素敵な夢と優しい妄想
小西が優しくなりました。
夢を見ていた。
嬉しい夢だった。
池の畔に見たことのある人が立っていた。
ほっそりとしたその人は、優しく微笑んでいた。私は、駆け寄って、その胸に飛び込んだ。
「会いたかった……どうして来てくれへんかったん?」
そう言うと、その人は黙って私を見つめた。いつもみたいに抱きしめてくれた。そっと、包み込むように、大切に大切に抱きしめてくれた。その暖かさが心地よくて、その人の体温も呼吸も心拍も私の中に入って来て、一つになったように感じた。
「魔法使いは、嫌い。龍がいいのに。あんた、来てくれへんから」
その人は、黙ってもう一度抱きしめて、私の顔を見た。愛おしそうに見つめた。そうして、唇に軽くキスして、向こうへ行ってしまった。
「行かないで、ジュニア。行かないで!」
追いかけたいのに、体が動かない。情けなくて涙が出た。行きたいのに。ジュニアと一緒に行きたいのに。
涙がポロポロ出て、膝を突いた。地面に突っ伏して号泣した。
「ジュニア!私を見捨てないで。独りぼっちにしないで!」
気が付くと、枕元で小西が心配そうに見ていた。辺りを見回すと、おばあちゃん家のベッドだ。どうして小西がいるんだろう。おばあちゃんが頼んだのだろうか。私の心の声に気が付いたのだろう。小西が言った。
「お前のおばあちゃんに頼まれた。買い物に行ってくるから、お前を見ててくれって。それと、目が覚めたらこれ飲めって」
ステンレスボトルを手渡す。ベッドサイドに置いてあったコップに注ぐと、紫色の液体だった。おばあちゃんお得意の元気が出る飲み物だ。一息で飲んで、息を吐いた。
「うなされてた」
小西がボソリと言う。
「夢、見たから」
「ジュニアの夢、か?」
「うん」
「俺じゃ、あいつの代わりにならないけど……」
「?」
目の前に、小西の妄想が広がった。四色になったせいか、三色の時より臨場感がある。
妄想の中で、小西が言った。
「悪かった。お前に酷いことした。許して、欲しい。今さら、こんなこと言っても信じてもらえないだろうけど、お前が来てくれて楽しかった。こんなことで役に立つとは思わない。でも、あんまりお前が寂しそうだから。ジュニアの代わりだと思ってくれたらいいから」
そう言うと、私をゆっくり抱きしめた。まるで、ジュニアが抱いてくれたみたいに。
小西の体温が暖かい。
龍より人の方が暖かいんだ。初めて知った。
呼吸と心拍が暖かさと一体になって、私の心を温めてくれた。
私は呆然として小西を見た。
「ジュニアを探すのはやめろ。そのうち、俺が話を聞いて来てやる」
寂しそうに笑って、立ち上がった。
「生身で、これをやりたいんだ」
じゃあな。
そう言って、帰って行った。
しかし、おばあちゃんも無茶苦茶する。小西が狼になったら、どうするつもりだったんだ?
後で追求すると、「電気の魔法があるから、大丈夫だろ」と澄まして言われた。
おばあちゃんは、本当に、常識っぱずれで無茶苦茶な私の母の母嫌なのだ。と、変なところで納得した。




