11話 拉致
今日も朝起きて、畑に向かい農作業をする。
それが終われば昼ご飯だ。いつも通りに昼ご飯を食べ終え、みんな自由時間に入った。
今日はみんなでかくれんぼをしようということになった。
鬼はじゃんけんの結果、ファルがすることになった。
ファルはちくしょー、と声を上げている。
ファルは孤児院の広場の中央で2分待機、隠れる方の範囲は村中だ。
ファルが1、2…と数えだす。そして他の4人は一斉に散らばった。
ゼルは土色の毛布を創り、畑に擬態する。
マーフィは小柄な体ゆえに、孤児院の食堂に置いてあった木箱の中に入って隠れる。
ルミネータはブレッツさんの家を訪ねて、中で隠れさせてもらう。
ライカは孤児院の近くの草むらの中に入って隠れる。
かくれんぼがスタートした。
ファルはまず外から探そうと思って外に出た。
するとその時、1ヶ月に1回の商人が来た。
続々と村の大人達が集まっていく。ファルも、肉が食べれるかなと思って少し意識を持っていかれる。
どうやら今回は商品がかなり多くあるようで、取り引きに時間がかかっている。
一方、孤児院の近くの柵を1人の男がよじ登り、村に侵入した。それはライカが隠れていたすぐ近くだった。
ライカは突然のことに驚き、音を立ててしまう。
それにより男はライカがいることに気付く。
男はすぐにライカの口をタオルで覆い、身動きを封じて村の外に連れ去り、森の奥へと消えていく。ライカはずっと声を抑えられながらも、んーという声をずっと発していた。
その一連の動きは10秒にも満たなかったが、孤児院の近くの畑にいたゼルが、その音に気付く。
ゼルは状況を把握すると、すぐに村の外まで追いかける。
ライカを連れ去った男は、すぐに村から離れて仲間の1人と落ち合う。
「早かったな、まだ30秒も経ってない。」
「ああ、孤児院の中まで入るつもりだったが、都合良く外にいてな。」
すると後ろから草の中をすごい速さで進んでくる音が聞こえた。もちろんゼルである。
「誰だ!?」
男は咄嗟に内ポケットに入れていた銃をライカの頭に突きつけ、ライカを人質にする。
それを見てゼルは石を創造し、それを男の銃を持っている手に投げつけ、銃を落とす。そして男の懐に潜り込み、膝を蹴り体勢を崩させそのまま地面に叩きつける。そして男に跨り、ナイフを創造し、男の首元に当てる。
「何者だお前達は? 商人ともグルなのか?」
「な、なんだお前は、、」
ゼルはもう一本ナイフを創造し、男の右手に突き刺す。
「早く答えて」
男は大声を上げて痛がる。
そしてゼルは、ライカに近づこうとしている男の仲間に話しかける。
「余計なことするとこいつ殺すよ? その次はお前も。」
ゼルはライカを自分の元へ寄らせる。
ゼルはライカを安心させるために、ライカに少し笑顔を見せた。
「お、お前こそそんなことしていいのか…?」
男の仲間がゼルに話しかける。
「なんだと?」
「これが何か分かるか?」
男の仲間は半笑いになりそう言って、ボタンを取り出す。
「これはな、緊急事態用のスイッチだ。
俺がこれを押せば、商人に扮した俺達のリーダーの元へ連絡がいく。そしてその先は村人皆殺しだ。」
だから大人しくしろ、と男の仲間は言う。
「それが本当だという証拠は?」
「話す義理がどこにある? なんなら試してみるか?」
男の仲間がニヤニヤと笑いながら言う。
ゼルはさっきみたいに石を投げつけることも考えたが、さっきと違って距離もあるし、相手は冷静だ。
ゼルは小さく舌打ちをすると、「すまんなライカ」と言ってナイフを捨て男を解放し、両手を上げた。
ゼルは鎖でキツく縛られた後、眠らされ馬車に連れて行かれた。
ゼルは倉庫のようなところで目を覚ました。
隣にはライカがいる。正面には見張りが1人。
ゼルが目を覚ましたのを確認するとさっきの男が、仲間との談笑を中断してゼルの元に近づいてきた。
「おっ目覚めたか?」
そう言うと男がゼルの髪の毛を引っ張り、顔を近づける。
「お前には何発も殴ってボコボコにしたい所だが、大事な商品を傷つけるわけにはいかねぇからな。感謝しろよ?」
「商品?」
「はっはっは、そうさ。お前らはこれから売られるんだよ。
ここは取り引き所みたいな所でな、今はお前達を買う奴を呼んでいる。遅くとも明日には着くだろうぜ。
女の方は言うまでもないし、お前はガキのくせに結構強ぇから高く売れるだろうなぁ。」
男が少し笑いながら答え、ゼルの元から去り、仲間の元に談笑しに行った。
ゼルは鎖で、頑丈に縛られており、とても力で引きちぎれるとは思えない。
「…ゼル…ごめんね……私のせいでこんな…」
ライカが泣きながらゼルに謝る。
「ライカは悪くないよ。悪いのは全てあいつらだ。」
「でも……」
「そんな事を言ったら俺も本当に不甲斐ないよ。あの時は冷静さを欠いていた。あの男を制圧したらすぐにもう1人もそうすべきだった。」
ライカはさらに泣き出してしまった。
ゼルは少し何かを考える。
鎖を引きちぎろうと力を入れてみるが、やはり引きちぎれない。そして少し息を吐く。
「ライカ、今から鎖を引きちぎって逃げるぞ。」
「えっ?」
ゼルは見張りに聞こえないように言う。
ライカは驚いて口を開けてゼルを見る。
ゼルはライカに少し笑顔を見せると、バレないように”破壊”の魔術を使って、鎖にヒビを入れた。
そして力を思いっきり入れる。
すると、ゼルの鎖は引きちぎられ、破片が辺りに飛び散った。




