タツヤの苦言
ジュニアを探す綾乃にタツヤ額減を呈します。
ⅩⅩⅠ タツヤの苦言
お約束の卒業パーティーがあると連絡があったが、行く気はなかった。ジュニアもいなし、疲れるだけだ。
パーティー当日、独身の魔法使いや魔女達は、例によって温泉旅館の大広間へ着飾って出掛けたらしい。卒業生だけじゃなく独身の魔法使いや魔女を全員集めるのだ。結局、名目は何であれ、合コンなのだ。ったく、好きなんだから。
私は、予定通り四百年前の秋の緑池へ飛んで、持って行ったケーキやローストビーフをタツヤ夫妻と一緒に食べた。ジュニアは姿を見せない。私がタツヤに文句を言うと、タツヤは澄まして言った。
「ワシと違って二度と会えんわけじゃあるまいし、少し時間をおいた方が良いんじゃ」
「だって、私に人間の彼氏なんかできるわけないやない。意地悪なんやから」
「綾乃もあれも互いに夢中になり過ぎておる。少なくとも、もう少し待て。そうすれば、少しは頭も冷えるじゃろうて」
悪戯っぽく笑った後で、真面目な顔を作った。
「あれを捜すのは、止めるんじゃ」
「どうして?」
「綾乃が、不幸になる」
「もう、なってる」
膝を抱えてすねて見せると、タツヤが笑った。
「透や薫は、どうなんじゃ?」
「魔法使いは、嫌いなん」
「どうして?」
「どうしても」
「もしかして、心の奥にロックしてある超極秘事項と関係あるのか?」
何も言わない私に、タツヤが言った。
「前から言おうか言うまいか悩んでおったことじゃが……」
「?」
「綾乃が、あれを好いてくれるのは、分かる。じゃが、魔法使いの代わりに見るのは、止めた方がいい」
「代わりって?」
「確かに、龍は、魔法使いを妻に娶ることが出来るし、それは龍にとって別段不都合なことじゃない。じゃが、魔女を妻にするのは異例のことじゃ。綾乃があれの良さに惹かれておるだけなら、ワシゃ何も言わん。だが、ワシが見るに、綾乃は魔法使いの代わりとして見ている節があるんじゃ」
「……そんなことない」
「ワザとじゃないじゃろうて。じゃが、そう言う見方もできると言うことじゃ」
緑池のタツヤのところにケーキの四分の一――ジュニアの分だから、タツヤが食べちゃダメ。と、釘を刺した――を残して、私は、ジュニアの湖に行った。
秋の湖は絵のようで、空の青と湖の青の間に真っ赤な紅葉が燃えている。湖面を覗き込んで、タツヤの台詞を反芻した。
確かに、タツヤのような見方もできる。私は、ジュニアを魔法使いの代わりとして見ていたのだろうか。全くそれがなかったか、と問われれば、自信がなかった。
魔法使いには、悪意のある者もいたし、悪意のない者もいたが、みな、私を傷つけた。自分達のしていることで、私がどんなに傷つくか考えもしなかった。
私も悪気なくジュニアを傷つけたのだろうか。魔法使いの代わりとして見たのだろうか。私を傷つけない優しい魔法使いがいたら、ジュニアに恋をしなかったのだろうか。ジュニアは、それに気が付いたのだろうか。それで、傷ついたのだろうか。
静香は、中島と小西のどちらも好きで決めきれなかったから、二人を傷つけた。中島と小西も、静香と私のどっちも好きで、静香と私を傷つけた。私は、あの三人から逃げるためにジュニアに恋をしたのだろうか。だとすれば、一連の流れの中で、一番傷ついたのはジュニアかもしれない。知らないうちに、あいつを傷つけていたのだろうか。だから、会いに来てくれないのだろうか。
湖の水を手ですくって、ジュニアのことを考えた。あいつは、私のために時空を越えて助けに来てくれたのに、私は魔法使いの代わりとしてしか見なかったのだろうか。そんなことない、と言いたかった。じゃないと、ジュニアに申し訳ない。




