仕方ないやつ
クリア特典 おまけ話『遊園地デートのその後』より
「聞きたいことあんだけどさ」
「うん」
「なんで、穂波、遊園地にいたわけ?」
明日の姿をした穂波がブッと飲んでいた水を吹き出してしまった。
汚いより先に、美少女だと水を吹き出しても顔綺麗なままなんだな……という考えてしまった。
まずは心配だろう。
「おい、大丈夫か?」
「ゲホッ…だ、大丈夫………」
「なんで、そんな動揺すんだよ」
「なんでもなにも……その、まぁ、成り行き的な……。」
「成り行きってなんだ…。
まぁ、助かったけどさ、あんなことになると思ってなかったし。
コウちゃん外にいたんだっけ?」
「そうそう、なんかコウちゃんが離れてからすごい早く戻って来たなって思ったら、2人で鏡のやつに行っちゃって……、で、中に入ってみたら、健ちゃん1人しかいないし。
倒れるし、運ぶことになるしで大変だったんだよ……!
外にコウちゃんいたから、ほぼほぼコウちゃんが運んだけど」
「穂波、お前……。
やっぱ尾行してただろっ!!」
びくりと肩を跳ねさせ、目をまんまるにしている明日に逆に驚いてしまう。
気づいてくださいとでもいうかのようにべらべら喋ったくせに、なんだこいつ。
「ていうか、俺といたコウちゃん、あの女だったのか。
いなくなるまで気づかなかったなぁ。」
「……健ちゃんってさ、いつも警戒心むき出しのくせに、少し気を許すと警戒心のけの字もなくなるよね。
そういうのダメだと思うよ。幼馴染からのアドバイス聞いときなよ。」
白い目で見てくる明日に対して、デコピンで返す。
痛いっ!と喚く明日を無視して、いちごミルクを飲み干す。
パックがベコベコと音を立てて、へこんでいく。
あの時は本当に助かった。
あのまま、ゲームオーバーになってた可能性もあった。
ただ尾行なんてしなくても良かったじゃないか、とは思う。
3人でもコウちゃんは、多分怒らないだろうし。
……幼馴染離れ出来ないこいつの頭を撫でてから立ち上がる。
「え、なに?DV彼氏的な?」
「飴と鞭をうまく使いこなしてるだけですー」
予鈴があたりに響き渡る。
もう飲み干したいちごミルクのべこべこのパックを片手に教室へと歩みを進める。
後ろから待って待ってと慌てる雛を置いて。
——————
「何があったんだ。」
「…………なんでもないよ。」
「なんでもないじゃねぇよ、ここまで取り乱すだけのことが中でっ」
「なんでもないって言ってるだろ!!!じゃあ、お前は健ちゃんのなんなんだよ!?」
「…………幼馴染」
「……それは七音であって、健ちゃんじゃない。
健ちゃんの幼馴染は俺だけだ。」
「おー、こわ。ただの友達の心配もさせてくれないんだな、幼馴染様ってのは。」
「うるさいっ!うるさいうるさいっ……っ!」
「……ほら、貸せよ。
明日の身体じゃ、限界が来るだろ。」
七音をおぶった俺を驚いた顔で見ながら隣を歩くコウちゃんと口論になってしまった。
煽りにも乗ってしまうし、コウちゃんの言うとおり、明日の身体では限界があった。
重いわけではないけれど、一日中尾行していた足はすでに重くて、おぶって歩き続けるには難しかった。
ボロボロと涙が溢れてしまう。
「泣くほどじゃないだろ。」
「うるさいっ……!」
袖で拭えないまま、涙は重力に逆らうことなく、地面を濡らしていく。
情けない。
「俺が心配してんのは、どっちもだ。
七音の体で中身はあいつで……明日もお前も、ややこしいけど、全員友達だからな。」
盛大なため息をつきながら、七音の体が浮いていくのを感じる。
反射で力強く掴みそうになったが、なんとか堪える。
……俺は友達だとは言った覚えも認めた覚えもない、がコウちゃんの言ってることは正しい。
七音を横にして抱えるコウちゃんに礼を言ってから、涙を拭う。
「とりあえず、帰って……多分こいつ謝るだろうから、それ聞こうぜ。
それで、まぁ、お前らの事聞かせろよ。
さっきのことも、全部。」
「……うん」




