閑話 もうどうでもいい記憶3
「健ちゃん、健ちゃん」
「……お前、そろそろ幼馴染離れした方がいいんじゃねぇの…?」
「えっ」
「——いや!!!嘘っ!!!
やめろやめろ泣くなっ!女子が臨戦体制を取り始めたっ!俺のためだ!涙を止めろっ!!!」
イケメンを泣かせる大罪をまさか自分が犯すとは思ってなかった。
女子から、穂波を紹介しろというのが増えたので面倒くさくなっただけでぇ……別にお前のことが嫌いとかじゃなくて……!と言い訳をする俺を見て、やっと穂波は笑った。
肉離れを起こしたらしい穂波が休んだ。
激しい運動は出来ないが、日常生活的には問題はないらしい。
「しばらくサッカーできねぇな」
「まぁ、ただの助っ人だったし」
「でも、あいつらと試合すんの好きだったろ」
「……」
ポロポロと泣き始める穂波の顔を肩に預ける。
三年だしな、大学に行けば疎遠になるやつも出てくる。
ただの助っ人でも、あいつらといる時のお前は、応援してるだけの俺でも心の底から楽しそうに見えた。
「あーあ、サッカーするお前けっこー好きだったのに」
「……もうっ!追い打ちかけんなっ!」
この日、さらにえんえんと泣き始める穂波を宥めるのは夜までかかった。
「初めてっていつ、だって?」
「そう、全員に聞いててさ」
「女子にも聞いてんのっ!???」
「ち、ちゅーのことなんだからいいだろっ!!」
やだ純情男子だったのね伊藤。
冗談は置いといて…
ファーストキスってことだろ〜。
したこと…。
「ないな…。」
「よっしっ!!!仲間!」
「俺は…」
「穂波は?」
「な、なななな…ない…ないよ……………疑った目を向けんな!」
だってなぁ、目がすごい泳いでるし。
伊藤はさっさかと別の女子に聞きにいった。
あっ、叩かれてる。ハハハ。
——穂波はいつの間にか隣にいて、こそこそと少し屈んでから耳打ちをしてきた。
(本当は、一回だけあるんだ)
「うへぇ、耳ぞわぞわしたわ。」
「ひどいっ!」
ぴえん!と言い始める穂波に笑いを返す。
なんだかもやもやしたのは隠しといた方がいい気がした。




