小西の言い訳
小西が血迷った理由を語ります。
脱力する二人に、アドバイスをした。
「とりあえず、当分の間、カがシズの側にいてあげた方がいい。それから、トは名貸しするんや。ここで、シズとトの婚約が解消になったって知れたら、佐藤さんがしゃしゃり出て来る。だから、婚約者の振りするんや」
小西は面白くなさそうな顔をした。そうして、辛そうに呟いた。
「お前、二番目扱いされて傷ついたって言ってたな。その意味がよく分かった。これは、俺の報いだろうな」
「いいやない。少なくとも、公式には、あんたが一番で、カが二番なんや」
「お前は、龍が一番なのか?」
「そういうこと」
「龍しかお前を抱けないってのが、面白くない。それに、この前、あいつ、本気でキスしやがった」
小西が憮然とすると、中島が反応した。
「ジュニアが綾乃にキスしたのか?」
「ああ。あいつ、今まで、抱きしめるだけだったのに。この前、本気でキスして、本気で抱きやがった。だから、切れたんだ」
「あいつ……許せん」
「お前、あん時、そんなことも知らずに、止めに入ったのか?」
「綾乃が、ジュニアがいなくなるって泣いていたのしか、気が付かなかったんだ。だいたい、僕は藍の力を掌握しきっていないんだ。だから、透と綾乃の心を同時に読めない。
でも、そんなことするヤツだとは思わなかった。あいつ、とんでもない龍だったんだ!」
中島まで一緒に怒っている。
おいおい、あんた達の本命は静香だろうが。私が誰とキスしようが関係ないだろ。
翌日、中島が静香に会いに行った。小西は同行せず、緑池で私と勉強した。霊力の研究も大事かもしれないが、夏休みが終われば課題の提出をしなければならないのだ。学生の本文は勉強だ。いくら時間を遡ることができると言っても、普通に勉強した方が良いに決まってる。
夏のまぶしい日射しを避けて、畔の木陰で、せっせとレポートを書く。参考文献を読み返していると、うかつにも寝入ってしまった。勉強って眠くなるのだ。下手な睡眠薬より効き目がある。
目が覚めると、目の前に小西の顔があった。
「あんたな。顔って、近すぎると識別不能になるんや。もちょっと離れてくれへん?」
文句を言うと、小西が頭を抱えた。
「お前こそ、こんなところで、寝るな。無防備……じゃないけど、好き気をもよおす」
「でも、手ぇ出せへんから、いいやない」
「それが、面白くないんだ。ジュニアには、何でも許すくせに」
「だって、長老も認めた公認の恋人なんや」
小西の気配がおかしい。唾を呑み込んで、やっとの思いで心の中で言うのが分かった。
(こんなこと言える筋合いじゃないんだが……俺がシズに選ばれたのは……俺がシズと結婚しても、お前は魔法使いの社会にズッといてくれるって思ってたからなんだ。形は二組の夫婦でも、俺達四人、いつまでも一緒にいれるって思ってたから……)
(前にも言うた通り、それは、あんたの勝手な思い込みと言うもんや)
(いや、普通、魔法使いはそうなんだ。少なくとも、色数の多い魔法使いはこの町を離れない。大学も近場に行くし、就職も近所にして、魔法使い社会の幹部になる。それが常識なんだ)
(あんた、いっつも、私のこと、常識が通じない女やって、言うてるくせに)
小西が頭を抱えて叫んだ。
「言った!その通りだ。でも、ここまで通じないと思わなかったんだ!」
(お前が側にいなくなるのは、嫌だ。もう一度……考えてくれないか?)
(……)
(……やっぱり、嫌か?)
(そういう話は、なしにしてくれへん?誰にも縛られたくない)
(龍には……縛られてる)
(だって、恩人、もとい、恩龍なんや)
(お前が許してくれるまで……待つ)
(……龍と結婚するかもしれへん)
(離婚しろ!)
(龍に離婚ってあるんやろか?)
「お前な。何か反応が普通じゃないんだ!」




