23話 レベルアップ(2)
朝は5時に目を覚ました。
そしてすぐに支度をして、グラウンドに集合だ。
アドラによると、昨日はゼルが編入して来たから特別に教室に集まっていただけだそうだ。
集合時間は6時で、10分前に着いたアドラとゼルだったが、どうやら遅い方に着いたらしい。
6時になると、昨日と同じように初めに教官に集合に行ってからウォーミングアップ。そして次は無限岩というやつだ。昨日の無限石とは少し違うらしい。
その内容は、まずは全員で輪になる。そして1人目が5秒で壊れるように設定した大きな岩を創る。それを横に渡して、その人がその岩を再構築。これもまた5秒で壊れるように設定する。そしてまた横の人に渡す。これを永遠と繰り返す。体力の限界になった人から抜けていき、最後の1人は、今度は最初に抜けた人と続けて、最後の1人が力尽きるまで続ける。
これは、大きい岩を持つだけでもしんどいのに、さらにその大きな岩を再構築しないといけないというのがかなりしんどい。一般的に、小さい物よりも大きい物の方が創造には体力を要するからである。
結果はメルタが最後まで残り、ゼルは2番目、ラキが3番目で4番目の人とかなり差をつけていた。
そして昨日と同じように30分の休憩が与えられた。
次は一風変わった模擬戦だ。まずは両者の心臓部に的を貼り付ける。その的を壊した方の勝ちというものだ。これは魔獣の弱点であるコアの対策らしい。
これもメルタ、ゼル、ラキの3人は特に優秀な成績を収めた。
そして模擬戦が終わると、昨日と同じように昼食となり、軍の仕事だ。
その前にゼルはメルタに聞いておかねばならないことがあった。
「メルタ、少しいいか?」
「ん、今日はお前が俺に話があるのか?
まあいい、何か用か?」
「ああ、昨日の模擬戦についてなんだが、メルタが地面にこうやって手を当てると、俺の足元から地面が飛び出したんだが、あれはどういう仕組みなんだ?どうやるんだ?」
ゼルは、昨日メルタがやったのを真似て地面に手を当てる。それでメルタは、ゼルの疑問にピンときたようだ。
「なるほど、付加が知りたいのか。」
「付加?」
「ああ、俺が昨日やった技だ。」
そう言って、メルタは地面に手を当てる。すると四方から地面が飛び出した。
ゼルは驚いて少し声を上げる。
「これが付加というのか?」
「いや、付加のほんの一部分というところだな。例えるなら、再構築の説明をする際に、創った土を再構築した程度だ。
まあ、順をおって話そう。
まず、これには当然だがイメージ力が大切だ。
自身が触れているものと一体であるというイメージが。」
「一体であるイメージ?」
「そうだ。”創造”の魔術は基本的には両手からしか創造出来ない。だが例外として、身に纏う物の場合はその限りではない。」
メルタはそう言うと、全身に鎧を纏った。そしてすぐに壊れた。おそらくすぐに壊れるように設定していたのだろう。
「ここまではお前も出来るだろう?」
「ああ。」
「だが、今俺は自分の服の上から鎧を創造した。それはどうしてだと思う?」
ゼルは、考える仕草をする。
「……自分と服が一体であるとイメージしているからか…」
「その通り。この原理を利用して、自分と地面が一体であるとイメージし、自分の一部であると認識する。そして、地面の身に纏う物である、土を創ることが出来たというわけだ。」
「…なら例えば、地面から剣を生やすことも出来るということか?」
「理論上は可能だ。だが俺には出来ない。なぜなら地面が剣を身に纏うイメージが出来ないからだ。俺達が鎧などを身に纏った状態で創造出来るのは、それを身につけるイメージが出来ているからだ。
俺に精々出来るのは、地面を飛び出させることと、草を生やすぐらいだ。」
そう言ってメルタは、今度は少し離れたところに草を生やした。
「ちなみに俺は地面に手を当てているが、手を当てる必要はない。ただ、俺にとっては手を当てた方が、地面と一体だとイメージしやすいだけだ。人によっては、立ったまま出来る人もいる。」
「なるほど。」
ゼルは目を閉じて、地面と一体であるイメージをしてみた。だが何も出来なかった。今度はメルタと同じように手を当ててみたが、また何も出来なかった。
「まあ、出来ないのも無理はない。俺も親父に教えられた時は、頭の中がハテナでいっぱいだったからな。地面と一体ってなんだよって思ったよ。
まあ、簡単なのからいこう。」
メルタはそう言って右手に銃を創った。そしてゼルに弾の装填が無いことを見せる。試しに撃ってみたが、カチカチと音がなるだけで、何も起きない。
「いいか? 自分と銃が一体であるイメージをする。すると———」
メルタが銃の引き金を引くと、バンッという音と共に銃弾が放たれた。さっきまで中に何も入ってなかったはずの銃からだ。
「———このように銃の中に弾を創れる。リロードがとても楽になるというわけさ。
このように、ある物と一体であるとイメージして、その物の装備品を創る。これを付加と呼ぶ。」
メルタは人差し指を立てて説明する。
「まあ”創造”の魔術は、どこまで行ってもイメージ力が大切だ。身に纏う物以外は両手からしか創れないのも、実は手に持つイメージが比較的行いやすいからだ。
例えば本を身につけるということをイメージした場合、それは大抵、本を手に持っている状態だろう?」
「なるほどな。」
「まあ、まずはさっきやった銃で練習してみろよ。さっきも言ったが、銃と一体であるイメージをするのは簡単な方だ。お前ならすぐ出来そうな気がする。まずは付加に慣れることが大事だ。地面への付加もその内出来るようになるだろう。」
「ああ、ありがとう。」
これにて、メルタの講習は終わった。




