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ワールドヘイト  作者: 三ki
第2部
52/65

52話 解放

戦う意思を見せたゼルは、ちゃんと約束通りに解放された。檻の外には、アドラとシーグルが待っている。外に出たゼルはすぐに2人と握手を交わした。


「ありがとう、2人のおかげで大切なことを思い出せたよ。」


「ああ!」


牢屋があった建物から出た3人は、その建物の前で待っていた100人以上の人達に歓迎された。大きい歓声が上がる。

ゼルは、その歓声に圧倒されて呆然と見ているだけだった。


「フフッ ゼル、この人達がさっき言っていた、お前の味方だ。」


アドラはそんなゼルを見て笑った。それは、心の底からの優しさが籠った笑いだった。


「こんなにも…たくさんの人達が…!?」


「ああ、戦場でお前に助けられたって人が結構いてな。これはお前がした良いことが返ってきただけだよ。」


その時、群衆から1人の少女が飛び出してきた。そして、その少女を発見すると、ゼルも同様に走り出した。

その少女はライカだ。近い距離まで近づくと、ライカがゼルに飛びついた。ゼルはそれを優しく抱き抱える。


「ゼル!! ごめんね。

ゼルが苦しい時に、一緒にいてあげられなくて。」


「いいよ。それより、俺の方こそごめん。

君を置いて先に死のうとしていたんだ。」


2人はお互いを力強く抱きしめた。

すると、ライカの後ろからアルニ村の人達がやってきてくれた。孤児院のみんなはもちろん、他の村人達もだ。そしてみんな口々に心配の声をかけてくれる。

アドラと同じく、秘密を話さなかったことを怒っている人も何人かいたが。

するとそこに、意外な人物が現れた。


「ゼル!?」

「ゼル! 出てこれたんだ!」


それはハニカとクラーラだった。

アドラの話では、2人ともゼルを憎む両親によって閉じ込められていたはずだ。


「ハニカ! クラーラ!

お前ら家に閉じ込められてたんじゃ?」


「うん! そうだよ!」


「え? じゃあなんで?」


「家出してきちゃった!」

「私も!」


ハニカが元気よくそう言った。そしてクラーラも。

ゼルはそれが、何がとは言わないが可笑しかった。

ゼルは久しぶりに、心から笑えた気がした。

それにつられてみんなも笑う。

今この場にゼルを憎む者は1人もいない。

ゼルは、生きてきた中で今が一番幸せなんじゃないかと思った。




一方、ゼルの解放を面白く思わない人は大勢いた。

その中には、国の超上層部の内務大臣と財務大臣もそれに含まれていた。

そして2人は、いかにしてゼルをまた牢屋に戻すか、そして死刑にさせることが出来るかを考えていた。

だが、一度会議で決まった内容を後から覆すのは難しい。ならばその決まった内容の中でゼルを殺すしかない。つまり、再び戦意を喪失させるしかない…という結論に至った。


「しかしどうやって…?

今奴は仲間達と合流を果たして、血気盛んな様子だぞ。」


財務大臣が難しい顔をする。

だが、内務大臣バイルの方は何やら策があるようで、不敵な笑みを浮かべている。


「ふっふっふ、それなら大丈夫だ。

俺に名案がある。」


そう言ったバイルは、まずはドルタに連絡をとった。

ドルタは非常に忙しいのだが、内務大臣であるバイルに呼び出されてしまっては余程の理由がない限り会わないわけにはいかない。


「ドルタよ、どうやら混血の少年を解放したそうだな。」


いきなり呼び出して何の話だと思ったドルタだったが、深くは考えずに話を続けることにした。


「ええ、彼は戦意を取り戻してくれましたので。

きっと大きな戦力となるでしょう。」


「そう、その話だ!」


「? どういうことですか?」


指をピンと立てるバイルに、ドルタは何が何やら分からない様子だ。


「その混血の少年は”創造”の魔術だけでトリプルスタークラスの実力があったのだろう?

ならば”破壊”の魔術を合わせればどのくらいの強さになるんだ?」


「…さあ、私もそれは計りかねますが…少なくともトリプルスター上位以上の実力はあるでしょうね。もしかしたらレッドスターにまで並ぶかもしれない。」


「ならばだ。ならば彼をレッドスターに昇格させないか? 史上初のことだ。

国民に示すためにも公の場で堂々としよう。」


「それは…私は構いませんが、あなたがそんなことを言うとは…

あなたは紅人を酷く嫌っていた印象でしたが。」


「ああ、今も嫌いだよ。

だが魔王の脅威を認識し直してな。私情を優先させるべきではないと思ったのだよ。」


「それは…確かにその通りですね。

では本人に直接言ってみます。」


「ああ、王や他の大臣への連絡は不要だよ。

それは私がやっておくから。」


ドルタは返事をすると、すぐにゼルに言いに行った。

その後ろで、バイルはニヤリと笑っていた。

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