14話 告白
「ゼルって、”破壊”の魔術が使えるの?」
「え……………」
ライカからの予想外の質問に、ゼルは一瞬思考停止してしまった。
「な、なんだその質問は…あ、紅の魔術なんか…使えるわけねぇだろ? 俺は正真正銘白人だ。
ほら、髪も白だし、目も白だ。
それにほら…”創造”の魔術が使えるんだぞ?」
ゼルは髪を触って、目に手を当てて、ライカに白人であることをアピールする。そして岩を創造してみせる。
もし、ライカにゼルが混血であることがバレれば、ゼルはみんなに忌み嫌われてしまい、居場所を失う。
ゼルは震える声で弁明した。
「そう…だよね。私も自分がおかしいなって思うんだけど……」
ライカは、またゼルから目を逸らす。
(まだ疑われている。疑いの根本を正さなければ!)
そう思ったゼルは、今度は逆にライカに質問する。
「な、なんでそう思ったんだ?
あの倉庫にいた時からって言ってたけど、」
ライカは下を向いて答える。
「初めにおかしいなって思ったのは、ゼルが自分の鎖を引きちぎったとき。ゼルは私とは違って、かなり厳重に縛られていた。しかも力は入れにくかったはず。なのに何で壊せたんだ、っと思った。
それから私はあることに気付いたの。ゼルは自分の鎖を壊した後、私のも壊してくれたよね?
それで、ゼルの鎖と私の鎖、2つを見て気付いた。ゼルの鎖には引きちぎられた箇所にヒビが入っていたけど、私のには入っていない。
あの男達が、わざわざ厳重にゼルを縛ったのにそんなヒビの入った鎖なんか使うわけない。つまりヒビはゼルが入れた。
どうやって? 鎖をちぎる時、普通ヒビなんて入らなくない? そう思った時、”破壊”の魔術が思いついてしまったの。
そう思ってしまうと、ゼルのことが分からなくなってしまって…ゼルが初めてアルニ村に来た時、大怪我していたのは何でなんだろうとか、ちょうど1ヶ月前、紅人が忍び込んだ事件の記事を見た時、ゼルが悲しそうにしていたのは何でなんだろうとか………
ゼルは、もしかしてあの事件の白人と紅人の間の子供なんじゃないの?
………っていうことをずっと悩んでた…」
ゼルもまた、下を向いて、手で頭を抑える。
そして大きく息を吹く。
「…………正解だよ、ライカ。」
「えっ、じゃあ本当に…?」
ゼルはライカの方を見て、髪の染料と右目のカラーコンタクトを破壊した。
「うん……白人と紅人の混血だよ。」
ライカは予想していたにもかかわらず、驚きのあまり口で手を覆う。
「ごめんな……今まで隠してて。
俺はアルニ村を去るからさ…みんなには内緒にしといてくれないか? 俺はまだ生きないといけないんだ。」
ゼルは、悲しい顔をして、立ち上がりながらそう言った。
するとライカは、急いでゼルに近寄り、ゼルの手首を掴む。
ゼルは少し驚き、ライカを見る。
「ちょ、ちょっと待ってよ! 何か勘違いしてる!」
「えっ、何が…?」
「私はゼルのこと憎くも何とも思ってないよ!」
ゼルには、一瞬ライカが何を言っているのか分からなかった。1ヶ月以上白人達と共に過ごして、白人というのは紅人を嫌う人達であると完全に思い込んでいた。少なくとも村の中ではそうだった。それはつまり、混血であるゼルも嫌われるということ。
「私は……確かに紅人のことが嫌いだけどさ…ゼルのことは好きだよ! 間違いなく!
だから…村を去るなんて言わないで…」
ライカは少し涙目になって言う。
そして掴んでいた手を離し、今度はゼルの頬に手を当ててニッコリと笑う。
「だからさ…ずっと一緒にいてよ!」
ゼルは無意識に涙を流す。
「本当に…俺のこと嫌いじゃないのか…?」
ゼルは涙を拭いながら聞く。
そんなゼルを、ライカは抱き寄せる。
「だからそう言ってるでしょ?
ゼルはゼル。人種なんて関係ないよ。」
その言葉を聞いて、ゼルはさらに泣き崩れた。
「もう、なんでそんなに泣いてるの?
ゼルが泣いてるのは似合わないよ?」
「……ごめん…お父さんとお母さんが死んでさ…ずっと1人でさ…
アルニ村でみんなと出会えて、それで1人じゃなくなったと思ったんだけど…白人は紅人を本当にひどく憎んでいることを実感して、居場所が無くなった気がしたんだ。
白人にも紅人にも否定される、世界から否定されているんだって…ずっと生まれてきて良かったのか、とか考えていたんだけど、でもライカだけは味方でいてくれて…それがとても嬉しくて…」
ライカはゼルに目線を合わせると、優しい笑顔を見せた。
「嬉しかったら笑って、こんな風にさ。
そっちのゼルの方が、私は好きだよ。」
ゼルは涙を思いっきり拭い、そして笑顔になった。
「うん!」




