45話 魔王再来
ゼルはライカと別れるとすぐにオームシティに戻ってきた。
そこでは、多くの兵士が魔獣達と戦っていたので、すぐにその援護に入る。侵攻開始から時間が経ち、戦力も大分整って来ていたので、魔獣達を喰い止めることが出来ていた。
その大きな要因は、やはりあの2人。マルクとドルタがオームシティに辿り着いていた。もう時期に魔獣は全て殲滅されるだろう。
「ゼル…戻って来ていたのか。」
そうゼルに話しかけて来たのは、ドルタの息子のメルタだ。ドルタの付き添いとして戦場に来ていた。
「ああ、こっちは大丈夫。俺はもう精一杯戦える。
それで、こっちの状況は?」
「俺も今来たところだから詳しいことは何も言えんが、親父とマルクが来たことで形勢は逆転した。
向こうのヨドシティにはソニアさんとザキさんが行ったからあっちも似たような感じだろう。」
「レッドスターが2:2で別れているのか。」
「そう。魔王の強さはレッドスターをも上回る。だから常に2人で行動するようにしているんだと。
あーそれと、不気味なことが1つ。」
「ん?」
「魔王がまだ、どこにも姿を表していない。」
「…なるほど。」
前回のアルステーデ侵攻の時は、魔王は鳥の魔獣に乗って急襲してきた。急襲する前は、ずっと上から様子を伺っていたのだろう。今回もそんな感じなのだろうか? それでレッドスターが2人組で行動しているのを見て何も出来ずにいる。
「一応、鳥の魔獣には最大限警戒しているが、今のところノーヒット。」
どうやらゼルの考えていたやつでもなさそうだ。
もしかしたら魔王は来ていないのだろうか。しかしそれは希望的観測というものだ。
「まあ、とりあえず魔王がいないなら、今は目の前の魔獣共を駆逐するだけだな。」
「ああ、そうだな。」
ゼルとメルタも情報交換を終えると、すぐに魔獣狩りに赴いた。ドルタやマルク、メルタにゼルらの活躍によって、地面一帯が青紫色に見えるほど大量にいた魔獣や魔人は、あと数分あれば全て殲滅できるくらいには数が減っていた。
その時、突如ドルタの元にある連絡が来た。
「何だとっ!?」
それを聞いたドルタはトランシーバーを握り締めながらそう叫んだ。その声に周囲の者が皆振り返る。
「ドルタさん、どうされたんですか?」
近くにいた部下が駆け寄り、何があったのかを聞く。ドルタは、深く考えながらも、それに答えた。
「…魔王が、リッキー平野に現れた。」
「……えっ?」
リッキー平野とは、カルティアとアルステーデの国境にまたがる大きな平野だ。第一回世界会議で紅白両国の共有の避難地とした場所で、今は先のアルステーデ侵攻と今のカルティア侵攻により、大量の紅人と白人がいるはずだ。
「そんな馬鹿な! 空は常に警戒していたのに!
一体どうやって!?」
「…地下からだ。 クソッ!
完全に失念していた。」
ドルタは拳を強く握りしめて、怒りと悔しさを露わにするが、すぐに自分を諫め、全体に指示を出す。
「今すぐリッキー平野へと向かう!
A〜K班以外はここに残って魔獣退治を継続!
行動開始!!」
遠くにいた者達にも十分聞こえるように、大きな声でそう指示を出した。
「お前はこれをソニア達にも伝えてくれ。
では俺はもう行くぞ。」
ドルタは、近くにいた部下にそう告げる。部下が返事した頃には、すでにドルタは走り出していた。
それに続いて、ゼルやメルタもリッキー平野へと走り出した。
幸いにもゼル達がいるところからリッキー平野までは、30分〜1時間で着ける距離にあるが、はたして…
〜数分前 リッキー平野〜
リッキー平野では、大陸を紅白両国が東西に分断しているように、東半分を紅人が、西半分を白人がそれぞれ暮らしていた。
その集落の少し離れたところの地面から3体のモグラの魔獣が顔を出した。そして魔王が現れ、続いて魔人や魔獣達が現れる。
「警備は手薄だ。今のうちに人間共を包囲しろ!」
魔王は声に出すと同時に電気信号で全体に指示を送った。すると一斉に、集落を包囲しようと動き出した。
その異変に気付いた兵士が何事かと近づいてくる。しかし、その兵士が気づいた頃には、当然魔王も気付いており、その兵士は体を串刺しにされた。そしてすぐにコアを付加され、魔人へと生まれ変わる。
地下からの襲撃により、魔王の軍勢はかなりの小規模となっていた。その不足分を、現地調達しようと思ったのだ。とは言っても、その少数でも十分すぎるほど警備は手薄だった。
ドルタ達は間に合うのだろうか。




