32話 天才科学者カイン
ソニア達がマゾン大森林の調査から戻ってきて数日後、ゼル達に新たな任務が知らされた。
その内容は、元天才科学者カインの元まで、魔獣専門家のモンスを護衛すること。
カインというのは、前の世界会議の時にモーネが話していた、紅人と協力する理念を掲げただけで左遷されてしまった偉大な科学者だ。
カインの話をモーネから聞いた時、ゼルはずっと会ってみたいと思っていた。そしてそれがついに叶おうとしている。
紅人と協力というゼルにとって関係性の深い事柄に、ゼルはとても興味を示していた。
しかし、約30年前に左遷した人に何の用があるのだろうか、とゼルは思う。カインが30年前に言ったことが今になって現実となってきているのだから、助言をもらいに行こうということだろうか。それとも、新しく入った魔人のサンプルについての相談とかだろうか。
ゼルが個人的にカインを調べてみたら、カインは左遷される前、紅人を研究対象にしていた。確か、持ち帰った4人の魔人のサンプルの内、2人が紅人の魔人だったことと関係があるのだろうか。
ゼルはこの任務について聞いてから、こんなことばかり考えていた。
そして、いよいよ当日だ。
モンスを迎えに行く。するとモンスの横にはドルタの姿があった。ドルタがいるなら護衛なんて要らないじゃん、と思ったゼルだったが、カインへの興味でそんなことはどうでもよくなった。
ついに、カインが住んでいるらしいところまで着いた。らしい、というのは、カインがどこに住んでいるのかは国の上層部だけが知ることだからだ。
モンスとドルタ、他数名が室内に入る。
ゼルもダブルスターとして入る許可が下りているので、同じく中に入る。
中ではカインが堂々と待ち構えていた。
かなり年老いていながらも、その圧力は若者にも負けないほどだ。
「先生、お久しぶりです。」
そう言ってモンスはカインのいる部屋に入った。
モンスとカインが師弟関係にあることは、有名な話なので、ゼルもあらかじめ知っていた。
そして、外の護衛を除く全ての人が中に入ったのを見て、モンスは全員が見える位置まで移動する。
「初めに皆さんに行っておきます。今日、この部屋で見たこと、知り得たことは決して他言しないようにお願いします。」
そう言って話し出したのは、マゾン大森林で起こったこと、そしてそれにより分かったこと。
ここにはゼル含めて、魔王も魔人も知らない人もいるので、モンスはソニアから報告を受けたことを事細かに話していく。
「今回生捕りにした4人の魔人は、2人が白人、2人が紅人のシングルスターの兵士で、行方不明者と全員一致します。これはつまり人から魔人になったということ。そしてそれは魔人によると魔王ノアの仕業である。」
魔王も魔人もさっきまで知らなかったゼルにとっては、新情報の連続で、少し頭が混乱してきた。
「さらにその魔人に拷問したりして聞いてみると、数秒間触れられると魔人になったと口を揃えて答えていました。そして魔人の体内には、魔獣と同じく心臓部にコアが組み込まれていた。
これらのことから私は、魔王ノアが人体や獣の体にコアを付加した、と考えます。」
皆に動揺が走った。魔王が付加した、それはつまり魔王が”創造”の魔術を使えるということ。すなわち魔王は白人が元の魔人であることになる。
「問題は魔王ノアが何ものなのか、ということです。今日ここに来たのは、それを明らかにするためです。」
皆どういうことか分からなかった。何故魔王の正体を明らかにするのに、カインの元へ来ることになったのか。
「単刀直入に言います。カイン先生、あなたは、魔王を創ったのではありませんか?」




