第五十三 『帰ってきたけれど』
「…………」
「……この仕様どうにかならないかしら」
「急に目の前に健が現れましたね」
「んっ……」
「起きたわね、さあ報告してちょうだい」
薄らぼんやりなんとなく、聞こえてはきていたので、戻ったのだとは思ったが、
帰ってきて早々に報告しろ、は予想は……まあついていた。
起き上がり、会長に向くと、早くしろと目で急かしてくる。
起きたばかりの脳で整理をしながら、ぽつぽつと俺は話し始めた。
——「つまり、あの女は浮かれポンチになって、約束を取り付けてくれたのね」
「俺の説明が1行にまとめられた……」
「で、契約書とかは?」
「ないです……」
は?と会長に凄まれる。
いやだって、穂波の安否確認が最優先だったし……。
「ほ、穂波は生きてましたっ!!」
「さっき聞いたわよ。それに目元、真っ赤だもの。
言わなくても察せるわ。」
まじ?と目元を抑える。
恥ずかしい。
恥を飲み込んでいる途中の俺に、会長はキュウを手渡してくる。
「返すわ、こいつうるさかったのよ。
キュウキュウ、番を取られた動物みたいだったわ。」
「あ、ども……
心配かけたなぁ」
「ぎゅっ…ぎっ…」
心なしか声がガラガラになっていて、枯れている。
「水…!」
「はい、用意しても飲まなかったわよ」
ペットボトルキャップに入っている水を差し出される。
それを受け取り、キュウに差し出すと、受け取って、それを飲み始めた。
女子軍は、俺を睨み始める。
「……」
「…………」
圧が強い。逃げるようにコウちゃんへ目を向けると、コウちゃんは白く燃え尽きていた。
「ヒッ……」
「ああ、気にしないで。
乗り込もうとする会長を止めるのに、気力を使い果たしただけ。」
「私の心配をしてくれているのは分かるけれど、少し困るわ。」
頬に手を添えて、ぽっと赤くなる会長と、
貴方時間かかりすぎよ、と文句を垂れる七音が怖くなる。
ごめんな、コウちゃん。




