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起きたら七音がいなかった。
……おトイレかな。
ガチャリと音が聞こえた。
……七音…?
でも、この部屋のドアじゃない。
トイレのドアの音でもない。
外に繋がるドアだ。
気づいた瞬間、暑くないのに汗がぶわっと噴き出る。
とん、とん、とんっと足音が迫ってくる。
布団に包まり、隠れる。
きっと、完全に隠れることは出来ていない。
体の震えは止めることができないから。
この部屋のドアが開かれる。
「…………」
足音が近くにある、呼吸音が聞こえる。
七音かもしれない、七音じゃないかもしれない。
怖い。
確認するのが怖い。
やだ、やだ、あっちいけ。
布団を剥ぎ取られる。
「嫌!!!あっち行け!!!!」
抵抗する。七音、七音!助けて…!!
「いや、や、やだっ…!!!たすけてっ!
たすけて、七音っ!!」
「——明日っ!」
七音の声が鮮明に聞こえた。
恐怖に染まって歪んだ視界は鮮明になる。
光が差し込む。
七音だ。
「ふ、ふっ、ふ、ぇ…えぇーんっ!!!
な、七音だったぁっ…!
こわ、怖くてっ……
……ごめんなさい、けが、してない?」
抱きついて、ボロボロと涙を流す私とは違って、七音は心底安心した顔をしている。
「うん、大丈夫」
「起きたら、ぐすっ……七音いないし……
外のドアが開く音が聞こえてくるし。」
「……ごめんなさい、ここで電話すると貴方が起きると思ったの。」
「私こそごめんね、私のためだったのに」
スマホを持つ手を見ると、キラリと光るものが見えた。
「指輪…?」
「ッ!」
七音はサッとその手を背中の後ろへ隠す。
……なんで隠すの?
「どう、して、隠すの……?」
心がズキズキと痛む、親友に言えないことがあるの…?
「ち、違うの、その」
「私を攻略出来るのは」
「違うの、明日……!!」
崩れる。
地面がぐらぐらして、全身の血の気がなくなる。
「——七音しかいないのにっ……!!」
いやだ、いやだ、いやだっ!!!
コウちゃんなら仕方ない、コウちゃんには勝てないからっ!
貴方のことをわかっているあの人には一生勝てないからっ!!
七音にしがみついて、泣きつく。
いやだ、いやだいやだいやだ、やだっ!!!!
コウちゃんじゃないなら、幼馴染以外を選ぶのならっ!
「私を選んでよっ!!!」
醜く叫ぶ私に、貴方は。
うっとりと笑っているのが見えた。




