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ワールドヘイト  作者: 三ki
第1部
13/65

13話 考え事

誘拐グループの全員を倒したので、ゼルは後ろにいるライカの元へ駆け寄った。


「ライカ、大丈夫か?」


「うん、大丈夫だよ。ゼルのおかげで。

ゼルのこと強いと思ってたけど、まさかあそこまで強いなんて…

ってそんなことより…

ありがとう、ゼル! 私…本当に本当に怖くて…ゼルが助けてくれなかったら…」


ライカは改まって、ゼルに頭を下げて礼を述べた。

ゼルは少し戸惑いながらも、ライカの礼に応える。


「いいんだよそんなことは、ライカが無事で良かった。」


ゼルがライカの肩に手を当てる。

それでライカは顔を上げた。


「それよりまずここから離れよう。ここで助けが来るのを待っててもいいが、あの男の言葉を信じるなら遅くとも1日後には取り引き相手ってのがここに来る。鉢合わせしたらおそらく戦闘になる。相手が大して強くなかったらそれでいいが、そうじゃない場合もある。ここのどこか近くで待機して、そこで助けを待とう。」


ライカはゼルの意見に賛成し、ともに倉庫を出た。

その倉庫は山の小道に隣接したところにあって、外に出ると完全に山に囲まれていた。


「まずいな、これじゃあ山の中で待機してたら、魔獣に襲われてもおかしくない…」


ゼルは少し思案する様子を見せる。


「ライカはどうすれば良いと思う?」


「え、えーと…この小道に沿って山を下りてみたらどうかな? それで、もし人が住んでるところが見つかれば、その人達に伝えて助けを呼んで貰えれば良いし、山を下りることで魔獣に襲われる可能性も少なくなるかな…って。」


「なるほど…確かにここで助けを待たなくても、こっちから呼べばいいもんな、よしそうしよう!」


こういうわけで、2人は山を下り始める。


「それにしてもライカは賢いな。俺は全然思い浮かばなかったよ。」


「たまたま思いついただけだよ。それにゼルだって賢いよ。ゼルに言われなきゃ私ずっとあそこで待っていたかもしれない…」


「それは、あの男が取り引き相手を匂わせたのはまだ鎖で縛られている時だったからな。ただ怖くてあまり考えられなかっただけじゃない?」


こんな風に2人は会話をしながら山を下りていった。

そして下りきる前に日が沈んできてしまった。


「人が住んでるところ見つからなかったな。流石に夜道は危険だ。一旦この辺で野宿しよう。」


「うん。そうだね。」


2人は道から少し逸れて山の中に入った。11年間山で暮らしていたゼルはすぐに乾いた木の枝を見つけて、火を起こし、焚き火を作った。


「なんか慣れてる感じがするんだけど、昔山で暮らしてたとか…?」


「え、あ、いや…分かんないけど、なんか体が覚えてるっていうか…」


ライカから鋭い質問を受け、動揺するゼル。

この言い訳何回目だ…と思いながら何とか答えた。


「お腹空いたねー……

そう言えばゼルの”創造”の魔術でさ、食べ物とか創れないの?」


ゼルとライカは朝から何も食べていない。

そんなライカが目を輝かせてゼルに質問する。


「食べ物か…まあ創れると言えば創れるんだけど…味もないし栄養も全くない。」


「へぇー”創造”の魔術ってなんか難しいんだね。」


「難しくないよ。単純な話、俺に栄養素のイメージ力が足りないだけ。だから栄養までは創れないってだけ。ただ、例えば肉のイメージ力ならあるから、肉の食感などは再現出来る。腹を膨らましたいだけなら出来るよ。食べても意味ないけど。」


「なるほどー…じゃあやめておく。」


ライカは分かりやすく落胆した。

そこから少し沈黙が続いた。

そして、ゼルは相当疲れが溜まっていたのか、すぐに眠ってしまった。


しばらくしてゼルが起きた。空はまだ暗くて焚き火の灯りだけが辺りを照らす。まだ出発出来そうではない。

そしてゼルは、ライカが目を開けて起きているのに気が付いた。


「どうした? 眠れないのか?」


もしかしてずっと起きていたのではないか、と思ってゼルが上半身を起こして言う。


「あ、ゼル起きたの? えーと、うん…まあ、ちょっと眠れないかなぁ。」


「なんで? ライカも疲れてるでしょ?」


「疲れてはいるんだけど、ちょっとね…」


「…もしかして魔獣が来ないか見張ってくれているのか? それなら心配するな。魔獣が近くに来たら俺がすぐに気付く。あいつらの気配は独特だ。」


優しいライカのことだからもしかしたら、と思ってゼルは言う。


「ああ違う、そうじゃないの。ただ、ちょっと考え事してて…」


さっきからライカはゼルと目を合わせようとしない。

余程の考え事なのだろうかと思ってゼルはさらに続ける。


「考え事? 何の? 良かったら相談に乗るよ。」


「いや、大丈夫だよ。私1人で考えれるから…」


ライカは下を向いてしまった。


「そんな風には見えないぞ。まあ話してみろ、何でも聞くから。」


ゼルは上半身だけでなく、体を起こして、ちゃんと座ってライカに言う。


「…………………分かった。じゃあ言うね。」


長い沈黙の後、ライカは答えた。


「…実は、あの倉庫にいた時からずっと気になってたことがあるんだけど……えっと…その…こんなこと聞くのバカらしいって思うかもしれないんだけど……………」


ライカは、また長く沈黙してから、ゼルの目を見て問う。


「ゼルって、”破壊”の魔術が使えるの?」

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