16話 急襲
誘拐事件が起きてから4年が経ち、ゼルは15歳となった。
あれから特に何も起きることがなく、平穏な日々を過ごしている。しかし最近、世間は平穏とは言えないようだ。
月1の新聞によると、人々の行方不明が多発しているようだ。軍も今最優先で調査をしているが、原因不明で、逆に調査に行った兵が行方不明になったりするらしい。
ゼルは、アルニ村から行方不明者が出ないように、警戒心を持つようにしていた。と言っても常に村中を警戒するのは心身が持たないので、特に夜に警戒するようにしていた。
今日も朝から農作業。それが終わり昼食を食べると自由時間だ。昔はよく体を動かして遊んだものだが、今はもうほとんどそういうことはしなくなった。ちなみに、ファルとマーフィはまだまだずっと元気にボール遊びをしている。
今、ゼルがやっているのはオセロだ。
ルミネータと対局している。ライカはその見物人だ。
ちなみにルミネータは超強い。ゼル含め村中誰も、1回も勝ったことがない。
「うぅ…もう角取られた…」
ゼルが長考の末に打つのに対し、ルミネータは淡々と打っていく。
「あーーーもう、さっきまで優勢だったのに!!」
「枚数だけはね。本当に単純で助かるわ。」
ルミネータからの煽りの一言を受けて、ゼルはすぐに一手を打った。だがそれもすぐに返され、今度はゼルは打つ手が無くなりパスせざるを得なかった。
「うぅ…なんか毎回同じ負けパターンな気がする……
周りから攻められて、俺は内側に追いやられて、さらに打つ手が無くなってしまう感じ…」
「さっきも言ったけど、本当に単純だからよ。例えば3枚返せる時と1枚だけしか返せない時だったら、迷わず3枚の方選んでるでしょう?
それじゃダメなの、もっと考えて打たなきゃ。
私もよく昔、打つ手ない時とかあったけど、本当に考えた末に良い手が見つかったこととかざらにあったもの。」
ルミネータから説教っぽいものを聞かされているうちにも、着々とゲームは進んでいき、最終的に5対59でゼルが負けた。
「はい! また私の勝ちーー!!」
ルミネータがとびきりの笑顔になり、ゼルに向かってピースをする。ゼルは悔しくて、机にうつ伏せになってしまう。その様子を見て、ライカはくすくすと笑う。
「じゃあルミ姉、今度は私が。」
「おっゼルよりも強いライカが相手かー」
ルミネータがゼルに聞こえるように言うと、ゼルは顔をあげて、少し嫌な顔をルミネータに向けてから、ライカに席を譲った。
2人が、前のゲームの駒を回収し始める。
その時だった。
ゼルは村の南の方に、非常に多くの魔獣の気配を感じる。
有象無象の魔獣なら、柵があるため無視すれば良いが、今回は1つ異様に大きな気配がある。明らかに異常事態だ。
「魔獣が来る…」
「え?」
「魔獣が来る! 大量に!!
柵が破られるかもしれない! ひとまず中に避難しといて!」
「ゼルは?」
「俺は外へ…!!」
ゼルはそう言うと、孤児院から外へ出た。
「ファル! マーフィ! 中に入れ!!」
「ゼルどうしたの?」
「いいから中に入ってろよ!!」
ゼルはファルとマーフィを横切り、魔獣の気配が強い方へと向かう。
「みんな!! 魔獣が来る!! 避難して!!」
ゼルは大声で叫ぶと、村人が何事だと思い外へ出てきた。
その時だった。ゼルの正面の柵が、大きな手によって壊される。そして、その大きな雄叫びが村中に響いた。
その時、村人は一瞬で理解した。
柵を壊した魔獣は、5m超の熊の魔獣だ。他は犬や猫、豚や鹿の魔獣が20匹ぐらいいる。
「ゼル君、これは!?」
ゼルにそう声をかけたのは、村の長であるベルムードさんだ。
「みんなを孤児院に避難させて、そこでなんとか魔獣を凌いでください。俺はあいつを倒し次第、援護に向かいます。」
そう言ってゼルは熊の魔獣を指差した。
ベルムードはすぐに了解し、村人に指示を出す。
「分かった、頼んだぞ。」
「はい。」
村人が孤児院へと向かい出したその時、魔獣達が一斉に襲い掛かってきた。
1番正面にいたゼルには、鹿2匹と猫1匹の魔獣が来るが、ゼルはそれを、剣一閃でコアを壊す。
すると、いよいよ大将のお出ましだ。熊の魔獣が大きな手を上に上げ、ゼルへと振り下ろす。ゼルはそれを横に避ける。
熊の魔獣の手は、あまりの強力な力で大地を割った。
次に、熊の魔獣は、その振り下ろした手を横に振り、ゼルを攻撃する。ゼルは咄嗟に盾を創り、攻撃を防ぐ。
盾は粉砕し、ゼルは横に飛ばされる。だが、盾は壊されたが、ゼルはノーダメージだ。
「1撃しか耐えられない…いや、1撃は耐えられるというべきか。」
4年前、3m級の熊の魔獣と相対した時は、ゼルの盾は攻撃を防ぎきれなかった。これは毎日修練を欠かしていなかった成果だと言える。
熊の魔獣は、ゼルへと近付き、また手を振り下ろす。
ゼルは盾でその攻撃を相殺してから、その手に触って”破壊”の魔術を使う。
熊の魔獣は手を破壊され、悲鳴を上げる。
「出し惜しみしている時間も余裕もない。今出せる俺の全力でお前を狩る。」
ゼルは両手に槍を創造して、熊の魔獣を睨みつけた。




