47話 2体2
魔獣達は地中から侵入したということもあって、少数となっている。だが、それでも簡単に進軍を止めることは出来ない。魔獣は倒しても倒してもキリがないほどいる。それに加えて、魔獣よりもかなり少数だが、魔獣よりも強い魔人も厄介だ。特に、トリプルスタークラスの兵士の魔人は、それこそレッドスタークラスじゃないと倒すことは難しい。そしてそのレッドスターは今全員不在だ。それは、最も厄介な敵、魔王ノアと相対しているから…
ゼルは、魔獣達を次々と蹂躙していく。最大級の熊の魔獣や虎の魔獣ともなれば、流石に瞬殺は無理だが、そこらの有象無象の魔獣ならば走りながらでも可能だ。それに加えて、ゼルは白人を保護したり、紅人も隠れて助けたりしている。
白人の中でゼルを知る者は多く、助けるたびにお礼の言葉とともに、ゼルだ! などと芸能人のようなことを言われる。ゼルはそれが、自分が認められているような気がしてなんとなく嬉しく感じた。
今は1人でも多く戦力が欲しい状況だ。だからゼルはメルタ達と別れて魔獣を倒している。そんなゼルの元に、2人の魔人が現れた。1人は白人で、もう片方は紅人の魔人だ。白人の方は、ゼルは見たことがある。たしかダブルスターだったはずだ。紅人の方からも、それと同等のオーラを感じる。おそらくはダブルスターだろう。ゼルの周りには、ダブルスタークラスの魔人に対抗出来そうな兵士は1人もいない。かと言って誰もいない訳ではないので、ゼルは”破壊”の魔術を使うことが出来ない。つまり、”創造”の魔術のみで2人のダブルスターの魔人を相手にしないといけないというわけだ。
「クッッ!」
ゼルは少し鈍い表情をしながら、一心流の構えを見せた。ゼルの狙いとしては、ダメージ覚悟でまずは片方を倒そう、という狙いだ。しかしそう簡単にはいかなかった。ダブルスタークラスとなれば、白人どころか紅人の魔人も一心流を知っているので、狙いはバレバレだった。白人の魔人が盾を創造する。そしてゆっくりとゼルの方へと近づいてくる。
ダブルスタークラスが創造した盾ともなれば、ゼルレベルの一心流では盾ごとその身を切ることなどできない。精々盾を壊せるぐらいだ。
ずっと構えていても仕方がないので、ゼルは近づいてくる白人の魔人に一心流をお見舞いする。すると予想通り盾が壊れただけだったが、その魔人は後方に大きく吹き飛んだ。これで一旦は白人の魔人の方を警戒しなくてよくなった。ただ問題なのは、ゼルが攻撃した後隙を狙って今近づいて来ている紅人の魔人だ。右手に”破壊”の魔術を纏って、その右手をゼルへ向けて近づけてくる。魔人が触れるだろう箇所に、ゼルも”破壊”の魔術を纏えばおそらく完封出来るだろうが、今それはできない。ゼルにできるのは、精々鎧を創造して身を守るだけだった。ただこれでは致命傷は避けられるだろうが、ダメージは避けられない。ゼルは小さく目を瞑った。
だがその時、ゼルの元に急に近づいてくる1人の気配を感じた。その者はゼルにもう少しで当たろうとしていた魔人の右手を掴み、そして大きな反発をうみ、魔人は後方へ大きく吹き飛んだ。
ゼルは驚いてその者を見る。するとそれはゼルのよく知る人物だった。それは、先のアルステーデ侵攻の時に、ゼルとともに強大な魔人と戦った紅人の少年、シーグルだった。
「! シーグル!!」
シーグルは目をゼルの方に合わさずに答える。
「…腐っても俺と共闘したやつが、こんな奴らに手こずってるんじゃねぇ!
こんな奴らすぐに片付けて、早くみんなを助けに行くぞ!」
「ああ!!」
シーグルはそう言うと、手を差し出してきた。ゼルは一瞬驚いたが、それにすぐに答える。2人は手を取り合った。
一方、吹き飛んだ紅人の魔人は、ゆっくりと起き上がり、歩いてくる。流石というべきか、シーグルの右手は無傷だが、魔人の右手は少し崩れている。
「ゴミが!
貴様等がいくら手を組んだところで———」
「———ゼル、また”あれ”やってくれ。」
シーグルは魔人のことなど全て無視してゼルの方へ振り返った。ゼルに”あれ”をやってくれとのことだ。ゼルには、その正体がすぐに分かった。「ああ」っと返事をすると、すぐにその制作に取り掛かる。ゼルはサングラスを創ると、それをシーグルに投げ、シーグルはすぐに付けた。そして自分の分も創った。最後に、とびきりの閃光弾を創り使った。
相手の白人の魔人も、こちらの狙いに気付いたようだったが、もう遅かった。ゼルの創った閃光弾は、瞬時に魔人2人の視界を奪う。そしてその隙にシーグルが接近し、2人のコアを破壊した。2人はその場に倒れ、みるみると体が崩れていった。
ゼルとシーグルは、今度はハイタッチをした。




