだ、と。
我ながら説得力のない叫びだな?
だから決めた。完璧にこなしてやろうと。
いや、これ実は危険な選択だった。
2歳児としては異常だろう。本来は時には漏らし少しずつ覚えていくものだ。それを最初から完璧にこなせば、周囲に違和感を与えるかもしれない。
しかし、俺は選んだ。精神衛生を優先した。
結果から言うとこれが意外な形でうまくいった。何と、雀が対抗心を燃やしたのだ。持つべきものは元気な幼馴染台風だね!
「すーも、できる!」
俺がトイレに行くのを見て、雀がそう宣言した。そして彼女は、本当にやり始めたのだ。失敗することもあったが、それでもめげずに「もう一回!」とトイレに駆け込む。その姿は、まさに小さな戦士であった。
……そんな連続で行っても出ないとは思うけどな??
「雀が自分からトイレトレーニングし始めるなんて……!」
雀の母親は驚いていた。
「楓と一緒がいいのよね?」
そう言って、二人は笑い合った。あっぶねぇ。見事俺からは目線が逸れてる。ぐっじょぶ雀!
一難去った事で「俺、失敗しませんので」と脳内でカッコつけつつ、雀が話題の中心であることに安堵する。俺の異常な完璧さが目立たずに済んだのだ。ありがとう、雀。君の負けず嫌いには本当に助けられている。
しかし、雀は今でも時々失敗する。俺はそのたびに「すーちゃん、だいじょうぶ?」と声をかけるが、彼女は悔しそうな顔をして「わざとやった!」と言い張る。いや、わざと漏らすな。ドン引きするぞ?
そんなこんなで、トイレトレーニングは思ったより早く片付いた。俺はもうおむつを卒業……させてはもらえないが、漏らすことはない。パンツをゲットする日も近いはずだ。これにはスカートの中に潜む系のポケモンもニッコリだ。




