第五十四 『雷鳴到来』
——「あの女が言うことを信じて、待つしかないわね。」
その声を最後にみんなは解散した。
そして、学校へ行って帰って、眠る。
穂波の鼓動が耳に染み付いて離れず、起きる。
寝坊して、遅刻して、心配をかける。
もはや、体調がいいのか悪いのか、自分でもわかっていなかった。
それを何日か繰り返したある日のことだった。
「健、寝れてんの?
大丈夫?」
「さっきの授業も寝てたよね、顔色悪いし……」
「大丈夫だよ、ただ寝不足なだけで……」
「別に一生をこっちの世界で過ごすわけじゃないから、成績とかどうでもいいけど、
いざという時に動けなかったら、貴方一生後悔するわよ」
「そうだな……」
『後悔してね♡』
憎いあいつの声が脳裏を過ぎる。
穂波が戻らなかったらどうしよう。
そんな不安が募る。
外を見てみると、曇っている。
雷のゴロゴロという音が鳴ってから、遠くで光が見えた。
「雨かなぁ」
「予報だと晴れだったのに」
クラスメイトがざわざわし始める。
彼らが反応しているなら、なにかのイベントだろうと、頬杖をついて、聞きながす。
「あれ、雷の音近付いてない……?」
「えっ、怖いっ……」
高菜ちゃんと園が、何かに気づく。
確かに雷鳴がこちらに近付いてくる気配がする。
窓へと近付いて空を眺めてみる。
「……」
ドタドタと走ってくる音が聞こえてくる。
ドアが乱暴に開く音と共に会長が入ってきて、窓を指差す。
珍しく呼吸を荒げ、汗が浮いている。
指の先を見る。
「……飯岡健、あれは?」
「……わかんないです」
指の先には、雷が光るたびに浮かび上がる人影があった。
雨は降っていない、ただ雷の音があたりに響いているだけ。
「あの女の旦那様じゃないの?」
「分からない」
ずっと、分からないと返答し続ける。
汗が背中を伝っている。
体は、ずっと緊張状態のままだ。
分かってはいけないと脳が否定し続ける。
「嫌な予感すんだけど」
「主人公の勘ってやつかしら……残念ながら、予感で終わらないわよ。」
「ぁ」
目の前にその人物が現れる。
黒い髪の毛をツインテールにしている。
黒いチュニックワンピースから、伸びる腕は途中で消えている。
いや、黒い霧のようなものが出ている。
いつもは人間をバカにしたように笑っていた。
今は黒い霧のせいで表情は読めず、目だけがギラリと見える。
そいつは、黒八木柊花だった。




