54話 ゼルの演説
申し訳ございません!
失踪してしまっていました!
ずっと心残りで、ようやく戻ってくることができました!
今度こそ完結まで頑張ります!
ついにゼルの授与式がやってきた。この日、ゼルは世界で6人(今は4人)しかいないレッドスターの仲間入りとなる。
ゼルは今控え室にいた。この控え室には、ゼルの他にドルタが1人だけいた。授与式は、国民に囲まれたレッドカーペットの道をドルタの後ろに付いて歩き、歩いた先にある階段を上り、上で待っている王にレッドスターのバッチをつけてもらう、という風になっている。
そして、それがついに始まろうとしていた。
合図があったので、ゼルはドルタと共に控え室を出る。そして、100m以上はありそうなレッドカーペットのそのスタートラインに立っていた。その付近には、ライカやアドラなど、ゼルを支持してくれている人達がかたまっており、軽く目が合い、笑顔で手を少し振る。
そして、レッドカーペットの先に待つ王に一礼をすると、ドルタの後に続いてゼルも進んで行った。
少し先に進むと、ゼルを罵る言葉と共に、どこからか石が飛んでくる。その石はゼルの顔の真横を通り過ぎた。するとそれに触発されたのか、今度は別方向から罵声と共に石が飛んでくる。これはゼルの顔に当たり、ゼルの顔に少し傷が出来てしまった。それを見た人達は、次々と罵声と共に石や物を投げつける。本来、こういうことを防ぐための兵士が配置されているはずなのだが、その対象がゼルだからなのか、全くやる気を感じられず、動こうとしない。
どこかで子供が泣き出した。だが、その鳴き声にも全く怯まず、むしろかき消す勢いでゼルへの攻撃は激しかった。
ゼルの前を行くドルタが、本来はいけないことなのだが、ゼルが心配になり後ろを振り返る。するとそこには、傷が出来ようが服が汚れようが、気にせず前を向いて歩いているゼルの姿があった。ドルタはその時のゼルの目を見て、驚きそして感心した。そして、自分もしっかりしなければ、と前を向いた。ゼルのために步を早めるなどということはせずに、この式を完走することに全力を尽くそうと思った。
そして、とうとう階段に到着した。あとは上って、王にバッチをつけてもらえれば式は終わる。
ゼルは階段を上る。石や物が届かなくなるところまで登ったのだが、それでも無造作に投げ続ける人もいたし、その代わり罵声がより激しくなった。
そんななか、ゼルとドルタは階段を上りきり、王の前で一度礼をした。
そしてゼルは、王の前に身を屈め、バッチを授与される準備をする。王は授与する前に、ゼルへの罵声であまり聞こえないが、式のための決まり台詞を言い、ゼルの左胸に赤い星型のバッチを付ける。ゼルはもう一度礼をした。
その間はブーイングの嵐だ。それはいつの間にか横にいるドルタや王にまで飛び火していたりもした。
するとゼルは、どこからかマイクを取り出して民衆の方に振り向いた。
「1つ、皆さんに聞きたいことがある。」
ゼルはそう話し始めた。
ゼルが何を言おうとするのか聞こうと静かになる人もいたが、多くは無視して罵倒を続ける。
だが、ゼルは構わず話を続けた。
「今世界は危機的状況にある。領土は半分以上が魔獣に奪われ、さらに一番の脅威である魔王が未だ健在。その魔王の実力は、レッドスターが2人がかりでも討伐困難なほどの強さ。とても内戦しながら勝てる相手ではない。
なのに何故まだ争うのか、それが聞きたい。」
ゼルの持つマイクは、嵐のような罵声の中でも聞こえるほど大きいものだった。
自分達の正当性を主張しようと、すぐに回答が出てくる。
「そんなの紅の方が滅ぼすべき奴等だからに決まってるだろ!!!
魔獣なんかよりも穢れた紅の方がよっぽど憎い!
理由はそれだけだ!!」
初めにそう言ったのは白人の男性だった。そこら中の白人からも、そうだそうだなどの野次が飛ぶ。同じように紅人達も色を逆にして答える。
「人類を滅ぼすかもしれない魔獣を、より憎い者がいるからというだけで無視するのか、あまりよく分からないが、とりあえずは納得しました。」
最後の、納得したとの言葉を受けて、答えた人達や、野次を飛ばした人達は勝ち誇ったように微笑む。
「では、今横にいる紅人白人を滅ぼすよりも、私を罵倒することを優先しているのは、私の方が皆さんにとって憎いからということでしょうか?」
さっきよりも声は少しだけ減ったが、考え無しに言葉を発する者というのは大勢いる。
「そうだ! 貴様には俺達の神聖な白を直接穢された!!! 断じて許すことは出来ない!!」
さっきと同じようにすぐに回答され、さらに野次が飛んでくる。ゼルは次の言葉を言うのをしばらく待った。できるだけ多くの人に言質を取らせるためだ。
「では、貴方達にとって滅ぼすべきは横にいる紅人白人ではなく、この私ですね。」
何も言われなかったため、ゼルは続けた。
「明日より私は、ここリッキー平野の見回りの任務につきます。その間、私を殺しに来てください。
これは王にもドルタ軍務大臣にも了承を得ています。私を殺しても、当然罪には問われません。」
ゼルの話を聞こうと、民衆の声が多少収まった。
「私は常にリッキー平野にいます。何よりも私のことが憎いあなた方は、当然他の者には目もくれず、私を殺しにきてくれることでしょう。
もしも私を無視して他の者を傷つけた場合は、私はあなた方のことを、自分が言ったことすら守れない矛盾ばかりの馬鹿な猿として酷く見下します。」
ゼルは声を低くし軽く微笑む。民衆の多くは、今にも血管が吹き出しそうになっていた。
そんなことはお構いなしにゼルは続ける。
「まあでも、そんな人達も出てくることでしょう。
なんたってあなた達は私を殺すことは出来ない。なぜなら戦いの訓練など全く積んでいない、ただの雑魚なんだから。」
今までで一番の怒号が響いた。
ゼルが嘲笑しながら手で挑発してみると、さらにそれは激しくなった。
「上等だゴラァァアア!!!!!
明日必ずぶっ殺してやるから逃げんじゃねェぞ!!!!」
その言葉を満足気に聞くと、ゼルは表彰台から姿を消した。
「カッコいい…!」
誰にも聞こえるはずがないが、どこかで子供がそう呟いた。




