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ワールドヘイト  作者: 三ki
第1部
35/64

35話 侵攻開始

ノアはアルステーデの地にいた。

ノアがいるところは、都心部からはまだ離れているが、いつ魔獣が攻めてきても対応出来るように、兵士が常に警戒している。

が、その兵士達は全員、ノアの側に転がっていた。




アルステーデ都心部のレヴォシティにいる、ラモンという兵士が、双眼鏡を使って周囲を警戒していた。と言ってもこの仕事は何回もやっているが、全くなんの成果もない。やる気もあまり感じられなくなっていた時、双眼鏡で、視界の端に黒い影を見つけた。

今度はそっちに目を向けてみると、黒い影が1列になって近づいて来ているように見えた。気のせいかと思いもう一度見直してみる。そしてもう一度…

しかしそれは見間違いなどではなく、明らかに近づいてきていた。


「……魔獣だ…」


「えっ?」


近くにいた同僚が聞き返すのも無理はないほどにボソっと言われたものだった。


「っ魔獣の大群が来る!!

今すぐ上へ連絡を! 民間人を避難させろ!」


「あっああ。」


ラモンは聞き返してきた同僚だけでなく、この場にいる全員にも聞こえるように大声でそう言った。

すると皆動揺しながらも、すぐに行動を開始する。

ラモンは腰にかけていた剣を手にとった。


「クソッ、警戒班は一体何をやってるんだ。

応援が来るまでまだ時間がかかる…

俺達だけで…止めるしかないのか…!!」


ラモン達は称号を持っていない。

普通の魔獣でさえ、倒すことは簡単にはいかないのに、大型の肉食の魔獣も大量にいる魔獣の大群なんて到底止めれるわけない。


「ラモン! 無理だ!

俺達も逃げよう!

立ち向かったりして1秒稼げるかも怪しい。」


ラモンはそう言う同僚の方を一度見る。

そしてまた正面に向き直って、上を向いた。


「たしかにな…お前の言うとおりだ。

俺だって勝てると思ってるわけではない。

だが、ここは都心部と言ってもかなり端の方。応援はおそらくまだまだ来ない。


どうせ逃げられない…

なら最期は美しく散りたいと思ってな。」


「…ふ…ふふ 確かにお前の言う通りなのかもな。

俺もお前と共に殉じよう。

もしかしたら良い奴に生まれ変われるかもしれないしな。」


2人は手を取り、抱きしめ合った。

そして魔獣が近くに迫ってくると、2人とも剣を構え、大声を出して飛び出していった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アルステーデのレヴォシティに魔獣が現れた。

その情報はすぐに国中に知れ渡った。

民間人は避難地となっているリッキー平野へと血相を変えて逃げて行く。

また軍部は、すぐに援軍をレヴォシティへと送った。レッドスターは、元々少し近くにいた第三席のニールが、少し遅れて第一席のマルクが向かう。


最初に援軍が到着した時には、レヴォシティはほぼ全壊。隣接するハラシティ、ザンバシティ、コルポシティも壊滅的な被害を受けていた。辺りには民間人や兵士の死体がゴロゴロ転がっている。


「手当たり次第魔獣共を殺し尽くせ!!

生存者がいたらすぐに保護し、安全な所へ連れて行くように!!」


トリプルスターのオスカは部下に命令すると、すぐに臨戦体制をとり、近くにいる魔獣を肉食草食大型小型構わずにただひたすらに倒していく。

トリプルスターのオスカにとって、倒すのに苦労する魔獣などいなかった。だが、魔獣の陰から現れた何者かの攻撃を喰らってしまう。その時の痛みは、”破壊”の魔術を喰らった時のようだった。

なんだ、と思って攻撃を受けた脇腹に手を当てながら見ると、それは紅人の魔人だった。しかもただの魔人ではなかった。


「お前………ジンデルか?」


ジンデル、それはオスカの旧友。トリプルスターの称号を持っており、マゾン大森林の調査に行った際に行方不明となっていた。

魔人の話は聞いているので、ジンデルが魔人化したことは頭では理解できる。だが心が理解出来ない。


「あ? お前は確か…オス…なんだっけ?」


「オスカだ! 本当にお前なのか!? ジンデル!」


「そうだが?」


止まっているオスカの元に、部下達が駆け寄ってくる。


「オスカさん、どうされたんですか?

…これは一体?」


「…………さあな、俺にも理解できん…」


ジンデルを見つめたままそう答える。その声は震えていた。


「ジンデル!! もし本当にお前ならもう抵抗せず捕まれ!!

俺がなんとかお前を殺さないように上にかけあってみるから、だから!」


オスカがそう叫ぶ。

だがジンデルには、何も響かなかったようだ。


「ハハ、悪いがお前らを殺すこと以外の命令は与えられてないんでね。

今も早く殺すように言われてるんだ。悪いがさっさと殺し合おうか。」


ジンデルは身をかがめて臨戦体勢に入った。


「命令…? 命令ってどういうこと何でしょうか?

オスカさん?」


「………さあな。」


魔王については、まだ国家機密。だが、オスカはトリプルスターであるので、魔王の存在について知っていて、さらにその魔王が魔獣や魔人に命令出来ることを知っていた。

だから、ジンデルの「命令」という言葉には大して疑問を抱かなかった。それよりも…

(「今も」……一体どう言うことだ?

まさか魔王が…どこかで見ているのか?)




オスカとジンデルの、上空を飛ぶ鳥の魔獣。

その上に乗り下を見下ろす、魔王ノアの姿があった。

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