>鐘が鳴る、拍手が響く、幸せな結婚式 :)
人間ってどうしてこんなに可愛いのかしら。
少しつつくだけで、怯えて縮こまる。
うふふ♡と幼気な笑いを出して、優しくすると、すぐに絆される。
なんて単純で弱くて、こんなに、こんなに可愛いの!
目の前の人間にキスをしてやると、吐いてしまう。
……こんな反応初めて!
抵抗する子はたくさんいたけれど、キスをしてやればみーんな人形になっちゃって面白くなくなった。
賭けだったのに……♡
成功しちゃったぁ♡
キュンキュンする胸の高鳴りを抑えて、目の前の子……
——上野七音に迫る。
分かってるのよ、宇保町明日のためならなんだって出来る。
貴方はあの幼くて、可愛い、大切な子を守るためなら、なんだってする。
それが例え貴方を犠牲にすることになっても。
でも、あの子以外なんて嫌でしょう?
あの子以外を愛せない、なんて可哀想……。
とてもとても可哀想で……。
————可愛い子!!♡
私なら目の前の吐瀉物さえも愛せる。
……元々気に入っていたけど、もっと気に入った♡
可愛い!可愛い!可愛い!と胸が高鳴る。
「ねぇ、病める時も健やかなる時も私のことを愛すると……誓って♡」
まだ吐きそうになっている七音ちゃんは、目に絶望が滲む。
……あと少し。
あと少し♡
誓いますかという問いではなく、あえて誓え、と迫る。
手に入る、手に入る…!
ワクワクとする私とは対照的に、七音はすでに絶望の最中にいる。
「わ、わたしは——」
震える声で言葉を紡ぐ。
なんて精神力の強い子!
誓え……♡
誓え……!♡
誓っちゃえ!♡
「——誓わない」
「貴方が、どうなろうが、知ったこっちゃない。」
「私は、あの子が、明日が幸せであったなら、明日の幸せ以外はどうだっていい。」
「…………きっと明日の幸せの中には、親友が含まれてる。
私は愚かな選択はしない、それはあの子を不幸にするから。」
「私は、貴方を愛さない。」
そう、そう。
そうなのね、それが貴方の答え。
なんて、なんて……。
——なんて、愚かで!健気で!一途で!真面目で!可愛らしい子!♡
あの子と似てる!
けれど、あの子とはまるっきり違う選択……!
……可愛い♡
これだから、やめられない♡
身体に電流が走ったような感覚を覚えて、ふらふらしちゃう。
「……なにか言っ」
「じゃあ♡違う契約♡
もう一度、キス、させてくれる?♡」
口元に指を一本当ててあげると、嫌悪に満ちた表情になる。
結婚の誓約なんか、どうでも良くなっちゃった。
キスしたら、また吐いてくれる?
貴方の小さな不幸を、貴方は受け入れてくれる?
私が与えた試練を、貴方は乗り越えてくれる?
なになら、貴方ははいと頷いて、私の物になってくれるの?
こんなに、愛で満ちるのはなんて久しぶりなのかしら。
貴方の目の奥の感情は、恐怖と嫌悪を私に向けている。
愚かな貴方、貴方はきっとこれを拒むことは出来ない。
もうすでに一度受け入れたものを拒否はできない。
さあ受け入れて。
私は貴方の頬に手を添える。
顔を歪ませながら、貴方は身を委ねてくれる。
ほら。
ほらほらほら!♡
思った通り!
この唇は私のものになる。
上野七音、上野七音、あの子に一途で盲目な貴方。
唇が重なる。
歪んだ表情は変わらない。
強張った貴方の身体はみるみるうちに力が抜けていく。
唇を離した瞬間、上野七音がこちらに倒れ込む。
意識を失っている貴方の耳元で、ひそひそと教えてあげる。
ねえ、気づいてないの?
「——貴方はすでに、その薬指に指輪をはめたこと♡」




