ep5 接触の儀② 口吸いの儀
ちょっと待て、「抱き合い」は、まだ分かる。要するに「ハグ」だろ。
まあ、欧米では普通?かな。
「口吸い」って、「口と口とのキス」のことか?
そんなことする国は、多分ねーぞ。(はっきり言って、俺はいやだ!)
ぜってー、ガイドブックが間違っている。もしくは、翻訳ミスだ。
俺は、マンボウのご機嫌をそこねないように、おそるおそる、言った。
「それは、たぶん、ホホとホホを合わせる、チーク・キスのことだと思うんですが・・・」
マンボウの目が、ギロリと光る。俺をにらんでいる。(こわいっ)
「ガイドブックは、絶対でござる、もし、ガイドブックにしたがわねば・」
「したがわねば(全世界がゴクッ 固唾を飲む)、友好は中止。戦でござる!」
全世界、阿鼻叫喚の嵐。「キャー!」、「ワー!」、「ギャー!」
「アァァー!」「うわぁぁん!」
続いては「ヤレー」、「ことわるなー、たのむー」、「がまんしろー」
「やらんと、〇〇す」等の、哀願、激励、恫喝の声が、
世界中の言葉で、俺にブッス、ブス、突き刺さる。
俺は、ジョッキのチューハイを一口、グイっと飲み干した。
(♪これが、酔わずにおらりょう~か♪ もう、ヤケ歌だ)
「わっ、分かりました。ガイドブックのとおりに」
「分かれば、よいのじゃ、では」
マンボウが五本の足をかがめ、顔を近づけてきた。
(ウッ、何て臭いだ、さすが、マンボウ、魚臭い、鼻が曲がりそうだ)
俺が顔をそむけかけると、ヒロシが大声で
「スマイル!」と叫ぶ。(ふざけんな、笑えるかっっんだ!)
その時だった。
テレビの中から、「スマイル! スマイル! スマイル!」の大合唱。
世界の心が一つになるとは、このことか。(なんなんだよ?)
俺は、必死に作り笑いを、(多分、引きつっていた)
しながら、待つのみ。
少しずつ、迫りくる、マンボウのくちびる
上クチビル10センチ、下クチビル10センチが
だんだん、近づいてくる。
ベロベロ、ドロドロ、グニュグニュが!
(ギョエー、心の声)
(デカイ、クサイ、キモチワルイ、三拍子そろっている)
来たっ!「ベチュー ドゥロロー グニュルー」
俺の顔全体が
マンボウの巨大なクチビルに、覆われた。
顔全体が、魚臭い、
魚臭いくずまんじゅうに、飲み込まれる。
ズニュルルルール、ベッチョベチョーリーーン。
(いっ、息が、いきが、できねぇ、くせぇー、目がみえねぇー)
俺は気を失った。
♪苦難は つづくよ どこまでも♪




