第二十五 『ヒビ』
「うーん、一睡もできなかった。」
ベッドに戻り、眠ろうとしたのはいいものの、あの女への恐怖感か、それとも昼に寝過ぎたせいなのか、眠くなかった。
そして、一睡もできないまま、朝となったのである。
「困ったなぁ、こういう時って授業中寝ちゃうよね」
「まだ布団の中にいて、なーにが困っただよ」
「ぴゃっ!?」
驚いてガバッと起き上がると、部屋のドアにはコウちゃんがいた。
「な、ななな…!?」
「なんで俺がいるかぁ?お前の頭上にあった目覚まし時計でも見ろよ」
「………………!????」
遅刻、遅刻である。
飯抜きなら…なんとか…間に合う…!!多分!!
脱ぐから出てけ!とコウちゃんを部屋から追い出し、着替える。
「お母さーん!朝ご飯いらない!」
「じゃあ、パンだけでも持っていきな!」
パンを持たされ、外へと向かう。
そこには、余裕綽々のコウちゃんがいた。
「は???」
「お、きたきた。
手、掴め」
「は???」
まったく同じ反応を返してしまう。
トーストを食べているので、パニくらせないで欲しい。
「手!」
仲良くお手手を繋いで登校でもしろと?と怪訝な目を向けても、返ってくるのは怒号。
仕方ないと手をのせると、一瞬の浮遊感。
「は、主人公補正かよ」
「そうだよ、だーれがおま……………………あぁ、いや、そうだった」
俺が呆然とする横で、ぶつくさと言いながら急に照れ始めるコウちゃん。怪しい人間である。
まあ、いいやと教室へ颯爽と向かう。
コウちゃんが呼び止める声が後ろから聞こえたが、気にせず歩みを止めることはなかった。
————
「これ、お土産」
「わっ、ありがと?」
「か、かわいい?、ね?」
二人とも疑問符が頭でいっぱいである。
メガマウスクッキー、そんなに不思議か…?
クッキーはありきたりすぎたか。
メガマウス金時飴にでもすれば良かったな、と後悔する。
(健ちゃん、メガマウス限定しかなかったの?)
(いや、そんなことなかったけど…さ…
まさか…)
「うわ、ごめん!もっとおしゃれで映えるやつ買えば良かった!」
気づいてしまった。JKらしからぬチョイスだった。
くっと悔いる俺の横で、手で三角マークを作る明日が見えたが無視した。どう考えてもあってるだろ。
「いや、お土産に映えとか気にしないし…まぁ貰えるものは貰うたちだし」
「私たちに選んでくれたなら、なんでも嬉しいな…!」
美少女2名が微笑んでくれる、ああ成仏できる…。
(成仏すんな)
ペシっと明日に叩かれ、ハッと意識を戻す。
危なかった…!!死んだじいちゃんが手を振ってた…!!
ふと、視線を感じた。
それは3人の誰からでもない、殺意を含んだような視線。
教室の…ド…ア…
………………ひび割れてね?
なに??怖い、誰もいないけど、誰かが掴んだような跡があるし、ひび割れてるし。
怪力いるじゃん、ヒェッと一人縮こまってると、3人が心配してくれる。
あの女なわけないし、誰だよ〜と半泣きで不安になる。
この心境は後々明日にだけ共有するが、二人には内緒にしようと誓った。
あまりにも怖い。
……ちなみに、シマントスが見て、普通に備品破壊と認定され学級集会になりかけたのであった。




