表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吉岡綾乃は最強の魔法をかけた  作者: 椿 雅香
42/47

電気の魔法の解除

小西が献身的な行動をとります。

  ⅩⅩⅢ 魔法の解除


 新学期が目前に迫ったある日、魔法使い三人組がおばあちゃんの家に来た。今日こそ、解除するぞ!と、意気込んでいる。三人で作戦を練って来たらしい。

 おばあちゃんはクスクス笑っていた。おばあちゃんにしてみれば、子供が四人集まって、悪さしているようにしか見えないのだ。

 静香は、私から霊力をもらったことで、きまり悪いのだろう。少し上目遣いで遠慮している。彼女がこういう顔をすると、なかなか可愛らしくて、いつもと違った魅力があった。

 三人を代表して、中島が言った。

「僕達、作戦練って来たんだ。今日はどんなに時間が掛かっても、何とかしようと思う」

「どういう意味?」

「今から、僕と透が交代で君と手を繋ぐ。で、電気に耐えられなくなったら、交代するんだ。そうして、放電が終わったら、君は解除の魔法をかけろ」と、中島。

「そんなに上手く行くやろか?」

「大丈夫だ。途中で、お前が俺達に申し訳なく思えば、心の底から解除を願うって要件にも合致するんだ」小西も言い募る。

「そんなに上手く行くとは、思えん……」

「大丈夫。私も手伝うから、今日は、徹夜してでも頑張りましょう」

 静香が俄然ハッスルした。

「世のため綾乃のためだわ。霊力が上がるかも知れないわ」

 でも、私にとっては、今のままの方が都合がいいのだ。静香は中島も小西も手放したくない。中島も小西も、静香と私のどっちも好きで、相手を決めきれない。こんな状況であの電気の魔法がなくなったら、四人とも、どうしようもなくなってもっと傷つくじゃないか。

「じゃあ、始めよう」

中島が言って、私の右手を取った。こうやって、静香や小西の前で二人して手を繋ぐのって変な気分だ。公認だと言えるんだろうが、こんなことは秘密裏にやるから意味があるので、人前でやることじゃない。

 三人組は、世紀の大実験だと言わんばかりの意気込みで、私の気持ちなんか全くスルーだ。

 嫌な音がして、中島が青ざめた。それでも、中島は手を離さない。ストップウオッチを手にした静香が冷静に言った。

「透。代わって」

「OK」

 小西が、左手を取った。その間に、静香が中島にヒーリングを施す。小西と私の手の辺りでバリバリと音がする。ここまでは同じだ。すぐに静香が、「薫、交代」と言って、小西にヒーリングを施した。しばらくして、「透、交代」と言って、小西に代わる。これを何度も繰り返すのだ。

 やってみて気が付いた。この計画が始まって以来薄々気付いていたのだが、小西の消耗は、中島のそれより激しかった。そうだった。中島は、黄の電気の魔法を使うから、電気とは相性がいいけど、小西にはその力がないのだ。小西の消耗が激しい道理だ。

 青白い顔をして、それでも私の手を握る小西に、思わず叫んだ。

「ト!このままじゃ、あんたが潰れる!離して!」

「いいんだ。上手く行ってる」小西が拒んだ。

 静香も中島も心配そうに小西を見つめた。静香が、「交代」と、言う前だった。

「ト、もう止めて!」私が叫んだ。

「もう少しだ」小西が壮絶な笑いを浮かべた。「俺に悪いと思うなら、解除しろ!」

「あんたに、黄の力あげる!」

 小西の目が黄色く光った。黄の魔力が付与されたのだ。

「お前な!そんな魔法使うより、この忌々しい魔法を解除しろ!せっかく、痛い思いしてここまで上手く行ったのに!」小西が怒鳴った。

「そうだ!大変なんだから」

 いつもは優しい中島まで、文句を言った。

「そんなに透が可哀想だと思うなら、電気の魔法を解除してくれればよかったのに」

 三人組に責められて、私は小さくなって謝った。

 肩で息をする小西に静香がヒーリングを施した。

 小西は切れたのだろう。キッと私を見据えて、すごんだ。

「綾乃。次は、あの魔法の解除しかない。分かってるな」

 黙って頷くと、小西が私の手を引いた。思わずよろめくと、そのまま抱きすくめられた。

「ジュニアがいつもしてたようにしてみる。これで、俺が大変だと思うなら、あの魔法を解除しろ」

 体中が接触しているのだ。小西の体のあちこちから火花が散った。

「ト!死んじゃう!」

「お前が、こんな馬鹿な魔法をかけたのは、俺のせいだ」 

 小西の唇が紫色になって、青白い顔に火花が散る。

「止めて!」

 力一杯抗うが、小西の方が力がある。体力的に上なのだ。意地でも離さない。どうしようもなくなって、叫んだ。

「あんたのせいやない!あんたのせいやないんやから、もう、止めて!」

「知ってる。でも、それも俺のせいだ」

 壮絶な顔で、ニヤリと笑う。思わず、小西の顔を見た。あんた、私の超極秘事項を知ってるの?でも、今は、それどころじゃない。小西が生きるか死ぬかの瀬戸際なのだ。

死にかけた顔って、こんな顔をだろうか。背筋が寒くなった。このままだと、小西が死んでしまう。どうしよう?何とかしないと、この魔法が解除されないと、小西が死んでしまう。それは、絶対嫌だ。解除して!方法は知らない。でも、解除できるものなら、解除して!神さま!

小さな火花が散った。

 ダメだ。パワーが足りないのだ。どうしよう?小西が死んじゃう。

 中島と静香は、呆然として成り行きを見つめている。二人とも、明らかに、私のパワーが足りないことに気が付いた。これ以上、どうしようもないのだ。

(そうか、あの魔法をかけた時のお前は、八色近いパワーがあったんだ。今は、七色しかない)

 小西が心の中で呟いた。

「できひんのや!離して!あんた、死んじゃう!」

(俺のパワーをやる。少なくとも、赤も黄もお前がくれたものだ。それで足りないなら、全部持ってけ!)

(持ってけって、言われても。どうやって?)

(お前は他人に与えることができる。その逆をすればいいんだ。昔、一般人の娘を救った『しゅけん』がやった、あれだ。あれをしろ。で、パワーが足りたら、急いで解除しろ。俺の体が保たない)

 心でする会話は、瞬時に行う。小西との会話は一瞬で終わった。小西の命を救うためだ。何とか小西から赤と黄の力をもらいたい。と、願った。そうして、この忌まわしい魔法の解除を願った。

「早くしろ!」

 小西が叫んだ時だった。体が熱くなった。お腹の底から何かが沸き上がって、大きな火花が散った。そうして、小西を取り巻くあの嫌な音が消えた。

 静香と中島が目を見張った。

 私と小西は、呆けたように座り込んだ。小西は、私を抱きすくめたまま嬉しそうに笑って、私の目を覗き込んだ。

 そして、倒れた。私を抱いたまま。

 私は、体中の力が抜けて、意識がぼやけた。遠くで、おばあちゃんが静香と中島に、小西と私を座敷に運んで欲しい、と頼んでいるのが聞こえた。



 目が覚めたら、座敷で寝ていた。小西は見当たらない。どこにいるのだろう?目で捜すと、気配で分かったのだろう。おばあちゃんが来て、私が丸一日眠り続けていたと言った。

小西は二時間ほど寝て帰ったらしい。静香とおばあちゃんがヒーリングの魔法を施したので、大したことはないとのことだった。

 一同の心配は私だったらしい。電気の魔法を長いことかけ続けたので、体が普通に戻るのに時間が掛かったようだ。あの魔法は体への負担が大きかったのだ。ここらで解除しないと、一生解除できなくなったかも知れない。三人組が心配したとおりだ。

静香と中島は、小西の無茶に驚愕しながらも、私の電気の魔法が解除できたことを喜んだらしい。

 私が目覚めたので、おばあちゃんは三人に電話した。

おばあちゃんが電話口で話すのを聞きながらため息をついた。これで、私を護ってくれる魔法はなくなってしまった。ジュニアもいないのだ。私を護ってくれるものは、何もなくなってしまった。体中がスカスカして、風が吹き抜けるように感じた。

しかし、孤独に浸ってばかりいられない。目下私がしなければならないのは、小西の霊力がどうなったか知ることだ。

 以前、魔法のクラスで、『しゅけん』が近くに居合わせた魔法使い達から霊力を奪うのを見学した。私はそれと同じことをしたのだ。でも、『しゅけん』と違って、接触していた小西からしか奪えなかったし、加減も分からなかった。もしかして、奪いすぎて、最悪、小西の霊力がなくなってしまったかもしれない。万一、そうなっていたら、少なくとも、元の三色の魔力――小西は、もともと寒色系の青、藍、紫の魔力があったところへ、私が赤と黄の魔力を授けた――を授けなければならない。

 もう一つ気になることがある。

 あいつは、私の超極秘事項を知ってる、と口走ったのだ。本当だろうか。もし本当なら、あいつの記憶を消さなければならない。そのぐらい、魔法使い社会においては、非常識なことなのだ。




小西君、素敵


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ