第六十 『誓立』
「……」
「あら、例の人登場よ。」
「そうね、七音。"女の敵"ね。」
「……ぐすっ」
柊花は泣いたまま、ロトを見つめる。
「……█▓▓█▓█、我が最愛」
「█▓█様……」
ロトが柊花へと近づいていく。
女子たちはロトを睨んでいたはずなのに、近づくたびに表情が蕩けていく。
嘘だろ、と口をあんぐりしていると、ぽんぽんっと肩を叩かれる。
どんまい、という顔だ、なんだこいつ。
舌打ちを返し、ロトへと視線を戻す。
「来ないでっ!」
「……なぜだ、こんなに愛いのに。」
「…ッ……嘘でしょっ!」
「我は嘘をつかない。
すまなかった、我が最愛よ。」
柊花の髪を一房手に取り、キスを送っている。
イケメン仕草ってイケメンだからこそだな、様になる。
「……」
だが、柊花は未だむすっとしている。
「我がここに来たのは、█▓▓█▓█、君を迎えに来たんだ。
共に帰ろう。」
「……イヤッ」
「…………ここで渡すつもりはなかったが、これを。」
「なにこれ、モノで釣れる安い女って言いたいのっ!?」
ごくりと息を呑む、勝負に出ている。
頼む、上手くいってくれ。
「結婚をしよう。約束ではない、今ここで、契ろう。」
「……え」
左手を手に取り、またキスを送っている。
柊花の顔はまだ困惑に満ちている。
だが、怒りはもう感じない。
葛藤だ。
「だって、え、█▓█様は、もう……」
「愛している。
またお前がいなくなっても、また迎えに来よう。
必ず。」
「あ、█▓█様……、うそ……」
ロトはフッと笑いを浮かべる。
「嘘はつかない」
「……嬉しいっ!」
柊花はロトに抱きついた。
一件落着か……?
「あんなこと、好きな人にされたら、誰でも許しちゃうわよ」
「よっぽど嫌われてない限りはね」
「……いつの間に」
七音と会長は、いつの間にか柊花の近くを離れ、俺らの近くへ移動していた。
抱きしめ合う2人を教室の隅から眺める。
——良かった。
キュウ、約束守れたぞ。
胸ポケットに触れると、何かが入っていることに気づく。
——白詰草。
……。
…………破損した世界を誰が修復したのか、はっきりとは分からない。
……もしかした、プレイヤーが直したのかもしれない。
でも。
『game over』の裏側にあった穂波のアイテムと、キュウ。
あそこは穂波の場所だった。
……違うかもしれないけど……もしかしたら、キュウが直したのかな。
ありがとう、キュウ。
俺の勘違いだったとしても、いい。
キュウはずっと、最後まで、俺の味方であったのだから。
「健」
ふと、ロトに呼ばれる。
「挙式をあげる、神父として招待してやろう。」
「あ、はい」
「えへ♡ここにいるみんなも招待してあげるぅ♡」
2人が指を鳴らすと、パッと景色が一変する。
みんなの服もスーツやドレスになっている。
「ゔっ……やっぱり、これ酔う……。」
「七音、エレベーターとかも嫌っていうもんね……」
「私たちもいつか、ね……」
「健!!!早く終わらせろっ!!!」
「あら、次は私たちはこの後に、ってことかしら」
「やっぱり、いい!!!!ごゆっくりっ!!!!」
会長に抱き……締められているコウちゃんに十字を切って、祭壇に立つ。
「あー……こういうの初めてなので、噛んでも怒らないで」
「当然」
「早くぅ♡」
これで平和になるのであれば、なんでもいい。
俺は、適当に教科書を開き、なんちゃって神父を始める。
「えー……。
新郎ロト、あなたは柊花を妻とし
健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も、
愛することを誓いますか?」
「誓おう」
「じゃあ……新婦柊花、あなたはロトを夫とし
健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も、
愛することを誓いますか?
「もちろん♡誓いまぁす♡」
「では、誓いのキスをどうぞ」
2人の熱烈なキスを間近で見ることになってしまった。
鐘の音が鳴る。
ゴーン、ゴーン。
拍手の音も響く。
……そういえば、もう指輪を嵌めてたからいいよな。
指輪のデザイン、すげえ豪華に変えたんだなぁ。
穂波はドラゴンとか言ってたなぁ。
……小学生の時だからなぁ、と耽っていると、いつの間にか教室に戻っていた。




