25話 世界会議(1)
ゼルがハイルーツ校に編入してから3ヶ月が過ぎた。ほぼ毎日、アドラ、ハニカ、クラーラと魔獣退治や街の警備などの仕事をしていたが今日は少し特別な仕事をするようだ。
「貴族の護衛?」
ゼルがアドラから伝えられたことを聞き返す。
「そ。しかもシルヴィア家っていうカルティア1の大貴族。」
「何で急に?」
「第二回世界会議が開かれるらしいぞ。議題は今後の魔獣対策。」
世界会議とは、カルティアとアルステーデの両国の国王と大臣が参加する会議だ。
カルティアとアルステーデの会議では、王が3票、専門分野の大臣が2票、その他の大臣が1票で多数決で決議される。世界会議はその2国版というわけだ。
ちなみに第一回では、休戦協定が締結された。
「なんでも最近行方不明者が増えていることを魔獣によるものだと見て、それを踏まえて3ヶ月前の魔獣の一斉襲撃についても話し合うらしい。前回は緊急に開かれたこともあったし、調査も全然進んでなかったからな。」
「なるほど。」
「まあ多分、俺達が護衛に呼ばれたのはゼルがいるからだろうな。」
「俺?」
「ああ、ダブルスターなんて大人でもあんまりいないからな。」
「そうなのか、じゃあメルタやラキもいるのか?」
「ラキは分からないけど、メルタはいるだろうな。数少ないトリプルだし、何よりメルタの父ドルタは、軍総大将兼軍務大臣だから会議に出席するし。」
「そうだったのか。」
「まあ、俺達は俺達の方に集中しよう。シルヴィア家って言ったら夫妻の下に4人の子供がいる。今回はその6人が護衛対象だ。で、俺達はここブランロードから会議を行うリッキー平野の建物まで護衛する。この任務には俺達以外にもトリプル1人、ダブル3人、シングル以下も十数人が付いてくれるらしいぞ。」
「そんなにも…!? いくら大貴族とはいえ多すぎないか?」
「まあ確かに、魔獣からの護衛だけだったらここまではないよな。だけど今回は、紅人からの護衛も任務に含まれてるからな。」
「…なるほど。」
当たり前の話だが、休戦協定になったからと言って白人と紅人が仲良くなったわけではない。むしろ不満から余計に仲が悪くなりそうなほどだ。
ゼルはそれをブランロードに来て嫌というほど知ってきたが、いざその事実に直面すると少し気分が沈んだ。
だがアドラに悟られてはいけないので、なんとか普通に返事をする。
「リッキー平野まで送り届けた後は、トリプルとダブルが分かれて1人ずつの護衛に入る。俺らシングル以下は会議の建物の内部及び周囲の警備らしい。」
「1人ずつ? シルヴィア家は6人なんだろ?
トリプルダブル合わせても1人足りなくないか?」
「いや、現当主のオッド=シルヴィアは会議に出席するから会議室の警護に任せたらいい。」
「なるほどな。でも何で1人ずつなんだ? 家族なんだから全員一緒に護衛したらいいと思うが…?」
「リスク分散のためだ。家族全員が揃っていたら5人全員がやられる可能性がある。だが、1人1部屋だとその危険が極めて少なくなる。もちろん1人もやられないことが大前提だがな。」
「ていうか何で家族同伴なんだ? 会議するのはオッド氏だけなんだろ?」
「さあな、貴族のめんどくさいことは俺には分からん。」
アドラは両手を少し上げて、首を左右に振った。
「ちなみにお前が護衛に付くのが、4人兄弟末っ子のモーネ=シルヴィア。歳は俺らの1つ下。話によると、結構かわいいらしいぞ?」
「へぇ。で、部屋ってどれくらいの大きさなんだろ。」
アドラがつまらなそうな目でゼルを見る。
「ん、何?」
「はー。大きさはこの部屋ぐらい、それにしてもお前ってほんと女に興味ないよな。」
「え、そうか?」
「そうだよ! ハニカとクラーラも結構かわいいと思うんだけど、お前無反応だしさー。
もしかして故郷に彼女でもいるのか?」
「え、いや、いるって言うか…」
アドラが目を輝かせた。
「えっ何何!? 本当にいるの!?」
「いやーまだ付き合ってはないんだけど…」
この後も、2人の話はしばらく続いた。




