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第十八 『和解』

「……」

一歩歩みを進めた私にあちらは目線を外し、後ろに一歩進むだけ。

「ふぅ…ごめんなさい!」

「……なんの謝罪?

毎回毎回お前はさぁ!イラつくんだよッ!!」

「ッ!!

わ、たし…私…霜井戸くん(主人公)に選ばれたあの時から、ずっと…ずっと謝りたかったのっ…!」

「謝んじゃねぇっ!!!」

「ずっと!!貴方の友達でいたかったからっ!!!

断りたかったっ!

でも…でもっ、シナリオ(プログラム)が許してくれなかったっ!!

ただの言い訳かもしれないけどっ…貴方が、園ちゃんが私の最初のお友達だったからっ!!」

必死に叫ぶ、私がずっと伝えたくて、伝えれなかったこと。

嬉しかった、死ぬほど嬉しかった。

でも所詮はあの時の私の、愚図な私(操り人形)の気持ち。

私たちはずっとシナリオに振り回される。

「……1周目のお前の友達であって…私はもう、

——お前の友達でもなんでもないッ…!!」

園ちゃんが私に叫ぶ。

心が痛い、でもそれ以上に…。

(私以上に泣かないでよ)

貴方の方が痛そうな顔をしないで。

ずっと私を殺していた貴方、私はいつもいつも怯えて、誰かに助けてもらわないと何にも立ち向かえない弱い生き物。

でも、私を殺し続ける貴方の顔がいつしか、憎悪から後悔に変わっていったのだけはわかった。

「…私たち、みんな…幸せになれるシナリオがあれば良かったのに」

そんな叶わない願いをポツリと呟いてしまう。

「そんなの、ありえない。

絶対に」

一歩ずつゆっくりゆっくりと近づいていく。

「また…友達になれないかな

さっきのシナリオのように、叶わない、ありえないお願いなのかな」

「……」

目を合わせて、2人ずっと泣き続ける。

貴方は私の問いに答えないまま、後退りして、やがて柵へとたどり着く。

もう後には退けない。

「園ちゃん、お願い、私達…やり直せないかな」

「——馬鹿な女」

「————ッ!!?園ちゃんッ!!!!!」

手を伸ばした私の手を取ることなく、園ちゃんは柵に後ろ手をつけたまま、後退する。

なんで、なんでいままで気づけなかったんだろう。

——あそこは私がいつも突き落とされて、壊れてしまった柵だった。

寸でのところで手を掴む。

「離せっ!!」

「嫌だっ!!!!」

力がない私じゃ、引き上げることは出来ない。

少ない体力で叫ぶ。

「誰かぁ!!!助けてッ!!!

園ちゃんが、園ちゃんがッ、死んじゃうッ!!!!」

悲鳴にも近い声が出る。

もう何にも考えれない。

ずっと助けてと叫ぶ、他の生徒(背景)が動くことなんてっ、ないのに。

目の前がぼやける。

「ふっ、うっ…私、ずっと園ちゃんのお友達だよ」

「…なら、離せ」

園ちゃんの表情はずっと、ずっと苦しそうだった。

「離さないよ、離さないっ…

死なせないっ…!たとえ、園ちゃんがっ、私を嫌いでもっ…!

シナリオ(プログラム)が進行不能になったとしてもっ!!!」

「そうだっ!それにお前はまだ高菜ちゃんに謝ってねぇっ!!!」

隣が手が伸びてくる。

嗚呼、ああ、涙が止めどなく溢れる。

「——っ、七音ちゃんっ!」

「高菜ちゃん、一気に引き上げるよっ!」

「うんっ!!」

2人で力を合わせて、園ちゃんを引き上げる。

引き上げた園ちゃんが二度と飛び降りないように、力強く抱きしめる。

抱きしめながら、安堵から涙が止まらず、ずっと泣き叫んでしまう。

「よ、良かったぁぁ…!!!!うわぁぁんッ…!!」

「ちょ、うるさ」

「うぇぇぇんっ…!!」

泣く私とは対照的に七音ちゃんは息が上がってるものの冷静に園ちゃんに向き直り、喋り始める。

「もう二度とこんな馬鹿な事すんなよ」

「お前に関係ないだろっ!」

「関係ある!友達の泣いてるところなんて、あんま見たくないから」


——

わんわんと泣く高菜ちゃんに目線を向けながら、旗靡と話す。

間に合って良かった。

「旗靡さん、貴方がどうして高菜ちゃんをいじめてたのか、私は何も知らない。事情もなにも、この世界が初めて(1周目)だから。

けどさ、貴方を諦めなかった高菜ちゃんの事なら、1周目でも分かる。」

旗靡の目がゆらゆらと揺れる。

「…」

「…第三者が口を出すことでもないことは知ってる。

けどさ、誰か、あいつら(不良たち)じゃない他の…攻略対象ならなにか助けになれたかもしれないだろ。

高菜ちゃんは、今回助けを求めれた。

君も出来る、言ってみてよ。私は…私たちは絶対に貴方の味方になる」

旗靡は目線を下げる、都合のいいことを言っているのは分かってる、俺が腐ってた時期なら、そんなこと出来るわけない、助けなんて来ないと一蹴していた。

けれど、助けが来ないことと助けを求められることは明確に違う。

俺は穂波にそう教えてもらったから。

「…私、本当に、あんたがあいつと結ばれることが嫌で。

本当に恨んでた。

でも…、あんたを殺しても、気持ちが晴れることなんて無くて、いつしか後悔しかなくなって、でもっ!

友達に戻るなんて都合のいいこと出来るわけないっ!!」

「出来るっ!友達に戻れるっ!」

「私はっ!あんたを殺してたのっ!ずっと!

選択肢を一つ減らすために!!」

「不安になる気持ちは分かるっ!私達は所詮プログラムで出来た都合のいいキャラクターだって分かってるっ!

——私、ずっと主人公が怖かった。」

「は?」

「シナリオに振り回されることが怖かった…」

「…」

「行動一つ一つ制限されて、今も図書室(フィールド)から出れない時があるっ!

でも、七音ちゃんたちが来てくれて、今は楽しいの」

「…」

「そこに園ちゃんがいてくれたら、もっと嬉しい」

「……死ぬほど我儘じゃん」

「…!」

驚いたせいか、旗靡を抱きしめていた手を離し、旗靡と顔を合わせる。

高菜ちゃんの顔がみるみる赤くなる。

「大丈夫、私も我儘だよ。

都合のいいこと言うあんたを信じたくなっちゃった。

……今まで、本当にごめん。

私もいつでも貴方に会いに行ける訳じゃない、けどさ、また友達になってくれる?」

旗靡が高菜ちゃんに手を差し伸べる。

高菜ちゃんは微笑みながら、旗靡と強く握手をする。

(一件落着かな)

「上野も、ごめん」

「ん、いや、高菜ちゃんに謝ってくれれば、ぉ…私はいいよ」

「…上野って、高菜ちゃんに負けないくらいお人よしだね」

「…そうかもね」


【おめでとうございます!旗靡園さんの攻略を成功しました】


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