49話 ゼルの処遇
1人が石を投げ出すと、皆次々に投げ出した。
ゼルは、アイルの方に背を向けて民衆の方に向き、呆然と立ち尽くす。そのアイルもどうしていいか分からなくなり、ただ立ち尽くす。
ゼルは石を避けることはせず、現実を受け止めるようにその体で受け止めた。紅人も白人も変わらずにゼルに石を投げる。この瞬間、ゼルは世界から嫌われた少年となった。
化け物、気持ち悪い、死ねなどの言葉とともに投げられる石は止むことを知らない。誰も止める人がいないように思われたが、アイルがハッとしたように動き出した。魔王にとってゼルは脅威、そう判断したアイルは、”破壊”の魔術を右手に纏いゼルに近づく。
しかしその時、アイルの首が落ちた。続いてコアを剣で貫かれる。それはドルタによるものだった。ソニアとザキが到着したら、魔王はすぐに撤退したのだ。だからドルタはこちら側に来れたわけだ。
民衆達の声は、罵声から歓声に変わる。ただその内容は、歓声とは似つかないが…
「ドルタさーん!!」
「ドルタさん! そいつを殺して!!」
「そいつを早く殺せ!!」
「死刑!! 死刑!!」
ゼルは恐る恐るドルタを見る。すると、ドルタもゼルを軽蔑しているように見えた。しかし、当のドルタは、全くそんなことは思っておらず、頭の中は驚きと疑問でいっぱいだった。
ドルタは、一旦ゼルに布を被せて連行した。ゼルは抵抗することなくそれを受け入れた。
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「そんな奴は即刻処刑するべきだ!!」
また例にもよって会議を行う。突如正体が発覚した紅と白の混血の少年、ゼル。その存在に世界中が混乱し、また憎悪している。それを抑えるためにも、ゼルの処刑は合理的だと主張している。
「そもそも我が国の法律では、紅人は侵入し次第即刻処刑との決まりであっただろう。それは混血も同じだ。
今回は文句はないだろうな? ドルタよ?」
ドルタは重い顔をしながら顔を上げた。
「………全面的に否定は出来ませんが、私は反対です。懸念点としましては、ここでゼルを処刑すると、それは紅人との絶対的な決別を意味します。そうなれば魔王には勝てないでしょう。それと、ゼルは兵士として非常に優秀であることです。”創造”の魔術だけでトリプルスタークラスの実力がある。それに加えて”破壊”の魔術も使えるとなると、その実力は、トリプルスターを凌駕するものでありましょう。この戦力を失うのは非常に痛い。」
「なっ!!お前はまだそんなことを!!
確かに魔王も脅威だが、このままでは内輪揉めで国が滅ぶぞ!」
「現在我々は3つの問題に面している。1つ目は混血の少年、ゼルの処遇。2つ目は魔王の存在。そして3つ目は紅との決裂。
ゼルを生かしておけば、3つの問題は残ったままだが、処刑すれば、1つ目の問題は解決され、3つ目の問題も考える必要がなくなる。こっちの方が合理的だと思わんかね?」
「ですから何度も言うように、皆さんは魔王を甘く見過ぎている。紅人と同時に相手にするほどの余裕はない!」
皆口々に意見を言い合う。秩序意地を推進するゼル処刑派と魔王対策を推進するドルタ派。今回は、ゼルという異例中の異例の存在も相まって、なかなかに議論が白熱していた。
そこで、その全てを黙って聞いていた王が立ちあがり、皆の注目を集めてからようやくその重い口を開いた。
「どちらの主張も分かる。確かにゼルの処刑は秩序維持には不可欠であるが、我々が魔王を甘く見ていたことも事実。
だが私は、ゼルは傷心していると聞いている。よって、ゼルに戦う意思があるのなら生かし、兵士として活躍してもらうことを提案する。
皆はこれで良いか。」
王の提案に、皆が黙って頷いた。ゼル処刑派も、ゼルの心の状態を見て、安心しているようだった。
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「———と、いう風に君の処遇が決まった。
君はまだ戦えるかね?」
ドルタは1人で、ゼルのいる牢屋に来ていた。ゼルは、魔王が撤退した後、リッキー平野に造設された牢屋に入れられていた。
中にいるゼルは、少しやつれ、目の下には隈が出来ていた。
「………ドルタさん。
僕はもう…戦えそうにありません…」




