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ワールドヘイト  作者: 三ki
第1部
48/65

48話 発覚

結局、ゼルはシーグルと別れてしまった。なんと言っても人手が足りないからだ。ゼルやシーグル程の強者が、一箇所に纏っているのは非常に効率が悪い。

ゼルは出来るだけ中央に向かう。その方がより多くの人達を守れると思ったからだ。


多くの兵士が魔獣を狩っていることで、着実にその数は減ってきていたが、まだまだ先は遠そうだった。

ゼルは中央に向かい、兵士達の駆除漏れを消していく。だが、中には駆除漏れではなく、駆除不可なやつもいた。

ゼルは、面影を残しつつも以前の姿とは全くの別人となっていた人物に出会う。


「! アイル・カリーレッド…!」


ゼルは驚きで思わずそう口にした。アイル・カリーレッド、それは紅人の、ある兵士の名前だ。白人に扮していたゼルでも知っているほど有名で、トリプルスター最強の兵士、最もレッドスターに近い男と呼ばれていた男。まさかこいつまで魔人にされていたなんて…


「俺を知っているのか。なら話は早い。

投降しろ! お前ら人類に勝ち目はない!

さすれば一瞬で楽にしてやるぞ。」


魔人にされておきながら、その口調はかなり理性的だ。だがその内容は、完全に魔王サイドに傾いている。ゼルの背後には、アイルに怯える老若男女の紅人と白人達が沢山いる。ここで止めるしかない。

だが、人間だった頃のアイルでも相当な強さだったのに、魔人になった今、ゼルに止めることは出来るのだろうか。

ゼルは、剣ではなく盾を創造した。

持久戦に持ち込み、援軍を待つためだ。具体的にはレッドスターのうちの誰かを。

アイルが足に力を入れるのが見えたので、とうとう来るのだろうと思い、ゼルは盾の後ろに隠れ、すぐに押し返せるように準備しておく。

すると予想通り、アイルは突撃して来たのだが、そのスピードは予想のはるか上だった。

ゼルは少しギョッとしてしまったため、反撃の機会を失ってしまう。”破壊”の魔術によって盾は粉々に壊され、それを持っていたゼルの手も、”破壊”の連鎖によって皮膚が剥がれるなどのダメージを受けた。

さらにアイルは追撃を加えようとしてきたが、ゼルは後方に大きく飛びそれを回避する。


「…ほう、お前なかなかやるな。大抵の奴なら今ので瞬殺なんだが。」


「…人の皮膚剥がしといて言わないでくれる?

普通にかなり痛いんだけど…」


「フッ、賞賛は素直に受け取るものだぞ。

俺が誰かを褒めることはとても珍しいことだ。」


「敵に褒められるのって好きじゃないんだよ。

だって大抵の場合、敵の方が有利な状況なんだから。」


ゼルがそう言うと、アイルは大きく笑い出した。


「フッ、フハハハハ なるほどな。確かにお前の言う通りかもな。ガキのくせに視野が広い。やはりお前は強いな。

だが確かにお前の言う通り、戦局は今俺の方に分がある。さて、どうする?」


「どうするって…精一杯頑張るしかないだろ。」


ゼルは、後ろで声援を送ってくれている白人達と、声援など全く送らず、ただアイルに怯えている紅人達を見ながら言う。

逃げるわけにはいかない、そうアイルに伝えたつもりだ。


「違うな。視野が広いお前がそんな浅はかな考えでいるはずがない。さっきの動き…お前は持久戦を狙っていた。おそらくは援軍を待っているのか?」


「…それを聞いてどうする?」


アイルは不敵な笑みを浮かべた。


「別に。ただ俺は、相手の狙いを見破ってから、それを粉々に看破するのが一番好きなんだ。言葉にはできない征服欲を満たされる。魔人になってそれが顕著に現れるようになった。勝敗なんかよりもはるかに重要な、俺の戦い方だ。

つまり、俺が何を言いたいのかというと…ここからは、一瞬でケリつけてやるよ。」


アイルは地面をけり、先程よりも早いスピードでゼルに向かってきた。しかし、同じようなことは少し前に経験したゼルだったので、今度は盾で反撃しようとしていた。

“破壊”の魔術を纏ったアイルの右手が、ゼルの盾と触れ合う。すると、盾は崩れ…ることはなく、アイルが触った箇所に丁度手が入りそうなぐらいの穴が空いた。するとアイルは、その穴に手を突っ込み、奥にいるゼルの首を掴む。

ゼルはその腕をなんとか引き離そうとするが、力が強く、アイルの腕はビクともしない。

アイルは、まだ”破壊”の魔術を使わず、ゼルを首を掴んだまま宙に浮かす。


「”破壊”の魔術は練度が上がれば部分破壊が可能だ。ま、ただ破壊を中断しているだけなんだがな。」


ゼルは、浮いた足でアイルのことを蹴ったりしてみるが、体勢の悪いゼルの蹴りでは、やはりビクともしなかった。もう正攻法では抜け出せない。

そう感じたゼルは、”破壊”の魔術を使うかどうかを考えていた。

しかし、使うとまず間違いなくアイルにはバレるし、後ろにいる民衆にも、気付く者がいるかもしれない。

ゼルは決断出来ずにいた。

しかし、いよいよその時はやってきた。

アイルは腕に力を入れる。”破壊”の魔術を使う合図だ。


ゼルは無意識に”破壊”の魔術を使った。


すると、アイルとゼルは反発し合い、ゼルはアイルの腕から逃れることに成功した。


「なん…なんだお前は…

今のは…”破壊”の魔術……?


!! お前…その姿…」


ゼルは右目を触った。その理由は、さっきの魔術の衝突の時に違和感を覚えたからだ。


アイルは、驚きのせいでゼルに何もできないでいる。ゼルはそんなアイルを警戒していた。

その時、ゼルは後ろから石を投げられた。


「なんだお前!!

化け物!!!!!」


ゼルはようやくさっき感じた違和感の正体が分かった。

ゼルの”破壊”の魔術とアイルの”破壊”の魔術では練度に差があった。”破壊”の魔術の衝突では、2つは反発し合うが、より練度が高い方がもう一方を飲み込む。

ゼルの”破壊”の魔術では、アイルの”破壊”の魔術を相殺しきれず、ゼルの頭部はダメージを受けた。

そしてその時、ゼルが”創造”の魔術で創っていた髪の染料と右目のカラーコンタクトが破壊された。


つまりゼルは…その本当の姿を大衆の前に晒した。

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