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貞操逆転世界にTS転生したのってハードモードでは?俺前世でそんな悪いことした?  作者: スノーマン
幼少編

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5/11

赤ちゃん相手だから。だげど同級生相手と考えるとダメじゃね?

意識が覚醒する。最初に感じたのは、左手が生暖かい何かに包まれている感触。

怪訝に思いそちらを見ると……食われてますね、雀に。指しゃぶりなら聞いたことあるけど、あれって親指一本とかじゃないの?フィスト一本いっちゃうものなの?


「かえでは起きたのね。おっぱいの時間だけど、すーちゃん寝てるみたいだからもうちょっとお昼寝しててね」


天使がそう言って俺の頭を撫でた後、キッチンに向かっていく。ふぅ。おっp……恥辱の時間が先延ばしにされて助かったぜ雀、恨むからな?

二律背反した心が生み出す葛藤にも慣れきってしまった。世の中なるようにしかならないのだ。1歳にして人生悟ってしまったな。


あの後、なんとかベビーベッドに雀を連れ込む事に成功した。なんか誤解を招く描写だな?

基本的には先ほどの攻防戦が繰り広げられるほど長時間放置されることはい。俺だけであれば(基本ベビーベッドで大人しくしているからだろう)また別だが、雀が通うようになってからはどちらかのママが見守っている。

まぁ、トイレに行ったり、来客があったりで短時間目を離すことは今までもあったが、今日みたいに洗濯物を干しに行って、20分ほどいなくなることはなかった。


これ、俺が雀止めてくれるって思われてない??

少なくとも、何かあれば泣いて知らせてくれるって思われてる?

なーんてことはなく、単純に子育てに慣れ始めて、ちょっとくらい大丈夫だろうって油断してきたんだろう。

……それはそれで危機的状況じゃね?

どうしたものかと思案するも、赤ちゃんの俺にできることはなさそうだわ。

いつでも泣けるように訓練しとくくらい?前世と合わせて48歳ですけど余裕ですね?恥も外聞もなく秒で泣いて見せますよ!


それにしても……臭うな。考えないように考え事をしていたけど限界だ。

この身体は困った事に嗅覚が鋭いようで、おそらくもう俺は涙目になっているであろう。そして吐きそう。

耐え難い、この匂いは……。


「あーあー!(すーちゃんのおむつからだな!)」


俺はストレス解消兼、天使召喚のため叫んだ。叫んだということは肺の中身を吐き出したということで、その分空気という名の悪臭を取り込まなければならない。ストレス解消にはなったが、ギネスになる速さでリバウンドした。禿げそうだし吐きそう。


なんとか吐き気を堪えながら、浅く短く呼吸をする。

ママは台所でお茶を入れている。

俺の叫び声も聞こえていたと思うが、火の元を優先したようで、こちらにくる気配はない。


もう一回叫ぶか?とママの方を見ると、ルンルンで鼻歌を響かせながら身体をくねらせている。

え。なにあれうちの天使可愛過ぎん?

音痴で運痴だけど。あの歌と踊り、天使の外見じゃなかったらSAN値チェック必要じゃない?


奇妙な踊りを披露しているが片手にはお高そうな、おそらく紅茶の物であろう缶を乗せている。

くっ、ティータイムか。こればまずい。

天使はイギリスの血でも流れてるのかってくらい、ティータイムは動かない。空中に絵が描ける漫画家並みに動かない。マジで山の如し。


このままでは部屋中に匂いが充満する。そして雀がおむつかぶれになる危険性がある。まずい。まずいぞおむつかぶれは!


俺は意を決した。

俺がおむつを替えるしかない。吐く前に。


前世知識は使い物にならないが、日々やられていることだ。手順は完璧に把握できている!

ところで転生特典チートはないんですかね?

倫理的にどうなのだって一瞬思ったが、今は俺も女だし赤ちゃん同士だ。問題はない。

というか流石に赤ちゃん相手に邪な気持ちはない。


だが何故だろう。心のどこかで抵抗がある。

おそらくだが、自分が前世の記憶持ちだということがバレた時の事を気にしてしまうのだろう。

こればかりは考えても仕方ない事なのに、おじさんだと女性にバレることが恐怖で仕方がない。


いやいや、これは赤ちゃんの世話だ。純粋な行為だ。そう自分に言い聞かせる。


彼女が寝ているうちに手早く済ませてしまうと、寝ている雀に近づく。なんかヤバい描写になるんだよな。おかしいなぁ?


新しいオムツは手が届くところにある。柵の隙間から手を伸ばし引き寄せる。オムツ替え用の敷マットは、柵の間を通りそうにない。今回は布団の上でやるしかないので、溢さないように細心の注意を払おう。


「あー、あー(さて、ぬぎぬぎしましょうねー)」


セリフまで変態みを帯び始めたな?冤罪なんです本当です信じてください。

テープを剥がそうとするが、これが意外と固い。1歳児の指では、なかなか上手くいかない。

手こずっている間に身体が揺すられたためだろうか。

雀が起きてしまったらしい。

脱がそうとする俺を、可愛いお目目がじっと見つめている。あの、免罪なんです本当です信じてください。


判決までの間は一瞬だった。有罪!と言わんばかりに暴れ始める雀。めっちゃ嬉しそうにしてるのは遊びが始まったからですよね?決定的証拠を押さえて断罪できるからではないですよね!?


「あー!あー!(じっとして!匂いが!)」


「あー!」


これは中断するしかと思っていたのに、雀がなバレた勢いでテープが剥がれた。さすがっす雀さん。俺では成し得なかった事を秒でやってのけるパワー!

成して欲しくなかったけど。泣けてくるね!


これまで以上に俺の嗅覚を刺激する悪臭に、危うく虹を作り出すところだった。ミッションは失敗、さしかし、新たな緊急ミッションが発生している。

テープが片方剥がれてしまっているので、いつ(排泄物が)ポロリしてもおかしくない!なんとしてもバイオハザードを防がなければ!


対処法は3つ。

1.天使のティータイムを邪魔する

多分無理。もうちょっと待ってねー、と呑気に返されるだけだ終わる。ガチ泣きすればワンチャンあるかもしれないが、視覚的には安全な状態では天使は動いてくれないだろう。


2.ティータイムが終わるまで雀を動かないよう抑える

無理。できたら苦労しない。


3.諦める。現実は非常である。

布団は汚物に塗れ、俺は吐く運命だ。


「ぎゃー!ぎゃー!(たすけてー!ままー!」


絶望の選択肢しかないが!それでもノータイムで1を選択するほど残り2つは選べないんだよぉぉぉぉ!

少しでも時間を!時間を稼がなくては!

そう!横四方固めだ!それしかない!

おむつから自分の鼻を遠ざけられ、雀の体を上向きから変えさせない!完璧な体制!

え?赤ちゃんは横四方固めをしない?してるやろがい!


しかしこれは双刃の剣すぎる。というか逆刃刀まである。押さえ込むための運動で呼吸が荒くなるし、天使を呼ぶために叫び続けているのだ。悪臭の吸収量が半端ない。ダメ吐く。吐くって!やべちょっとはいた!

やっべ。すずめの顔にかかってるマジごめんってでも暴れないでブリッジしないでフィジカル凄いな!?


「楓、雀。いくら赤ちゃんでも許される事と許されないことがあるのよ?」


殺気!?

いつの間にか近くまで来ていた天使が、天使の笑顔でこちらを見下ろしていた。

SAN値チェック入りまーす!


***


「はい、おしまい。それじゃ2人とも、ティータイム中は大人しくしてるのよー?おっぱいはそのあとねー?お湯も沸かし直さなきゃ」


てきぱきと雀のおむつを替え終わり、吐いたミルクの片付けも終え、天使がキッチンへと戻っていく。その手際の良さはさすが母親だ。俺はへとへとになりながら天使を見送った。ああ助かったおっぱい飲みたい。

……疲れ過ぎて素直に癒しを求めてしまった。悔しいでも抗えない!


雀も先ほどの殺気に当てられたのか、お腹を見せて服従アピールしている猫の如く大人しくしている。

マジで手足とかそんな感じなんだけど。

本能?赤ちゃんだし野生に近い感じなの?

それなら俺は完全に舐められてるってことだよね?


雀は本当に手がかかる。何でも口に入れるし、脱走しようとするしおむつ替えも一苦労だ。しかし、そんな彼女がなぜか可愛くて仕方ない。


あの無邪気な何の含みもない笑顔。前世では、女性の笑顔に恐怖を感じることしかなかった。しかし、雀の笑顔は純粋で、まっすぐで見ているこちらまで温かい気持ちになる。


……彼女が成長して「女性」になってしまったら、俺は迫害される可能性を感じ恐怖を覚えてしまうのだろうか?


今の俺は、雀のことを仔猫のように感じている。小さくて、活発で予測不能。そして愛らしい。彼女が転べば心配になる。彼女が笑えば、嬉しくなる。彼女が泣けば何とかしてあげたくなる。

わがままで手がかかる存在。そしてその事に多幸感を得ている。


あれ?これって母性?


いやいや、俺の意識はまだ男性ままだ。……男性のつもりだ。おっぱいにエロスではなく安らぎを感じているけど男性だよね?ね?

……この身体に、この肉体に引かれている部分があることは認めよう。


とりあえず話を戻すが、雀を見ていると守ってあげたい支えてあげたいという気持ちが湧いてくる。

母性。それは新しい生命を育むための、根源的な感情。俺は今それを体験しているのかもしれない。


まぁ、そんな難しいことを考えても仕方ない。今はただ、この小さな命と向き合うだけだ。


雀は今日も元気だった。そして明日もきっと元気だろう。俺はベビーベッドの中で小さく笑った。

今日はそろそろお迎えの時間だし、この後は平穏に過ごせるだろう。多分、おそらく、だと思いたい……。


「あー、あー(まぁ、どちらにしろ明日も来るんだろう)な」


そう呟いて、目を閉じる。


明日もきっと雀は、小さな台風のように俺の日常をかき乱すのだろう。なんだかんだで俺はそれを、どこかで楽しみにしているのだ。


「あー!」


突然、腹部への衝撃。俺の口から吹き上がる噴水。

殺気が近づいて来る気配。平穏ってなんだっけ?

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