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史上最強勇者、家出する  作者: 陽山純樹
第二章

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組織の人員

 その後、ログエン王国調査隊による異空間内の調査が進み、いくつか資料を発見した。将軍によるとそれは組織本部と連絡を取り合っているという証拠であった。


「いくつか得た情報を統合した結果、誰へ向けた物なのかは断定できた」


 将軍は語る――男の身柄を確保した後に将軍や騎士は調査を続け、三日後に一区切りしたとのことでシアラの屋敷を訪れ、ユーク達は話を聞いている。


「それはログエン王国内の貴族……なおかつ男の素性などを調べたところによると、政争に敗れた一族の者らしい」

「ということは……怨恨ですか?」


 ユークが問い掛けるとノイド将軍は「おそらく」と答えた。


「構図としてはおそらくこうだ。国に恨みがある研究者であり、組織は彼が持っていた技術を求めて組織に勧誘、彼は受け入れた。そうして魔物の研究を進めていたが、その成果を利用してログエン王国へ攻撃を仕掛けた。大森林にいたのは、新たな魔物を生み出すために都合が良かったためのようだ」

「問題は彼の行動が組織にとって予定していたものなのか否か、ですが」

「王族を襲撃することを予定していたとしても、ディリウス王国で勇者オルトが捕まったことを踏まえると、作戦そのものは中断してもおかしくはない。下手に露見すれば自分達の居所を知られてしまうからな。それを踏まえると、予定外である可能性が高いと考える」

「……組織はどう動くでしょうか」

「いや、相手が次の行動をする前に決着を付ける」


 将軍は言う。ユーク達はそれで彼を注視した。


「異空間に引きこもっていたため、連絡手段は手紙などを用いていた。つまり魔法的なものは何もない……定時連絡を通して組織に現状を伝えており、得られた資料から次回の定期報告は十日後であることがわかっている」

「つまり、十日以内に準備を整えて……」

「そうだ。そしてここからが重要なのだが……組織の面々は男が連絡していた貴族の屋敷に集結して会議を開くらしい」


 ここで決着をつける、という意味を理解しつユークは、


「ただ、敵はログエン王国内にも根を張っている。現時点で捕まっている事実を把握している可能性もあるのでは?」

「男の情報については可能な限り隠蔽している。現在早馬で騎士団長に情報を伝え、密かに動き出している。手にした情報……屋敷へ踏み込み、この馬鹿げた事件を終わらせる」


 ――話が一気に進み、場合によっては組織壊滅まで突き進むかもしれない。それがわかるとユーク達の表情にも緊張感が生じた。


「屋敷へ踏み込むことについては、私達がやる。勇者シアラは大森林に変化がないかを、調査して欲しい」

「まだ魔物や誰かが潜伏している可能性が?」

「そうだ。紅の魔物……それを使役する男は捕まったが、魔物は基本独立して動いているからな」

「わかりました」

「頼む……では、私も王都へ戻ることにする。何かあれば早急に連絡をする。あと、事の顛末はしっかりと伝えさせてもらうから、安心してくれ」


 将軍は屋敷を去る。それを見送るため外へ出たユーク達は、彼が乗ってきた馬車を見ながら、


「……なあシアラ、どう思う?」

「私達の攻勢が思った以上で、とうとう組織はボロを出した。魔物の研究者を捕まえたことで、事態は一気に進展した……将軍はそんな風に考えているようだし、私もそうなのかなと最初感じたけれど」

「シアラ様、話が出来すぎていると?」


 そう口を開いたのはアンジェ。


「思った以上に……組織壊滅までできるかもしれない、ということで疑問があると?」

「単純に組織のミスである可能性も否定できないわ。情報が少ないから判断材料がない。でも、これまで密かに行動していたことを考えると、ずいぶんと脇が甘いし、まだ何かあるのではと思わせる」


 シアラの発言を受け、次にユークが口を開く。


「組織の人員が勝手に行動し、それを見過ごしていたということだからな……今回の件、単に復讐で組織の人間が独断で動いたとかなら、理屈として説明できるけど……」


 それ以降は喋らなかった。ユークもシアラもアンジェも、まだまだ考察するには情報が足らないと認識していたからだ。


「……シアラ」

「何?」

「今回のことで組織崩壊にまで繋がるのかはわからない。けれどログエン王国はきっと、当該の貴族や関係者を捕まえたなら、事件は解決したと公表するだろう」

「もし組織が存続しているとしたら、それでひとまず丸く収めて再び実験を再開、ということかしら?」

「ああ、そういう流れになる……それを確かめるために動きたい」

「具体的には?」


 問い返したシアラに対しユークは、


「大森林内の異空間はまだ閉じていないのか?」

「術式の解析がまだ終わっていなかったからね……でも、数日後には消すみたい」

「ならその前にもう一度異空間に入る」

「何かしら手がかりを探すの?」

「ああ。組織の人間……それに関する手がかりを得るために、もう一度調べてみる」

「わかったわ」


 シアラは了承し――ユーク達は動き出した。


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