10話 不穏な空気
ゼルが孤児院に来てから1ヶ月ぐらいが過ぎた。
ここでの生活にもすっかり慣れ、孤児院の子供はもちろん、村の人達とも大体仲良くなった。元々村の規模は小さく、ゼルを含めて39人しか人がいないので、近所付き合いが多くあり、すぐに仲良くなれた。またゼルは”創造”の魔術に秀でていたので、日常における様々な物を創って支援していたりするので、それによって話す機会も多かった。
今日も朝から農作業だ。
初めは傷が深くて、満足に出来なかったが、今はすっかり回復したので思いっきり出来る。
これは出荷用のもあるが、普段のご飯用でもあるので、みんな真剣だ。
孤児院のみんなで畑に向かう。畑は孤児院を出てすぐの所にある。
そこには近所の人もすでに何人かいた。
ゼルはすぐにスコップや鍬などを創り、みんなに手渡す。
「いやぁすごいねゼル君は。俺もスコップくらいなら創れるけど、ここまで精巧なのは創れないよ。」
「ほんとにねぇ、農作業がいつもより楽になったわ。
ゼル君には本当に感謝しているよ。」
近所のブレッツさんとカーラさんが褒めてくれる。
「ありがとうございます。この村に住んでる者としてこのくらいは当然ですよ。」
ゼルが普通に受け答えをする。
それから、ゼルは自分の分も創って農作業に移る。
ゼルは一般人をはるかに超えた身体能力を持っているが、それでも結構腰がきついので、終わった後は腰に手を当てて伸ばしている。
こういうのを毎朝繰り返している。
農作業が終われば次は昼ご飯、その次は自由時間だ。
自由時間では、みんなで遊んだりしている。
今日はファルとマーフィとボール遊びだ。
それが終わるとゼルは1人になったので、魔術の訓練をすることにする。
右手で何かを創って左手で破壊、左手で何かを創って右手で破壊、これを1時間以上繰り返す。
1人になった時、ゼルは毎日これをしている。これは山で暮らしていた時にもしていた修行方法だ。
これに加えて、筋トレなどの身体能力の強化もする。
もしまた熊の魔獣みたいな強い魔獣に遭っても勝てるようにするためだ。村の中だからと言って完全に安全というわけではない。村の周りを高い柵で囲っているとはいえ、魔獣によっては壊せる魔獣もいるだろうし、鳥の魔獣による襲撃もある。どんなことが起こっても大丈夫なように、ゼルは鍛錬を続ける。
自由時間が終われば、晩ご飯、その次は風呂、その次は就寝。これがゼルのルーティーンだ。
明日もまた朝から農作業だ。
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〜アルニ村の近く〜
馬車の中に5人の男達がいた。
その中のリーダー風の男が話し始める。
「では、計画のおさらいだ。あそこの村には月1で商人がやって来る。その1ヶ月というのはアバウトで、正確には29日〜31日だ。そして今月に関して、それが3日後、つまり31日目という情報を入手した。
俺らは明日、29日目に商人に扮して村に赴く。そうすれば当然、村の大人が集まって来る。
その隙に、孤児院の子供を拉致する!」




