三人の思い出
三人組の可愛かった頃のお話です。
中島と小西の心に共通の場面が現れて、二人は寂しい目をして息を吐いた。
お祭りだった。浴衣姿の美しい少女がいた。よく似た顔の少年が二人並んでいる。奉燈祭のようだった。酒を飲んだ男達が、奉燈を担いで、町中を練り歩く。「サカセ、サカサッセ、イヤサカサッセー」と掛け声も勇ましく、たくさんの奉燈が乱舞する。奉燈の上では、法被姿の少年達が笛や太鼓、それに鉦を鳴らす。揃いの法被の担ぎ手が威勢良く足を運ぶ。
狭い町並みだ。うかうかしていると、担ぎ手に足を踏まれそうだ。神さまの夕涼みの場として設営した海辺の仮宮の側で、何基かの奉燈が一服していた。酒に酔った脂ぎった男が、少年達と歩く少女を認めた。
「パーフェクト……」
ヨダレを垂らさんばかりに呟く。
少女が小さな悲鳴を上げた。連れの少年が鋭く言った。
「薫。そこのおっさん、やっつけるぞ!」
「どのおっさんだ?」
「眼鏡の右のハゲだ」
そう言いながら、透は杖を出して、鋭く水を浴びせかけた。薫が男を電気で撃つ。バシッと火花が散って、男が悶絶した。
二人の少年は、泣きじゃくる少女をそっと抱きしめて、「もう、大丈夫。やっつけたから」と言いながら、祭りを後にした。
薫は透が何を見たのか訊かない。透も薫に何を見たのか言わない。静香が、恐ろしさに震えながら泣きじゃくっていた。
「可哀想に。小学校低学年だったんじゃない?」
「三年の時だ。シズの霊力が開花したのは、小学校二年のときだ。あれ以来、いろんなプレッシャーがかかった。周りもそういう目で見た」と、小西が言った。
「シズは、ボロボロだった。不自然なことはしちゃいけない。魔法を気付かれちゃいけない。って、魔法憲章にも縛られていたし……第一、心の中で思うだけなんだ。犯罪でも何でもない」
中島も苦い顔をした。
「俺にとっちゃ、今でも、シズは、あん時のシズだ」小西がビールを一息で飲んだ。「でも、いつまでも子供じゃないんだ。綾乃みたいに自分で戦わないといけないんだ」
「世のため人のために魔法を使わなかっただけじゃなく、僕達に頼りすぎたので霊力が落ちたんだろうか?」
「多分な」小西が投げやりな調子で言った。「でも、おかしい。綾乃に対抗意識を持ちすぎてるんだ。今までのシズにはなかったことだ」
「前は、もっと素直だった」中島も同意した。
私は何も言えない。黙って二本目のビールを渡して、プルトップを引いた。
悩みは悩みとして、ビールがおいしい。今度、タツヤに持って行ってあげよう。ジュニアにも飲ませてあげれたらいいのに。そう思った時、小西がジロリと睨んだ。
「お前な。俺が大変な時に、元彼の龍にビールの差し入れすることなんか、考えるんじゃない!」
「奥さんの分も持ってった方がいいやろか?」
「話聞いてるのか?」
小西が高飛車に怒鳴った。
聞いてる。でも、私には、どうすればいいのか分かんない。とりあえず、ビールをどうぞ。
三本目を出すと、中島が気が付いた。
「綾乃、このビールどこから持って来たんだ?」
「おばあちゃんに冷蔵庫に一ケース入れといてって頼んどいたんや。だから、これはウチのや。余所のを取ったら、立派な窃盗や。質量不変の法則に配慮してるんや」




