第二十 『膨らむ頬、痛むおでこ』
「でさぁ、起こしたら明日ってば、顔真っ赤にしちゃって」
「可愛いじゃん」
「ふふふ」
「もうっ!その話はいいじゃん!ほら、幼馴染とさ!」
「よくないよくない、ずっと擦り続けちゃう」
「コウちゃんと〜!!?」
「話題の変え方、強引すぎでしょ」
「いつもの2人はこんな感じだよ、園ちゃん」
「…よくこの2人とつるんでんね、高菜ちゃん」
「園ちゃんも、みんな、自慢の友達だからねっ」
「……はっずい子」
4人でこうやって話せる日が来ると思わなかった。
ギャルゲーの中とはいえ、目の前の子達は生きてる。
俺らも生きてるんだ…それはコウちゃんも一緒だしな…。
腹括るか。
「実はさ、コウちゃんとデートすることになって…
相談したいことがあって…」
「なに?服とか?」
「いや、服は芋ジャーで、髪は適当に括るし。
…遊園地イベは好感度どのくらいの時?」
「うーん、それは多分明日の方が分かってんじゃない?」
「教えてくれなくて…」
「あっ、嫉妬?」
ぶすっと明日は頬を膨らませたままだ。
その様子を見た高菜ちゃんと旗靡は、少し笑ってから俺の質問に答えてくれる。
「うーん、私の時は真ん中くらい?」
「そうそう、下げず上げすぎずくらいの時だよね、正直好感度上げ用のデートだし」
まぁ、現状味方寄りなコウちゃんのことは嫌いじゃない。
「まぁ、別にあんたが怖いんなら、高菜ちゃんとついてってもいいけど」
「セリフはツンデレなのに、顔は面白そうなおもちゃ見つけた猫ちゃんで、私感情チグハグになっちゃう♡」
「で?どうする?」
ちょっとふざけて返すと、頼れるツンデレ姉御肌は俺に真面目な返答を促してくる。うーん、まぁ…
「信頼できる奴だからいいよ、別に。
18禁ゲームでもないでしょ」
「……」
真面目な返答を返し、パックジュースをチューと飲んでいると、全員が顔を真っ赤にしていた。
「そ、そこまで着いてかないしっ!」
「あ、ああ、明日ちゃんっ!変なこと教えてないっ?」
「教えてないよっ!
……純情派幼馴染のくせに!このムッツリスケベ!幼馴染相手に何考えてんのっ!七音のバカ!」
いや、ガチ幼馴染がなに言うてんだ…と突っ込むことも出来ず、俺は一日ムッツリスケベと揶揄われることになるのだった。
——「てなわけで、ミニスカにしよ」
「いーや、パンツだね!七音の長い足を活かした、パンツルックに決まり!」
熱い口論が目の前で繰り広げられる。
芋ジャーでいいと伝えたにも関わらず、放課遊びと共に俺のデートコーデ対決が始まった。
ちなみに高菜ちゃんは対決に参加せず、俺とお話をしてくれている。
高菜ちゃん曰く、遊園地に場違いなドレスなどを選んでしまうと言っていた。
それはそれで、呆れられて帰るという展開になればいい。
そもそもコウちゃんの好感度を上げたいわけではない。
明日は、穂波はそれを分かっているはずなのだが。
「ふうっ、ハァッ…勝った…!買った!」
「ダブルミーニングってやつ?」
「ふっ…そうかも…」
なんで息切れしてんの、この子ら。
「ミニスカの方が足長く見せれるじゃん…」
「チェーン付きだ…パンクな感じだ…かっこいい…!」
勝者は明日になったようだ。
高菜ちゃんは、どちらかというとミニスカ…というより、パンクな感じのミニスカに興味があったようだ。
目を輝かせて、旗靡のもとへ行ってしまった。
仕方ない、買ってくれてるようだし…着てあげよう。
「ん」
「え、はい」
「あんがと」
「け…七音のためだし〜!
あとでワック奢りね!」
「じゃあ、みんなで行こ」
フードコートに行き、飯を済ませてから帰ることになった。
そして、待ちに待ったわけでもないデートの日が来てしまった。
明日が買ったパンツに、適当なTシャツ、計らずしてボーイッシュな雰囲気の格好になった。
髪は適当な高さで結った。
鏡で見ると、こんな適当な格好でも様になる美少女がいる。
本来ならメイクをし、美少女度をもっと上げるのだが、こちとら元男、メイクの知識などリップしかない。
保湿リップのみ塗り、外でコウちゃんを待つ。
そう、待とうとしたが、ドアを開けたら、ちょうどそこにいた。
「…」
「……怖」
「幼馴染に何が怖いだよ」
「痛いっ!」
デコピンをされる、力が強い!頭が割れたらどうすんだ!と喚き相手の腕を小突こうとすると、はいはいと躱される。
「思ったより男っぽくて安心したわ」
「は?美少女相手に男っぽいってなんだ」
「…服装だわ、俺の好みに合わしてんのかと思ったんだけど」
うわ、イケメンが微笑んでくる。
平凡系イケメンのくせに。
「あー、明日に選んでもらった」
「へぇ…あいつもいい趣味してんじゃん」
「あいつはいつでもセンスがいいよ」
「……」
2人で電車に乗り、そのまま遊園地へ向かう。
「でさ、明日が………高菜ちゃんが………………で、旗靡がさ明日に……………………」
「…………」
喋りすぎてる自覚はあるが、相手が普通に頷き、口を挟まないため、話を終えるタイミングを見失った。
穂波は黙って話を聞くタイプではなく、いちいち口を挟んで来たり、適当なタイミングで話題を切り替えてくれていた。
心の中で助けて穂波と唱える。
そんな呪文はない。
そして、俺は遊園地に着くまで永遠にこいつと駄弁り続けるのであった。
——
いやまぁ、着いたらワクワクはしちゃうよね。
何度も穂波とは来てたけど、元の世界とは違う遊園地だし。
「いやー、テーマパークみたいでワクワクするなぁ」
「……夫婦漫才でも決め込むか、ハニー」
「…やめときます」
「じゃあ、行くぞ、ほら」
「ん」
手を繋いで、歩き始める。
……
…………
……………………。
ナチュラルに手繋いじゃったなぁ。
手汗かいてきたよ、人肌ぬくいね。
昔からの癖でさぁ〜!
……まぁ全部穂波のせいってことで。
そう結論づけて、楽しもうとする俺らの後ろを尾ける人物に気づくことは出来なかった。




