33話 魔王の正体
「カイン先生、あなたは、魔王を創ったのではありませんか?」
さっき以上に皆が動揺した。場を考えずに隣の人と話をし出したり、モンスに意見する者もいた。だが、当のカイン本人は全く表情はぶれす、堂々としていた。
「モンスさん、それは流石に…」
「魔術で生物を創るなんて人間に成せる技ではないし、そもそもカインさんがそんなことをするはずがない。」
口々にそんな言われるが、モンスは特に反応せず、事務的に対処する。
「静粛に願います。
それでカイン先生、どうなんですか?」
「ふっ、急に何を言い出すかと思えば…
一体何故私なのだ?」
「元々怪しいとは思っていました。魔王を創れるとなると、それは相当魔術に秀でた人物。しかもそれは戦闘面にではなく科学面に秀でていなければならない。」
「それだけでは根拠が薄いだろう? そもそも魔王が創られたというのも全てお前の憶測だ。
お前が私だと確信する根拠はなんだ?」
皆はすっかり静かになって、2人の会話を一言一句聞き漏らさぬようにしていた。
だが、次のモンスの発言でその沈黙が再び破られる。
「魔王の名前はノア。私はこの名前にどこか聞き覚えがあるのですが、最近ようやく思い出しました。
カイン先生、約30年前に行方不明となった、あなたの息子さんの名前と同じですよね?」
カインはただ黙ってモンスを見ていた。
「生きた人の細胞を魔獣細胞へと変える。そのメカニズムさえ創れてしまえば、魔人を創ることができる。無から生物を生み出すのではなく、有から魔に変える。これなら人間にも可能です。
さぁ、どうですかカイン先生?」
カインは目を瞑り、そして答えた。
「ふっ、正解だモンスよ。よくぞ見破った。」
またまた皆に動揺が走った。それは突き止めたはずのモンスまでも同様だった。唯一冷静でいるのは、何故かカインただ一人だけだ。
「な、なぜ? あなたは何故そんなことを?」
「私は紅人の研究をしていた。だが、歪み合っている今のままでは、研究したくても出来ないことが沢山ある。例えば白人は魔術を司る部分が脳の右脳にあるのに対して、紅人は左脳にある。紅人と白人の血を継いだ混血の子供はどうなるか見たいとは思わんかね? 右脳と左脳、どちらにも魔術を司る部分があるから、非常に魔術に秀でた子供になるのか、もしくは両方が打ち消しあって魔術に劣った子供になるのか。
しかしそれを確かめることは出来ない。
紅人と白人が歪み合っているからだ。
だから私は、人類の共通の敵として魔王を創った。
そうすれば、紅人と白人は親睦を深めるかもしれない、そう思った。が、そんなことはなかった。
貴様等は愚かにも戦争を続けた。だからもう人類がどうでも良くなり、魔王を放置した。そして今や、精神的に幼かった魔王も経験を積み成長して私でさえ制御出来なくなっている。」
「そんなことのために…そんなことのために魔王を創ったんですか!? あなたは!?
魔獣が一体どれだけの人の命を奪ったと…!?」
「さっきも言ったが貴様等が悪い。私は紅人と協力して魔獣を倒そうという声明を出した。だが誰も聞き入れず、私を追放までした。危機管理能力が全くなってない、愚かだと思わんかね?」
ここでドルタが机をドンッと叩いて立ち上がった。
皆の注目を集め、沈黙が訪れる。
「とりあえず、ここでの話は終わりだ。
今すぐカインを連行する。」
「ですがドルタさん———」
「言いたいことは分かるが、それは連行してからだ。
それと皆にもう一度言っておくが、ここでの話は決して他言しないように。」
ドルタがカインに近づく。
「それと最後に俺から一つ言っておく。
確かに我々は間違っていた。だが、だからお前が正しいというわけではない。誰が何と言おうと、貴様がやったことは間違いだ!」
カインは嘲笑するように少し笑った。
「ふっ やれやれ
残り数年の命、静かに過ごしたかったがなぁ。」
「そいつは残念だったな。あと数日で貴様は騒がしい地獄行きだ。」
カインは連行されて行く。表向きには何もなかったことになっているので、もちろん外にいる人間には見られないようにして。
魔王の正体…それを知っているのは、あの部屋にいたゼル達と、カルティアの上層部だけだ。
カインを連行したのち、早速魔王についての尋問が始まった。その結果分かったことは…
カインは子供の頃からずっと紅人に興味を持っていた。そして19歳の時に、紅人の専門家になる。そしてそれは、23歳の時に限界を迎えた。紅人と白人が歪みあっていたせいだ。
だからその時、魔王を創ることを決意した。10年後、魔獣細胞を創ることに成功した。それは生きた細胞を仮死状態にすることで、生命活動に必要なエネルギーの全てを動くことだけに使う細胞だ。つまり魔獣や魔人は死んでるも同然なのだ。
さらに5年後、生きた細胞を魔獣細胞へと自動的に変え、また損傷した魔獣細胞の再構築を行うコアを創ることに成功する。
さらに3年後、実の息子ノアを植物状態にしたカインは、そのノアの脳の手術をした。ノアが自由にコアを創れるように、ノアの脳にコアのシステムを埋め込むためだ。その代償としてノアは魔獣細胞に関する物以外を全く創れなくなってしまった。だが、魔術に関するところ以外はなにもイジらなかったため無傷で残っている。魔獣細胞に犯された脳細胞は通常、かなりの思考阻害を生み出すのだが、カインが直接手がけた脳にはそれがなかった。
そしてノアにコアを付加する。ノアを意のままに操るために、電気信号を受信する機能がついたコアを。
これにて魔王ノアが完成したため、カインはノアに人以外の動物の魔獣化を命じてマゾン大森林に放った。人以外にしたのは、わずかな良心の現れらしいが、今となっては後悔しているそうだ。
そして世には魔獣が現れた。
だが、それに何の対応もせず戦争を続ける紅人と白人に失望したカインは魔王を放置する。そしてどこかのタイミングで、ノアはカインの支配を看破した。
カインの予想では、ノアは自分で自分のコアを壊し、カインからの電気信号を遮断する。そしてそのシステムを自分が創るコアに組み込むことに成功したらしい。それにより、ノアは魔獣や魔人に命じることが出来る。
そして魔獣出現から30年後、魔獣達は意思を持ったように村々を襲撃し出した。
もはやノアは誰にも止められない。魔人の本能としてか、はたまた人類を恨んでいるのか、ノアは人々を蹂躙し続ける。




