第四十五 『必要な犠牲』
「情報共有もここまでね。
飯岡健、あの女を利用するのは、最終手段にしなさい。
逆鱗に触れたりして何回もリセットされて、バグって退場なんてことになったら終わりよ。」
「は、はい……。
ん?バグって退場?」
「……何か引っかかったの?」
「いや、コウちゃんから聞いたのはリセットされたら、みんなもって聞いてたから……」
「私の未来の旦那様ならそうね、名前が変わると中身も変わる。
ただしその身に残った今までの記録は残る。
だから、名前を変えても、私は貴方がどこの馬の骨を攻略したのか分かるわ、ねえ霜井戸くん」
「は、はははは、ははははは……」
「さっきのルートは、七音だったわね。
だから、私はあの子を監禁しようとした。
貴方の目の届かないところで。
……あの女のせいで失敗したけれど。」
「仕方ないじゃないですか!
俺の意思とかは関係なくっ…!」
「でも、飯岡健に興味も好意もあるでしょう。
やっぱり……」
とこちらにギラリとこちらに目を向けてくる会長が怖くなり、七音の後ろに下がる。
だが、すでに明日がいるので、半身しか隠せていない。
「いや、まぁ、それはそうですけど……!」
「じゃあ、ここに残りなさい。
少しお話ししましょう」
コウちゃんがバッとこちらに振り返る。
全力で目を逸らす。
七音は目を逸らすことなく、じゃあ私はここで失礼します、と会長に伝え出て行った。
すまん、必要な犠牲だった。と思いながら、俺も出ていく。
高菜ちゃんたちもお辞儀をしてから出てきた。
中からは悲鳴が少し聞こえた後、何も聞こえなくなった。
さよなら、コウちゃん、多分忘れはしない。
「わ、私たちは教室に戻るね」
「んー、わたし疲れたからサボろっかな。
なんか考えとくよ、じゃあね」
「え、ええ!園ちゃんだめだよっ!
ご、ごめんね、先に行くねっ!
待ってよ園ちゃんっ!」
高菜ちゃんと旗靡が離脱してしまった。
というより、サボる旗靡を高菜ちゃんが追いかけて行った。
「少し話があるわ、健。
中庭に行きましょう。
……明日、明日は先に教室に戻っていてくれる?」
「えっ!?私も行くっ!」
「教室に戻ってくれるなら、放課後は約束してたクレープを食べに行きましょう?
ホイップたっぷりのを食べさせてあげるわ」
「ん、うーん……でも、七音といたい…」
「……………………………………目に入れても痛くない貴方を無理やり行かせるのは心苦しいけれど、どうしても健と話したいことがあるの。
私のいい子ちゃんは、言うことを聞いてくれるかしら」
「…………もう、仕方ないなぁ。
後でご褒美くれる?」
「もちろん、なんでも貴方の言うとおりよ」
「んふふ、2人の約束ねっ!
バイバイ、飯岡くん、七音!」
手を振って、階段を駆け上がって行った。
なんか性格が違うなぁって思ったけど、ワンコ系なのは変わらないんだなぁ。
「明日を攻略しようと思わないでよ。」
「そりゃあ、今は攻略どころじゃないし。」
「……問題を解決したら、さっさとこの世界から出ていきなさいよ。」
「…………はい」
そんなやりとりをした後に中庭へと歩みを進めた。
授業開始のチャイムが鳴り響く。
初めてサボったなぁ。




