魔法使い三人組の計画
小西から三人組の計画を聞きます。
ⅩⅩⅡ 魔法使い三人組の計画
「何してるんだ?」
聞いたような声で、思索を破られた。湖面に、スーツを着た小西が映っている。
「何してるんだって、聞いてる」
もう一度、言った。
「考えごと」
水面に映った小西に答えた。
「ジュニアのことか?」
「タツヤに言われたこと」
「お前は、あいつを魔法使いの代わりとして見ていなかった。だから、あいつは逃げたんだ」
小西が私の心を読んだ。思わず振り返って、小西を見た。
「あいつ、お前に本気で惚れてた。だから、お前が龍の恋人になって、周りから悪く言われるのが耐えられなかったんだ。魔法使いの社会は閉鎖的だ。色数による序列があるくらいだ。龍の恋人だってのは、立派な攻撃材料になる。あいつ、お前のことが好きだから、だから、逃げたんだ」
「話、して来たん?」
「ああ。俺達にお前を頼むって。大したヤツだ。だから、お前も惚れたんだろう」
安心して脱力した。でも、私に人間のパートナーができないと、来にくいことに変わりはない。そうして、それは、私にとって、二度と会えないと宣告されるに等しいことだった。
「で、何の用?」
「ご馳走持って来てやった」
小西が悪戯っぽく笑った。
「?」
「パーティーのご馳走だ。食えよ」
目を疑った。小西は、透明なプラスチック容器にご馳走を詰めて持って来たのだ。
「あんた、こんな所帯じみたことしてたら、魔女達に嫌われる」
「別に、嫌いな魔女に嫌われても、どうってことない」ニヤリと笑った。
ジュニアの湖の畔で二人してご馳走を食べていると、以前、緑池でジュニアとご馳走を食べたことを思い出した。
「お前な、俺とご馳走食べてる時に、わざわざあいつのこと考えるんじゃない!」
「そやかて、シチュエーションが同じなんや」
「いくら同じでも、俺に失礼だろうが」
「トだって、いっつも、シズのこと考えてるから、お互い様や」
小西の目が火を噴いた。
食べながら、小西がパーティーの報告をした。
静香は、霊力が戻ったことで一同の尊敬を集めたらしい。佐藤の霊力は回復していない。それもあって、静香の快挙は賞賛されたという。
静香は、中島と小西にだけ、私から霊力をもらった、と告白したようだ。私からもらった霊力だから、と、静香は町のために些細な魔法をかけることにしたらしい。
小西は、私の霊力が落ちたんじゃないかと心配した。
「シズの霊力が回復したのはありがたいんだけど、お前の霊力、大丈夫か?ものすごく消耗してたから気になるって、シズも言ってた」
「大丈夫。一旦四色か五色ぐらいまで落ちたけど、一週間ほどで回復した」
「その前は、八色近くまであったって?」
「誰に聞いたん?」
「シズが安本先生に聞いたって」
「七色が最大なんやから、別に、それ以上必要ないやろ……霊力なくなって、魔女でなくなるのも悪うない思てたし」
「そう言えば、お前、霊力がなくなって欲しいって、いっつも言ってたな」
少し切なそうに私を見た。
「でもな、薫やシズとも相談したんだが、霊力のことはさておいて、俺達は、あの電気の魔法を何とかしたいんだ」
「?」
「俺と薫は意識的にお前に触れることにした。手を繋いだり、肩に触れたりさせてくれ。で、お前の霊力で作る電気が出尽くしたら、解除の魔法をかけろ。そうすりゃ、あの忌々しい魔法を解除できる」
「シズは、何て言うてるん?」
「シズも賛成だ。あいつはお前に借りがあると思ってるんだ。だから、パーティーの最中、俺と薫がその相談してたら、積極的に応援するって言ってくれた」
おいおい、あんた達、パーティーで何してたん?でも、静香が応援するってどう言う意味やろ?
私の心の声を受けて、小西が答えた。
「つまりだな、電気の魔法で俺達がダメージ受けたら、シズが緑のヒーリングの魔法を施してくれることになったんだ」
「……」
「喜べ、お前が普通になる日は近い」
そう言って、嬉しそうに手を伸ばした。思わず手が出た。大きな音の後で、小西の頬に手形が残った。
「お前なぁ、せっかく俺達が献身的に協力しようって言ってるんだ。いい加減、条件反射は止めろ」
電気ショックに物理的ショックを併せて受けた小西が、憮然として言った。
さて、完全フリーの春休みだ。完璧な開放感。私は、おばあちゃん家で怠惰な生活を満喫することにした。大阪の実家に帰っても、両親は海外にいて留守だし、面倒な自炊生活は新学期が始まってからってことで。
だが、究極に怠惰な生活は、小西が予告した実験で夢と化した。中島と小西が交代でやって来て、手を繋いだり、肩に触れたりしたのだ。
静香の霊力が戻って『ゆとり』ができたんだろうけど、他にやることもあるだろうに、わざわざ私の魔法の解除に励まなくてもいいじゃない。
おずおずと、手を伸ばす。風俗じゃあるまいし、真正面から体に触らせて欲しい、と言われるのも、変な気分だ。
中島や小西が私に触れると、聞き慣れた音がして、二人とも蒼白になった。私の霊力が七色にまで回復して、電気の魔法もパワーアップしたみたいだ。
家にいるときは、おばあちゃんが緑のヒーリングの魔法で治療してくれた。おばあちゃんの魔法で人心地付いた中島が言った。
「知らなかった。綾乃のおばあちゃんは、緑の魔法を使うんだ」
「おばあちゃん、私が高校のとき力を授けた、あの松村さんやったんや」
中島が目を剥いた。
「だから、おばあちゃんの緑の魔力は、私が授けた力や。それで、今頃お世話になってるんやから、面白いもんや」
緑池にいるときは、専ら、小西が来た。中島では、あの急峻な山道を登るのは大変だからだ。中島から、できれば紫の力を授けて欲しいとリクエストがあったが、無視した。彼には、すでに藍の力を授けたのだ。別に緑池に来なくて良いから。と言うと、中島は、憮然として、静香に連れてってもらうのは私と静香に対して失礼だから、と文句を言った。
小西は、たまさかの優越感に浸ったようだ。あの二人は対等だったのに、藍の力を授けたせいで、中島が五色の格上になってしまったので、何となく微妙だったのだ。
しかし、電気ショックの後で、ヒーリングの魔法を施してもらうために静香の家にテレポテーションするのはきついようで、結局、私がヒーリングの魔法を施すことになった。
三人組は、これじゃあ、何をしてるか分からない、と文句を言った。
言われてみれば、その通りだ。電気ショックでボロボロになった中島や小西を、私が治しているのだ。こんなことして、意味があるんだろうか。




