17話 VS魔獣
熊の魔獣の手は、すぐに再生が始まる。
ゼルは両手に2mぐらいの槍を創ると、それを熊の魔獣の両腕に突き刺し、槍もろとも腕を破壊する。
同じことを脚にもする。
これで、まずは熊の魔獣の四肢を奪った。
もちろん、すぐに再生が始まるが、瞬時に回復するわけではない。熊の魔獣は身動きが取れなくなっている。
ゼルはまた槍を創造して、コア目掛けて突き刺す。しかしコアまでは届かなかったので、槍もろとも破壊した。
破壊の伝播によって、コアは壊れた。
「今度は届いた…!!」
ゼルはそう呟くと、すぐに孤児院の元へと向かった。
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孤児院では、村の男達が木の板を創造して、なんとか魔獣に抵抗していた。屋内であることを上手く使い、入り口を限定して、そこを木の板で塞ぐ。あとはそれを男総出で押す。魔獣は知能がないため、力では上回るが、その木の板を押し返すことが出来ない。だがもちろんそれでは不十分な部分もあった。
何より問題なのは魔獣の数が多いことだ。魔獣は横の壁を突き破って、中に侵入した。不幸なことに、それは女性や子供が避難していた所のすぐ近くだった。
まさにその魔獣が目の前の標的に襲い掛かろうとしていた時、魔獣の横から槍が突き刺さり、コアが壊れて、その魔獣は倒れた。
「ゼルっ!!」
ライカがそう叫ぶと、次は入り口の方で動きがあった。
男達が押していた木の板が急に軽くなり、男達が倒れ込む。
「お待たせしました。ひとまず危機は去りました。」
ゼルは剣を片手にそう言う。
「おおっゼル君! 来てくれたか、ありがとう!」
ベルムードがゼルに言う。
他の人達からも、お礼や賞賛の声がかけられる。
しかし、喜べる空気ではなかった。
孤児院では死人は出なかったが、孤児院へ逃げ遅れた14名が全員殺されていた。また家はほぼ全壊、畑も荒らされていたり、柵も壊れていたり。抑えられた方とはいえ、被害があまりに大きすぎる。
ベルムードは、かろうじて無事である孤児院で全員待機するように命じた。
そして都心部に連絡を取ろうと、男が2人、馬を走らせる。
しかし、空が暗くなってきた頃、軍の人達がアルニ村にやって来た。
どうやら、男2人と入れ違いになったようだ。ということは、都心部に村が魔獣に襲われたことの連絡があったということだろうか?
ベルムードが、駆け寄って行く。
「私は軍のフィネルと申します。近々報せがあると思いますが、我が国カルティアだけでなく、紅の国アルステーデも含めた世界中の辺境の村々が魔獣の襲撃に遭ったようです。ですから我々は、村の被害を確認しようと思い都心部からやって来ました。
どこも壊滅的な被害を受けて、家屋が全て全壊といった状況なんですが、ここは…?」
フィネルが、開口1番に困惑した感じでベルムードにそう言う。ベルムードが、ここで起こったことを事細かに説明する。すると、フィネルが驚いたような顔をしてベルムードと共にゼルの元へと駆け寄って来た。
「ほ、本当にこの少年が、魔獣供を…!?
まさか…熊の魔獣となると我々でも勝てるかどうか…いや、5m級となると流石に厳しいか…」
フィネルは少し考えるような素振りをしてから、ベルムードに向き直る。
「都心部の近くに仮の住まいを作りましたので、とりあえずそちらへ。また追って連絡します。」
そう言って、フィネルは行きできた大きな馬車に村人を案内する。心配の声を上げるファルやマーフィを、サラさんとルミネータが必死に宥めていた。
馬車を走らせて数時間経つと、降りるよう指示された。
「あれ、アルニ村とあんまり変わんないじゃん!」
ファルが辺りを見渡してそう言う。
アルニ村のように、近くに山があったりするわけではないが、道なき道しかなかったり平野に周囲が緑ばっかりなのは同じだ。だが、遠くに都市のようなものがうっすらと見える。
「ここは都心部ではありませんからね。都心部以外の所はどこも同じようなものです。」
フィネルがそう説明する。
都心部は、首都ブランロードの周辺地域のことだ。
その周辺地域の周辺地域なのだから、まあこんなものか、と納得はする。
そして、建てられていた家へと向かう。中も外も質素な感じで、まさに仮住まいという所だ。
「では、我々はこれで。」
フィネル達が仮村を後にする。
世界中の村が襲われたと言っていたが、一体どういうことなんだろうか。常識的にはあり得ないことだが、まるで魔獣が意志を持ってタイミングを合わせたような感じだ。




