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適当な家に入り、カーテンを閉めて、電気をつける。

赤い光は透けて、家の中に入ってはくるものの、外よりマシだ。

「さっきの子、なんだろうね」

冷蔵庫を開ければ、ペットボトルが入っている。

……飲んじゃお。

普通の水だった、未開封のもう一つの水を明日に渡す。

「ありがと」

「…さっきの子は私も分かんないけどさ、とりあえず落ち着いた?」

「うん」

「電話かけるかな…」

道端で触っていた時のように、スマホを触ってみる。

パスワード設定はなく、スッとホーム画面がうつる。

普通のスマホ、ネットも繋がる。

電話を開くと二つ登録されている。

『黒八木柊花』

『宇保町明日』

さっき明日はこれを見て動揺してしまった。

落ち着いた彼女を不安定にさせかねない、が1人にするのも不安だ。

「……手繋ご、不安だからさ」

「!……んふふ、いいよ!」

ニコニコと明日は笑って手を繋いでくれる。

見知らぬ男の顔だし、手もゴツゴツする、けど、笑顔は明日の面影が見えるし、爪が当たらないようにそっと繋いでくれるところは明日そのものだ。

「あったかいね」

「……うん」

明日の方の手は少し冷たい。

冷たい水をあげるべきじゃなかったな。

「電話をかけるけど、ずっと繋いでてね」

「……うん!離さないよ!」

「ん、いい子」

スマホを置き、明日の頭を撫でる。

えへへと笑っている。

明日さえ守れればいい。

私には明日さえいればいい。

スマホを手に取り、明日の名前をタップし、電話する。

待機音が鼓膜を揺さぶる。

「……」

これで出なかったらどうしようか。

もう一つの名前に覚えがない、多分だけど、あの怪しい女の名前だろう。

待機音がプツッと途切れ、聞きなれた声が聞こえてきた。

「はい、宇保町です」

「……」

思わずスッと息を吸い込む。

覚悟を決めないといけない、こいつが何周目なのか、もしくは、この体の持ち主なのか知らない、けど、きっと私たちの元の体なのだから。

返してもらわなきゃいけない。

「…私は、上野七音

困惑するかもしれないけど、そっちの世界の上野七音と同一人物だよ」

「……………………え」

「宇保町明日もいるわ、プレイヤーが変わってなければ霜井戸(主人公)の名前は孝乃。

私のくそったれ幼馴染よ、もし近くにいれば分かるはずよ。

貴方も宇保町明日(主人公の補助)なら、分かるはずよ」

「…」

相手の荒い呼吸音が聞こえる。

困惑するのは分かるけれど、電話を切らないといいけれど。

「う、えの、七音なら、霜井戸君なら、ここに、一緒に、います」

「ええ、じゃあスピーカーにして、全員で情報を共有させてちょうだい」

動揺したのか、震えた声で向こうの明日は答える。

「すこ、し、待ってください。

先に伝えないと、パニックに、なっちゃう…から…」

「何分でも待つわ」

「ありがとう、ございます…」

相手のその声を最後にミュートになる。

…切らないなら別にいいけど、あいつ(主人公)変なことしてないわよね。

女嫌いだけど、中身がこの体の持ち主なら…うげ、想像したくない。

明日と繋いだ手を頬に持ってくる。

「どうしたの?」

「なんでもない」

はぁ、落ち着く。

そうだ。

「明日も聞く?」

「え、ええと……うん、頑張ろうかな」

「……無理はしないでちょうだい、もしダメならすぐに切るから言ってちょうだい」

「うん、元に戻るためだもん」

手を繋いでるおかげなのか、情緒が不安定だった時より落ち着いてくれている。

私が守るべき存在、貴方さえ壊れなければ私は大丈夫。

「大好きよ」

「えぇーえへへ私も〜!」

無邪気に笑って、ずっと幸せのままでいて。

そう願いながら、スピーカーボタンを押し、少し温まった手を離さないように強く繋ぎ直し、待つ。

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