第四十七 『紙』
「そういえば、鈍感って?」
「あいつよ。コウちゃん。」
「……まさか?」
「1周目だけね、好きだったわ。
そりゃそうよ、そう設定されているもの。
まあ、色々あって冷めたわ。二度とごめんよ、あんな男」
へえー、じゃあ、最初の時はちゃんと設定通りの七音だったのかな。
「まあそうか…、俺らはそう設定されてはないからな…。」
「好きになるわけないもの、あんな女。
無理矢理キスしてくるし」
「えぇ……そんなことしてきたのあいつ……」
引くわー、とドン引くと舌打ちをされる。
怖いっす七音さん。
「言ったでしょう、結婚式もどきをしたと。
その時の指輪よ」
「……指輪」
七音は、指輪を手で持って見せてくる。
キラリと光る指輪はパッと見は綺麗だ。
穂波もしてたなぁ。
結婚式もどきはしなかった。
ただ、自分のものだという証だった。
……穂波にも、あいつは。
「顔が怖い」
「……ごめん、なんかムカついて」
「なんとなく察するけど。
もう元の世界に戻った私に、こんなものを残していったわ。」
「その指輪はあいつの所有物って証なんだ、昔の俺もそれで縛られた。」
「でしょうね……はぁ、これをどう処分するか。」
「俺も分かんないなぁ……。」
はあと2人でため息をつく。
すると、あっ、と七音が声を上げる。
「これ、あげる」
ベンチから降りると、ポケットから紙を渡してきた。
開いてみると、番号が書いてある。
「電話番号?
七音の?」
「私のも欲しいならあげるけど……
ちがうわ、あの女が渡したスマホに入ってた番号。
明日と、あの女の番号とは違うもう一つ、名前は読めなかったけど。」
「…………もしかしたら、あの女からのヒント」
「そうかもね、貴方が使って」
「ありがとう」
「いーえ、そろそろ戻りましょ」
七音は先に歩いて行ってしまった。
俺は紙をポッケにしまって、七音の後を小走りで追いかけた。




