第三十二 『地獄の中』
敵意を剥き出しにしている会長を前に焦る。
一体なにが?
なんで?
疑問が浮かぶ、けれどそれに対する答えは浮かばない。
「挑戦するんでしょう?
諦めないんでしょう?
なにからするの?
一体なにから?
打つ手なんて最初からないのに!
なにをしても無駄なのに!」
会長は俺の目を見つめたまま、詰め寄ってくる。
「ねえ、答えて!」
なにから、なにを、挑戦して、無駄。
諦めない、なにを。
「なにを、するかはまだ……分からない。
なにかを出来たのに、諦めるのは嫌なんです。」
「なにも出来ないなら?
足掻くの?
足掻けないなら?」
「出来なくても!探すんです!」
「……根性論ばっかり」
「なにかを成し遂げるために、なにかを生み出すしかないんです!
少しでも足掻くための、七音たちを救う手立てを!」
「……うみだす。」
会長の目が虚ろになる。
様子がおかしいと思いながら、反論を続けようとするが、明日が俺を手で制する。
「………………ふ、ふふ…」
「はは、ぁははは……そうね、貴方今、女だもの。
産むしか脳がなくなるわね、うふふ、あはは、ざまあないわね。
貴方も諦めたらいい、諦めて受け入れる。
それが小崎古味の人生。
分からないまま、暗い道を歩くの。
私たちの行き着く先は地獄なの。」
「——霜井戸、コウちゃんは貴方の救いにならないの?」
「……」
「貴方が、会長が、コウちゃんに、執着する理由って、なんなんですか、コウちゃんがいたとしても、貴方は地獄の中にいるままなんですか」
「——ええ、地獄に行くのは変わらない。
小崎家は幸せな結末を許すことはない。」
世界がゆらゆらと揺れる、視界が二分割される。
目を擦る。
視界が気持ち悪い。
「……助けてあげたのに。」
助けてあげた?
「そこの不要なデータを消さずにいてあげたのに。」
「……明日が、不要?」
「いいえ、宇保町明日はこの世界の攻略対象。
消すことなんてできない。」
「——穂波が不要……?
だったら、俺も不要だろ……」
「フッ、自覚はしてるのね」
鼻で笑われる。
「貴方は不要だと認識されていなかった。
『飯岡健』のデータが個別として存在していたもの。」
脳が沸々と煮えたぎる感覚がする。
ズキズキと痛みさえ伴う。




