21話 模擬戦
メルタは、ゼルと模擬戦をすることを望んだ。
「んー…まあ断る理由がないからいいけど、何で?」
「お前の実力が知りたい。5m級の熊の魔獣を倒した実力を。」
「んーでもあれは運もあったからなぁ。思ったより大したことないかもよ?」
「それでも俺は良い。実力が下の奴からでも学べることは沢山ある。」
その時、休憩時間が終了した。
まずはアルバーニ教官の前に集合だ。
そして、模擬戦をする際の注意点などを軽く説かれる。その内容は、相手を死に至らしめるかもしれない攻撃は禁止というものだ。また、ある2人が模擬戦をしているときは、他のものは勉強のため見学するらしい。つまり9回の模擬戦をするわけだ。
「ねぇ、メルタってやっぱ相当強い?」
集合が終わると、ゼルがアドラに聞く。
「そらまあ、な。大体、15歳でトリプルスターレベルなんて過去にもほぼ例がないからな。俺も昔一回だけ戦ったけど、まるで歯が立たなかったね。」
「なるほど。」
「普段はラキと模擬戦してるんだけど、今日はお前みたいだな。まあ、お前らは多分最後だろうな。楽しみにしてるぜ。」
そう言って背中をポンと叩かれた。
「…何かメルタの弱点みたいなのって無いの?」
「んー特に思いつかないなぁ。 ま、今回はメルタの方もお前の情報がない訳だし、お互い何も知らない方がフェアでいいんじゃね?」
第1試合〜第6試合まではスムーズに終わった。
そして第7試合は、アドラ対エトという男の子だ。試合は僅差でアドラが勝ったようだった。
続く第8試合では、ラキが戦うらしい。対戦相手はイルバーンという男の子で、結構大柄な感じだ。
イルバーンは試合開始の前に、盾を創造している。ラキは剣もないのに、居合の構えを見せる。
そしてスタートの合図がされた。
ラキは実際に剣があるかのように、もの凄い速さで居合をする。すると、剣(模擬戦のため木の剣だが)は居合の途中で創られていたようで、それがイルバーンの盾に直撃した。イルバーンの盾は粉砕し、後ろへ大きく飛ばされる。ラキは剣を捨てるとすぐに走り出し、走りながらまた居合の構えを見せる。イルバーンは盾を創ろうとするが、間に合わず、ラキの居合をくらい、そこでラキの勝利が宣言された。ラキの圧勝に終わった。
「何なの…あれ?」
ゼルはラキの剣術についてアドラに聞く。
「ん、お前知らねーの? あれは一心流だよ。」
「一心流?」
「そ、ラキの父、ザキ=スペルベンが師範の、居合だけを追い求めた流派。スペルベン家は、皆それの達人なんだよ。」
「ヘェ。」
居合だけを追い求めたというように、確かにラキが創った剣はすぐに崩壊が始まった。
「さ、次はお前だぞ。頑張れよ!」
「うん! あーなんか緊張してきたなー」
ゼルは、模擬戦のリングのようなところに向かう。そしてメルタと向かいあった。
メルタは何も発さずに、ただゼルを見つめている。
そしてスタートの合図がされた。
メルタは開始早々に銃を創って撃ってきた。ゼルは驚きつつも咄嗟にそれを避ける。
「安心しろ、弾は柔らかいのに変えてあるから死ぬことはない。だが当たれば結構痛いぜ。」
これが本物の銃なら、実際にまともに当たれば十分致命傷になるだろう。よってこの弾に当たることは、敗北を意味する。遠距離戦は不利だと思ったゼルは盾を創造し、盾の後ろに隠れながらメルタに突進する。
メルタはそれを見て銃を捨て、地面に手を当てる。
するとゼルは、自分の足元から何かを感じた。すると地面が飛び出してきて、ゼルの腹に直撃する。
盾は意味を成さず、ゼルは後方へ吹き飛ばされる。
ゼルはその反動を利用して石を投げつける、がそれは簡単に避けられてしまった。次にメルタは、未だ空中にいるゼルに距離を詰める。ゼルが着地した時には、メルタはもう木の剣を振りかざしていた。
ゼルはかろうじて木の剣で受けるが、直後それがゼルの手から離れた。よく見ると、メルタの剣の刃の部分に小さな凹みがあり、それにより剣を奪われた。
無防備となったゼルに、2方向からの剣が襲い、ゼルはそれを喰らってしまう。そこでメルタの勝利が宣言された。
最後にアルバーニ教官の元に集合して、解散となった。
「にしても、お前やっぱすげぇな。メルタとあんなにやりあえるなんて。」
「そう? 何もできずに負けた気がするけど…」
「いやいや、普通はもっと瞬殺だよ…」
「んで、これからどうすんの?」
「昼食とってから仕事だな。仕事は俺と同じとこのはずだから、また教えてやるよ。昼食はな、寮に食堂があって———」
その時、メルタがゼルに話しかけてきた。
「ゼル、少しいいか? 話があるんだが。」
「?」
「んじゃあ、俺は先に行っとくから、後でな。」
アドラはそう言って先に寮へと戻った。
「それで、話って何?」
「ああ、さっきお前と戦ってみてある違和感を感じたんだが…お前さっきの試合、本気で戦っていたか?」
「え?」
「何というか、力を隠してる感じがした。ただの勘だがな。」
「それは…きっとただの勘違いだよ。僕は全力でやったよ?」
「そうか、それならいいんだ。時間を取らせて悪かった。」
メルタはゼルの言葉を聞いて、すぐに去っていった。
ゼルが”破壊”の魔術を使わなかったことを感じとったということだろうか?
何にしろ、あまりメルタとは戦いたくないな、とゼルは思った。




