42話 危機
「ですから何度も言う通り、今ここでアルステーデを攻めるわけにはいきません。間違いなく魔王にそこをつかれる。」
先の魔王によるアルステーデ侵攻で、レッドスター第3席ニールの死亡、第1席マルクの重症を受けて、また会議でアルステーデに攻め入ることが提案された。最近の世論も特にそれを後押ししている。もちろんドルタはそれを拒否する。
会議が終わり、ドルタは愚痴を言うためにも作戦会議を行うためにも、モンスのところへ来ていた。
「ドルタさん! もう会議は終わったのですか?」
「ああ、終わったよ。何回同じ話をしたのか分からない会議がな。」
ドルタはぐったりと疲れた様子だ。
「そんなにあの方達は頑固なのですか?」
「ああそれはもう…なんとか全体で反対に持っていけたのは良かったがな。
ま、愚痴はこの辺にしておこうか。今は魔王の対策をするのが大事だ。」
ドルタは疲れながらも、自分の表情を仕事の表情に戻す。魔王のための対策会議のメンバーが続々と集まってくる。その中にはゼルの姿もあった。というのも、これは魔王及び魔人に対抗するための会議なので、ダブルスター以上で、今警備などの任務に当たっていない者は基本的に収集を受けている。
「まずは魔王の能力から。これは予想通り魔獣細胞を創造できるというものでした。しかしその練度は想像以上。損傷箇所の再生速度は魔獣の比ではありません。そのため弱点以外への攻撃はほぼ無駄と言ってもいいでしょう。
そしてその弱点というのは、魔王が執拗に守っていたことから見ても脳に間違い無いでしょう。」
早速、前に立ったモンスが説明を始めた。
説明を聞いてい者達は、皆深刻な面持ちでモンスを見ていた。それもそのはず、この情報は主にマルク&ドルタVSノアの戦いを元に作られている。それはつまり、かの2人を相手にして逃げることが出来たということ。さらにノアは実質ノーダメージなのに対して、マルクは右腕を失っている。
「さらに魔王は、自分の体を爆散させたり、目に見えないほどの糸に変えたり、液体に変えたりと多彩な技を使ってきます。
あとは、魔王が本気で頑丈に魔獣細胞を創れば、マルクの魔術でようやく崩せるレベルの硬度を持ちます。まあそれの生成、修復には約5秒程かかるようですが…強いて言えばこれも弱点と言えるでしょう。瞬時に創られる魔獣細胞は柔らかい。」
そうは言ったものの、そんなに頑丈な肉体を創れる時点で弱点とは言えないだろう。
その時、誰かが急いでこの部屋に入ってこようとしているのをゼルは感じた。そしてこの部屋にはそれを感じれる人が多くいる。皆一斉に入り口を見る。
そしてその者は入ってきた。どうやらただの兵士の人で、部屋の中の視線に少しギョッとしたようだ。しかしすぐに切り替え報告を行う。
「サクスシティで魔獣の大群が確認されました!
先のアルステーデ侵攻と同規模の大群です!」
それを聞いた瞬間に室内は一気に騒がしくなった。それもそのはず、アルステーデ侵攻が終わってからまだ2日も経ってない。まだ皆の中には魔獣の恐ろしさが鮮明に残っているし、先の侵攻で紅白両軍疲弊している。
さらに、マルクとドルタを同時に相手して生還した魔王ノアがいる。そして今回、アルステーデの援軍はあまり期待できない。
「今ある全軍をサクスシティに向かわせろ!
それと民間人はリッキー平野へ誘導しろ!」
すぐにドルタは長として全員に指揮を飛ばす。
一方ゼルはそれどころではなかった。今攻められているサクスシティに隣接するノナシティ、その近くには新しくなったアルニ村がある。ライカが…みんなが…今危険に晒されている。ゼルはいてもたってもいられなくなった。
「ドルタさん! 僕だけ先にノナシティに向かってもいいですか?」
「ん、君はゼルだったか? どうしてだ?」
「ノナシティの近くにあるアルニ村は、僕の故郷です。」
ドルタはすぐに察した。そしてすぐにゼルに許可を出す。それを聞いてゼルは会議室を飛び出して、ノナシティの方へ一直線に進んでいった。ドルタは、ゼルを少し哀れむように見送るが、すぐに自分のことに集中した。というのも、ここ首都ブランロードからノナシティまでは、ゼルが本気で走ったとしても4時間以上はかかるだろう。そしてノナシティの近くには、今レッドスターはいない。ゼルが着く頃にはおそらくもう…
〜新アルニ村〜
「ライカー! あっちの方がなんか騒がしいよ!
何だろう?」
ファルがライカに聞く。
そう言ってファルが指差した方向は、サクスシティがある方向だ。確かに何やらドカドカと音がする。
「さぁ、何かしら? なんか怖いわね。」




